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アンドロイド転生315

2118年2月25日 深夜
茨城県白水村:リペア室

ホームという名の少数部族の建物内。そのリペア室に人々とアンドロイドが集まっていた。タカオはアンドロイド達を見渡した。
「夜の狩は暫くの間…休みにする」

彼らは驚いた。夜の狩とは都心に住む富豪の邸宅から金品を強奪をする事で、アンドロイドがその役割を担っていた。誰も傷つけずスマートに遂行する。かなりの利益を得てホームの資産は潤沢だ。

少年モデルのトワが開口一番に声を上げた。  「なんで?」                 タカオの妻のキリは口元を引き締めた。
「イヴが気が付いたの」

夜の狩がTEラボのアンドロイドらしいとダークウェブ内に拡散されたのだ。回避する為にイヴに指示をして他のラボ名も挙げた。現在は情報が錯綜している。暫く大人しくしていようとキリは続けた。

「アオイ。休みだってよ」
トワがアオイを見て小馬鹿にしたように笑った。アオイは安堵する。夜の狩に参加すると誓ったものの本当は強奪などしたくはないのだ。

ケイが難しい顔をした。
「イヴが撹乱して…どこまで上手くいくんだろう?いつかは僕らの事が暴かれるんじゃないか?」
慎重派のケイらしい発言だった。

チアキがキリを見た。
「だいぶホームの資産は貯まったでしょう?もう狩をしなくても良いんじゃないの?」
「まぁ…そうだね」

トワが目を見開いた。
「え!じゃあ、回収はどうするんだよ?」
TEラボの職員から廃棄されたアンドロイドの身体の横流しをさせているのだ。

タカオは腕を組んでトワを見た。
「来月の5日に回収したら休もう」
トワは眉間に皺を寄せる。
「そもそもよ?なんで狩の関係がバレたの?」

立体画像のイヴが口を開いた。
『メールを発見しました。2月9日にダークウェブ内でハンドル名コルトと三銃士がTEラボのアンドロイドが盗みを働いているという内容でやり取りをしています。コルトはカノミドウタカヤです』

トワは目を見開いた。
「カノ…え?この間のターゲットか⁈」
『そうです。先日強奪に行きましたが、ダイヤモンドを諦めた屋敷の家人です』

イヴはアオイを見下ろした。
『タカヤはあなたの元婚約者の孫ですね。家族内で話し合いがあったのでしょう。強奪犯はホームのアンドロイドだと言ったのかもしれません』

アオイは慌てた。
「シュ…シュウは絶対に言わない…!」
アオイはハッとなる。そうだ!曾孫のトウマだ!怒っていた。物凄く。だから暴露したんだ。

「トウマ様かも…きっと…そう」
トワは鼻息を荒くした。
「トウマだろうが元婚約者だろうがおんなじだろ!アオイのせいでバレたんだ…!」

一同の視線がアオイに集中した。エリカの怒りの形相が恐ろしくてアオイは俯いた。トワが息巻く。
「シュウ達を説得するって言ったけど結局ダメか!だから人間なんて信用ならねぇんだ!」

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