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アンドロイド転生265

深夜 カノミドウ邸

アオイの手などお見通しだ。チアキは背にしている壁を利用し両脚を蹴り出しアオイの胸を突いた。アオイが仰臥するとチアキはすかさず腹に馬乗りになり、右手左手と交互に殴り掛かった。

アオイは防御するだけで精一杯だ。ケイは2人を眺めていた。加勢する必要はなさそうだ。チアキが仕留めるだろう。シュウが叫んだ。
「待ってくれ!やめてくれ!」

チアキは手を止め、シュウを見上げた。
「私に禁止機構はない。あなたの命令は聞かない。でも、何?」
「仲間割れをしないでくれ。私は彼女と話がしたいだけなんだ。もう少しだけ時間をくれないか?」

トウマが目を見開いた。
「祖父ちゃん!何を言ってるんだよ?」
チアキは黙ってシュウを見つめ続けた。彼の真摯な瞳がある人物を彷彿とさせた。タウンにいた頃の主人だったノムラ園長だ。

彼の先立たれた妻に対する想い。妻の面影のアンドロイドを造るほどの愛情。そのモデルの自分。毎晩のように語って聞かされた、妻との喜びの日々。死が2人を別ち、そして死を選んだノムラ…。

アオイとシュウの想い…。これが最後になるかもしれない2人の邂逅。シュウは囁いた。
「頼む。お願いだ」
チアキは立ち上がった。

「アオイ。シュウを説得するのよ。私達の事がバレたら許さない」
アオイは頷いた。チアキはケイに顔を向けた。
「行こう」

タケルの通信が割って入る。
『チアキ!アオイ!引き上げるぞ!』
『アオイは残る。話があるって』
『何を言ってる?』

アオイは慌てて立ち上がった。
「チアキ…有難う」
「いいの。気持ちは…分かる」
アオイは胸がいっぱいになった。

タケルの声がアオイの内側に響く。
『何をしてる?帰るぞ!』
『タケル…ごめんなさい』
アオイは通信を遮断した。

チアキもケイも何も言わず部屋から去った。タケル達と合流して屋敷から飛び出した。闇夜を走り、車に乗り込むと発進した。タケルはアオイの勝手な行動に憤っていた。許さないと呟いた。


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