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アンドロイド転生708

リペア室

ミオのメモリからウィルスがデリートされた。残り約1時間弱の事だった。全員が歓喜しミオは感謝の言葉を述べた。そこにまるで爆弾が投下されたかのようにイヴが宣告した。

『報告があります。またウィルスプログラムが落とされました。カウントダウンをしています。前回の半分の半分。残り6時間です』
誰もが凍りついた。

ミオの悲鳴が室内に響き渡った。ルークに縋ったが立っていられず崩れ落ちた。
「ル…ルーク…私…もうダメかも…」 
「ミ、ミオ…!ミオ!」

キリは顔を顰めた。やっぱりそうか…。嫌な予感がしていた。ウィルスはミオのメモリから削除されてもオリジナルは生きている。クラウドよりも上層階で強固のヘブンに格納されているのだ。

残念ながらヘブンにイヴは手出しが出来ない。悔しい事にそこから何度でも落ちるのだ。その都度変異し、残り時間は減っていく。なんて恐ろしい物をゲンは作ったのだろう。まるで悪魔だ。

イヴは全員を見回した。
『アンドロイドはデリート作業を再開します。人間は休んで下さい。凡そ38時間近くも起きています。心身に悪影響を及ぼします』

キリはイヴを見上げた。
「何言ってんのよ!私もやるよ!」
リョウも慌てた。
「俺もやるぞ!」

イヴは首を振った。
『いけません。人間は脆いのです。無理をすると倒れます。私はそれを望みません。さぁ、早く休んで下さい。お願いします』

リョウの父親のケンジが息子の肩を叩いた。
「休むぞ」
リョウは暫く思案していたが頷いた。
「分かった。3時間休もう。キリも寝ろよ」

キリも諦めたような顔をして立ち上がった。
「うん。じゃあ…皆んな…頼むよ」
アンドロイド達は頷いて、リペア室から出て行く人間達を見送った。

葛飾区のソウタの部屋にいる同時多発で存在するイヴも彼に告げた。
『お休み下さい。今直ぐに』
ソウタは背伸びをすると部屋から出て行った。

白水村のイヴがミオを見下ろした。
『宣告致します。ウィルスプログラムは変異する度に複雑になってきました。あと6時間でデリートをするのは不可能です』

ミオは顔を埋めて泣き出し、ルークは彼女を抱き締めた。イヴはじっとミオを見つめた。
『あなたに提案を致します。ウィルスが発動される前に機能停止を選びますか?』

アオイは衝撃を覚えた。そ、それはまるで自殺しろと言っているようではないか。イヴは続ける。
『それとも発動されるの待ちますか?発動後はどのような事態になるのか不明ですが』

ルークの顔が怒りを帯びた。
「機能停止なんて許さない!発動も許さない!イヴ!何とかしろ!頼む。してくれ」
全員が頷いた。それが彼らの意志だった。


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