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アンドロイド転生66

現在 2102年12月
タカミザワサクラコのマンション

街がイルミネーションに彩られ、華やかな季節になった。間もなくクリスマスだ。80年後の現代でもこの時期の人々の心は浮かれていた。アンドロイドになったアオイでさえも気持ちが上がる。

サクラコは鏡台に向かって念入りにメイクをしていた。燃えるような鮮やかなオレンジ色のドレスを纏っている。彼女によく似合っていた。アオイはサクラコの豊かな髪を梳かしていた。

サクラコの恋人で原作者のオサナイセイイチの作品が映画になり、試写会にオサナイが出席する。その後のパーティーに恋人の1人としてサクラコも同伴するのだ。他に4人いるらしい。

彼女が恋人のパーティーに行く事はしょっちゅうだった。バレエダンサーのイシマルユウヤ、俳優のカンザキケント。サクラコの相手は3人だ。アオイには全くこの概念が理解できない。

何故、多くの人を愛せるの?どうして多数の中の1人で平気なの?精神的平和は男女間の恋愛にも余裕があるものなのか。この時代、恋多きは当たり前の事なのだ。それが生きる糧になるらしい。

愛の価値が変わった。驚く事に夫婦になっても公然の愛人がいるそうだ。何と一緒に暮らすパターンもあるらしい。なんて事だ。まるで源氏物語ではあるまいか。光源氏は側室を同居させたらしい。

時代は変わったのだ。人間達は自由を謳歌する。あくせく働かなくても、資産の潤沢な日本は福祉が手厚い。低所得でも充分だ。人は労働は生きる為ではない。やり甲斐を求めるのだ。

資源のない国日本が、潤っているのはアンドロイド、ロボットの開発が目覚ましく優れており首位独占であること。外貨を得てそれがまた開発費に繋がることである。

そして世界に秀でる文化芸術の水準の高さだ。日本の侘び寂びが世界に認められているのである。かつ、日本は類を見ないほどの平和大国だ。事件事故がほとんど発生しない。

多くの外国の要人が平和な日本に住まい、高額な納税をしている。日本経済は潤い、GNIランキング首位独占である。生活の余裕は心の大きさ深さに繋がり、皆いつでも礼節を弁えていた。

支度を終えたサクラコをアオイは見つめた。
「お綺麗です。パーティを楽しんで下さい」
「有難う。モネの事を宜しくね」
サクラコはドレスの裾を翻し颯爽と出て行った。

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