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アンドロイド転生253

白水村:リビング

エリカは不服だった。アオイはなんて我儘なんだろう?ホームの仲間達を危険に晒すなんてどうかしてる。タケルはリーダーとしての責務を果たしているのだ。そんな簡単な事も分からないのか?

一言文句を言ってやろう。エリカが息を吸い込んだと同時にケイが口を開いた。
「待ってくれ。アオイの気持ちを汲んでくれ。僕は愛しいという想いが理解が出来る」

人間に恋をしているケイならではの発言だ。
「アオイの元婚約者は老齢だ。時間がない。これを逃せば永遠の別れになるだろう。タケル、チャンスを与えよう」

チアキが身を乗り出した。
「私もアオイの気持ちが分かる。私の元主人は亡くなった奥様を心から愛してた。忘れられなくて奥様の後を追ったんだよ。愛って深いんだよ」

タケルは舌打ちして皆を見渡した。
「アオイに協力したい者は?」
5人が手を上げた。アオイは胸が熱くなった。ああ。私の味方はいるのだ。

トワがアオイを横目で見た。
「俺は反対。アオイは死んだ時にシュウとは終わったんだ。諦めろよ」
反対する者は4人だ。

タケルは息を吸い込んだ。
「民主主義は半数以上の賛成で決まるんだ。つまり今ならアオイの勝ちだ」
アオイはうんうんと頷く。

「だがうちには、もう1人いる。イヴだ。イヴが俺達に賛同すれば同点だ。そしたら却下だ。ホームを危険に晒すわけにいかない。アオイ。分かったな?」
「…はい」

タケルがイヴを呼んだ。宙空に美しい女性のホログラムが浮かんだ。イヴが画像を使っているのだ。技術の向上によりチアキを媒介しなくてもイヴと対話が出来るようになったのだ。

「皆さん。大変な事になりましたね。アオイ。あなたはホームを危険に晒そうとしていますね」
ホントだよなぁとトワが呆れ顔になる。
「危険にはしません。信じて下さい」

イヴは射るような視線をアオイに向けた。
「私達は金品を強奪するのです。シュウは納得しますか?そんなシュウをあなたは言い含められますか?私達の存在を口外しないと」

アオイは黙り込んだ。私達は泥棒だ。彼の資産を奪うのだ。ダイヤモンド20点。でも彼だって私と会うなら…きっと味方をしてくれる筈。
「はい…!シュウを味方にします」

イヴはニッコリとした。
「分かりました。信じましょう。そして私も協力しましょう。かつての恋人達が出逢うなんてワクワクします。皆さんも理解してあげて下さい」

ああ。イヴが味方になってくれた…!嬉しかった。これで半数以上の賛同になった。
「あ、有難うございます!ほ、本当に…」
喜びで胸が震えた。涙が溢れた。

タケルは憮然とした顔をしたものの、最後に深い溜息をついて頷いた。
「全員は多過ぎる。6人で行こう。アオイ、チアキ、ケイはシュウの元へ。俺、トワ、ルークが狩だ」

「私も行く!」
エリカが間髪を入れず声を上げた。
「ダメだ。実質3人で狩りをする事になる。慣れた者達で行いたい」
エリカは頬を膨らませた。

タケルは立ち上がった。
「散会する。決行日迄はあと25日後。アオイ、明日から柔術の訓練をしろ。足を引っ張るな。少しでも動きが鈍いと許さない。分かったな?」
アオイは深く頷いた。


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