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アンドロイド転生31

回想 2020年2月

アオイは帰宅すると三和土で男性物の靴を見た。お客様?ダイニングから楽しげな声がする。覗くと母親と弟のミナトと家政婦。父親はまだ帰っていない。そしてシュウ。心臓が跳ねた。

「…ただいま」
声を掛けると母親が振り向いた。
「お帰りなさい。晩御飯は?」
皆の目がアオイに集中する。

「た、食べる」
思わず吃ってしまう。だって、なんでシュウがいるの?自室に荷物を置いて手洗いを済ませ、皆と一緒にテーブルに着いた。

3人は食事を終えてお茶を飲んでいた。食卓にアオイの分が並べられる。シュウが微笑んだ。
「久し振りだね」
「う、うん」

アオイは何度も瞬きをして目を泳がせた。ああ、もう!何を緊張しているの?味噌汁と箸を持つ手が強張った。お椀を口につけたものの上目遣いになってシュウを盗み見た。

母親の瞳が輝いた。
「シュウちゃんね?ミナトの勉強を見てくれる事になったの。卒論は終わったし薬剤師の国家試験も済んだし入社まで時間があるんですって。ミナトは文系だから民法や刑法は良いけど税法は苦手でしょ?シュウちゃんは理系だから得意なのよね」

法学部に入ったミナトは父親と同じように司法の道に進む。裁判官か検事か弁護士のいずれかだ。「そ、そう」
「週に2日来てくれることになったの」

母親はテーブルにちょこんと両手をついた。
「有難う御座います。シュウちゃん」
週2日。シュウが来る?ホントに?
「でも…彼女いるのに大丈夫なの?」

母親がアオイの肩を叩いた。まるで秘密情報を知っていますと言うように。
「それがね!サヨナラしちゃったって!」
「え?」

母親はハッとなるとシュウを見て慌てた。
「あ…。ご、ごめんなさい。余計な事ね」
シュウは苦笑する。
「うちの母から聞いたんですね。まったく!」

え?別れた?本当に?アオイは目を見開いてシュウを見た。シュウは笑っている。
「振られちゃいました」
「え?」

家政婦が眉間に皺を寄せた。
「シュウさんを振るなんてどんな人かしら?」
彼女は子供の頃から彼を知っている。何もかも面白くないと言うような顔つきだ。

え?振られた?シュウが?あんなに仲が良かったのに?ミナトがニヤリとする。
「姉ちゃん、チャンスじゃんか」
アオイは頬を紅潮させて弟を睨んだ。

母親が笑った。
「そうよねぇ。昔からシュウちゃんの事が大好きでお嫁さんになるって言ってたものねぇ」
「やめてよ。そんな子供の頃の話」

家政婦が自信ありげに頷いた。
「シュウさんとアオイちゃんならお似合いだと思いますけどねぇ。なんて言うのかしら…お2人には似たようなオーラがあるんですよ」

それはきっと同じような水準の家庭で育てられた子供だと言う共通点だろう。アオイはどうして答えて良いか分からなかった。緊張を誤魔化すために箸でいつまでも魚の身をほぐした。

シュウは笑った。
「アオイはモテるんですよ。でも誰とも付き合わない。選り好みをしているのかな」
「シュ…シュウちゃん余計なこと言わないで」

「ええ?姉ちゃんがモテるの?それは実態を知らないからだな」
「ミナト〜!後で覚えてなさい」
一同は笑った。

食卓が明るくなって良い気分だった。いや、シュウがマイコと別れたから楽しいのか。何だか久し振りに昔に戻ったようで嬉しかった。これから頻繁に会えるのだ。アオイの胸は温かくなった。

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