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アンドロイド転生241

白水村

エリカはリペア室を出て鼻歌を唄いながらゲーム室に向かって歩いていた。気分が良かった。リョウに密告した事が気付かれて一瞬は慌てたが、イヴに彼の悪事を教えてもらった。

サキの裸体の隠し撮り。それでこちらが俄然に有利になった。サキの入浴中の姿がエリカのメモリに反映された。人間の裸などただの肉にしか過ぎないのにそれに魅力を感じ欲望を覚えるのだ。

馬鹿じゃないの?エリカは鼻で笑った。リョウは自分で楽しみ、己で首を絞めたのだ。公表すると脅したら呆気なく落ちた。私がサツキの逃亡を密告をした事を隠蔽すると約束させた。

なんて簡単だったのだろう。人間など自分の手の内の駒に過ぎないのだ。今まで私は従事する立場だった。だが勝った。それも呆気なく。これからもリョウは良い駒になりそうだ。

サキがやって来た。美しい容姿。平和な顔つき。盗撮されたなどこれっぽちも想像もしていない。幸せな女。そしてアンドロイドのケイと付き合う女。マシンに恋をしてるのだ。人間の心など容易い。

エリカは知らずに笑っていた。サキも微笑んだ。
「エリカ。楽しそうだね!どこ行くの?」
「ゲーム室。タケル達がいるの。サキも来ない?」
「ケイもいる?」

エリカは笑いたくなる。サキも直ぐケイだ。当然だ。好きな男と一緒にいたいものだ。
「いると思うよ」
「じゃあ、行く!」

エリカは立ち止まって首を傾けた。
「ねぇ?リョウの事をどう思う?」
サキは少し驚いた顔をした。
「え?リョウ?うーん…。普通…?どうして?」

エリカは含み笑いをする。
「リョウはね。サキの事が好きみたいだよ」
「え!まさか!」
「サキは綺麗だもんね」

エリカは微笑む。リョウが盗撮した事は言わない。それはリョウと取引したからじゃない。そんな人間のルールなんてどうでもイイ。私は私の為に生きる。そして邪魔な者は排除する。

ゲーム室に2人は入って行った。アンドロイドや大勢の人間達が憩いの時を楽しんでいた。タケルはダブルスでテニスゲームをしている。なんてカッコいいんだろう。どんな姿も素敵だ。

エリカは声を張り上げた。
「私も混ぜて!」
トワが振り返った。
「こっち来いよ!ダンジョンゲームしねぇ?」
「うん!する!」

エリカとサキはホログラムの洞窟の中に入って行った。仮想の世界で敵と戦い勝利して宝箱をゲットする。中には様々なアイテムだ。これがバトルを有利にさせる。エリカは子供達と歓声を上げた。

ダンジョンはまるでイヴの中みたい。彼女は何でも見つける。きっと今後も自分に有利なものはいくらでも探し出せるだろう。アイテムを得て勝利する。この世はゲームだ。私は世界を掌握する。

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