アンドロイド転生271
2117年12月31日 午前3時
茨城県白水村 リビングにて
タケル達はホームに戻り、全てを報告した。
「ダイヤを返そう」
キリの言葉にタカオは深く頷いた。
「そうだな。また忍び込んでダイヤを返せば強奪はなかった事になる」
従兄弟のアキラは身を乗り出した。
「待てよ!あっちだってさ?大企業だろ?疾しい事で手に入れたんだ。ダイヤが盗まれたなんて公に出来ねえぜ?うちらの事はバレないよ」
タケルは腕を組んだ。
「俺もそう思ったんだが考え直した。警察に通報しなくても、アンダーグラウンドに報告するかもしれない。俺達の事がバレる恐れがある」
トワが目を開いた。
「そうだよ!あの家には銃だってあったんだ。裏の繋がりがあるかもしれない!」
アキラが舌を鳴らして悔しそうな顔をした。
キリがアンドロイドを見渡した。
「アオイは説得出来ると思う?」
トワが鼻で笑った。
「説得なんて出来ねえよ」
チアキが助け船を出した。
「大丈夫っだって言ったよ」
タカオは眉間に皺を寄せた。
「説得なんて無理だ」
キリも頷く。
「そうだよ。ダイヤだけじゃなくて銃も持ってるなんて相当だよ。聞く訳がない。ダイヤは諦めよう。他にいくらでも仕事はある」
チアキが立ち上がった。
「じゃあ、私が返しに行ってくる。バイクで行って来る。その方が早いから。アオイを拾うよ。…アオイの事は許すよね?」
キリは笑った。
「バレたのはアオイのせいじゃないよ!」
「じゃあ追放…なんてしない?」
「するわけないよ!」
タケルがソファから立ち上がった。
「俺が行く」
「私が行くよ」
「俺がリーダーだ」
チアキは不安になった。タケルは憤怒している。良くない方向に行くのではないか?それとも人間同士で理解し合えるのか?タケルはタカオを見た。
「ダイヤを返しても良いんだな?」
タカオは笑った。
「今回はなしだ。またやれば良い。悪い奴はいくらでもいるんだ」
「分かった。行って来る」
エリカは不服でならなかった。なんでアオイと2人きりになるの?
「私も行く!」
「邪魔だ」
タケルは下山し車輌の保管倉庫に向けて歩いた。月明かりに銀世界が美しかった。倉庫に到着すると大型バイクに跨った。車体が浮上する。タイヤが熱を発散し積雪の中でも運転が容易だった。
タケルはアオイのGPSを追跡した。都内を移動している。全く馬鹿な女だと思う。老人1人の為にホームを危険に晒した。結局は強奪したダイヤを返還するのだ。いやアオイを信じた俺達が馬鹿だった。
空を見上げた。宵の明星が輝いている。何があろうとも陽は昇るのだ。そう言えば今日は大晦日だ。今年も無事に終わるのかと思っていたが違うようだ。雪道の中タケルはアオイを目指した。
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