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毒親予備軍〜彼女の人生はすべてがオープン。

 件の猫撫で声の女性が、明日、妊娠のため退職する。

↓前回参照。


 時期的に、前上長が送り迎えをした飲み会とも被るので、私は托卵の可能性もあると考えている。

「寂しくなりますねー」
 と、猫撫で声と仲良しの女の子にチャットで言われたが、
「いやあ…正直、ホッとしています」
 と返した。

彼女いわく、いまだに前上長はチャットで
「ラーメンおごるから、行かない?」
 と連絡してくるらしいし、
(派遣の女の子しか友達居ないのか、コイツは……)
私はここ2ヶ月ほど諸事情で自宅勤務しているのだが、ひょっこり職場に顔を出したらしい。

 飛ばされた理由も、人員補充の他にもあるらしいという噂の中、あまりにも間抜けすぎやしないか……。

 その前上長は、絵に描いたようなパワハラ体育会系上司だったのだが、飛ばされた先では周りの頭の良さに付いていけずに、げっそりと痩せてしまったらしい。
 会話にも付いていけない、見下す人間も居ない、「お前」と呼べる女性社員も居ない。

 いや、それが当たり前だからね??
痛い目は見てください、50代の上長が一つにしばれるほど髪を伸ばしてその上、金髪なんて……
個人営業店ではないんですよ……。

 前上長が居なくなってしばらくして、猫撫で声が妊娠を発表した。
(妊娠……前上長居なくて、寂しくなったのかな)
……いや、発表なんかしなくていいから。

 同僚の話によると。
数カ月前、移動のため、猫撫で声含め5人くらいで車に乗っていた。
猫撫で声が突然、
「妊娠用の制服ってあるのかなぁ〜?」
 と言い出し、
しばしの間があり、
「……どうかな、総務に大きいサイズ申請してみたら?」
 と女性が回答した。
 同僚は、そこで「こいつ妊娠したのか」と知ったらしい。
 その後、帰りの車内でもマタニティハイな猫撫で声がはしゃいでいたらしいが、誰も応えなかったらしい(笑)

 承認欲求の塊である彼女は、自分がきらきら、それが全てなのだ。

 自分の人生の全てを公開し、誰にでも好かれる私は素晴らしいのだ。
 だから、
自分を素晴らしいと思ってくれない人、特に自分を甘やかさない女性は“敵”である。

 私は、その“成れの果て”をよく知っている。

 毒親だ。
彼、彼女らの世界は狭く閉じている。

故に、思い通りにならない自分の唯一の所有物、
「子ども」に全てを負わせる。
自分が素晴らしいと言われるために、私はあんたのためにこんなに頑張っている、頑張ってきた。

なのに、
何故、言うことを聞かない?
私の素晴らしさを証明するには、あんたが頑張るしかないのに!

知るか、そんなの。

叩いて、物を壊して、山に置き去りにして
それでも言うことを聞いてくれないの、
何でなの??

……もういいや。


とにかく、そんな気配がプンプンする。
母親になると言った、たくさんの女性を見てきたが、猫撫で声は彼女らとは違って、
『新しいアイテムを手に入れた子ども』
にしか見えないのが怖かった。

……お前も、飽きたら棄てるのか。


ここらで終幕、
幕が開くことがないのを切に願う。