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Coping skills/対処能力の高め方。

*こちらは私の子育てブログ記事をreviseしたものです。

ギフテッド子育ての先輩あーちゃんママさんが、ご自身のブログで『ギフテッドが身につけるべきコーピングスキル』という記事を数年前に紹介されておられました。

私も息子を育てるなかでギフテッド特有の完璧主義やネガティブ過ぎる自爆的思考などに当時は毎日(小1時間に1回は)引きずりまわされ、その度に限りある気力体力時間を吸い取られ、全身全霊でぐったりしておりました。

今この記事を読み返して、受験プロセスやスクールワーク、課外活動などで多忙かつストレスフルな毎日を送る息子をサポートするのに非常に役に立つと改めて感じ、こちらでもシェアしたいと思いました。

当時のままの突拍子ない意訳ではありますが、著者の意図が伝わるよう気をつけて訳したはずですので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

アメリカではギフテッド関連の情報が非常に多く、私などはその莫大な量に溺れて途方に暮れてしまうのですが、そのようななかでピンポイントに有意義な情報を見つけ出されているあーちゃんママさんの目利き力、見極め力に感服してやみません。



ギフテッドが身につけるべきコーピング・スキル


ギフテッドの子達は超完璧主義とも言える高い設定を己に課しています。すべての分野で完璧な結果を出さねばならない、間違えは許されない、と非現実的にも思い込んでいたりするため、フラストレーションの塊と化すことも多々あるでしょう。

例えば実年齢よりはるかに高度な推理力を持ちつつも、文章力が実年齢にすら追いついていない場合、一般的に文章力で生徒の知識や能力を評価する(いわゆる普通の)学校環境では評価されづらく、結果、ギフテッド達はフラストレーションでいっぱいになってしまいます。宇宙の成り立ちを、例えば大学レベルで理解していても、その理解力と比例した文章力を持ち合わせていないため、うまく表現することができず、とんでもないフラストレーションがたまるのです。発達が(ギフテッド以上に)アンバランスな2eの子達に限っては、より頻繁に過小評価され、フラストレーションは更にたまりやすいと言えましょう。

高度な能力を持ちつつも、その能力を表現できなかったり生かせなかったりしてフラストレーションの塊と化したギフテッドの子達は、現状から逃避したり、すべてを拒否したり、すべてに反発したり等、あらゆる問題行動を起こすことがわかっています。

どのようにしたらギフテッドの子達の粘り強さと精神的回復力を培っていけるのでしょうか。

生きていくなかで幾度となく直面する挑戦的な逆境を乗り切る対処能力(コーピング・スキル)を、私達親や教師は、どのように指導していけば良いのでしょうか。

これは重大な課題です。ギフテッドの子達に適した環境(例えばギフテッドプログラム等)をどれだけ整えたとしても、彼らが逆境を乗り切る術を学べなければ、どうしようもありません。

(以下はギフテッド達のコーピング・スキルを高める具体的方法です)


Improve frustration tolerance (Lengthen the fuse).



まず一番のキーポイントとして、ギフテッドの子達はフラストレーションに対する耐久力が低いということが挙げられます。故に、なんらかの逆境や刺激に直面したときに即(瞬時に)反応してしまうのです。Stephen Covey 著の The 8th Habit にも書かれていますが、成功する者は刺激と反応のあいだにスペース(間/ま)を置くことができるものです。これは、何かが起こっても(即反応せず)どのように対処するかを考え(=間を置い)てから初めて反応する、ということなのですが、感情や行動のレギュレーションが上手くいかない者は、年齢を問わず、このスペース(すなわち間)の感覚をあまり持ち合わせていません。そこで、まず子ども達がこの『間の感覚』を持てるよう導いていくことが最大の目標だと言えます。自分が今直面している物事と、それに対して反応するまでの間を、上手くとれるようにするのです。この間がとれるようになれば、どのように対処すれば良いかを考える時間も生まれるため、癇癪を起こしてしまったり、不貞腐れて殻に閉じこもってしまう事態を防げるようになります。間が長くとれるようになればなるほど、より建設的に問題を解決できるようになるでしょう。


Teach them to use their great "thinking brain."



ギフテッドの子達の優れた考察力に焦点を当て、その考察力(=考える脳)を、自身の問題や苦戦している分野に上手く使うよう話して聞かせることも大事です。セルフトーク(ポジティブな自己暗示)を紹介し、物事に対する自分の感じ方や行動は自分自身で決定できるものだと教えることも効果的でしょう。子ども達に、自分自身を追いつめるような自爆的思考、ネガティブな思考を認識させてください。「満点じゃないなら意味がない!」とか「今すぐ正解を出せない私は馬鹿だ!」「すべてが出来ない僕はダメなんだ!」等がギフテッドに見られる顕著な自爆的思考ですが、そのようなネガティブな思考パターンを明らかにすることで、子ども達自身が自分の思考や行動にコントロールを持ち始められるようになります。そして、例えば「これは難しいな。でもすべてが得意じゃなくてもいいし」とか「90点でもオッケー」「習得には時間がかかるよね」等、よりアダプティブに考えられる(=物事や事態、状況を受けとめられる)ようになっていきます。子どもが思考パターンを変えられたとき、刺激と反応のあいだに間を置くことも(以前より)出来るようになるはずです。


Help form a realistic view of self and abilities.



個人の能力を正しく認識させることも課題の一つです。ギフテッドは自らに対する期待値が異常に高い(が故に自分に非常に厳しい)わけですが、実際のところ、ギフテッドがすべてに万能である確率は極めて低いです。親や教師は、ギフテッド個人が自分の能力を正しく把握できるよう導いてください。何に秀でていて、何は標準で、何が不得意であるのか、を明らかにするのです。大人が『不完全人間』のモデルとなり、自らの失敗談をシェアすることも大切です。ギフテッドの子達は大人の過去の挑戦や経験談を聞くのが大好きです。自分達が尊敬する/慕う大人達にも不得意な分野があることを知り、そこから(すべてに秀でていなくても良いのだという安心感や、皆が大なり小なり劣等感に苦しんでいるのだという共感等を得て)学んでいくのです。子どもの秀でた部分はきちんと認め、そこを強調しつつ、苦手な部分に向き合う勇気を持たせましょう。


Scaffold and support weaknesses.



ギフテッド達の問題行動のほとんどが「どこからどう始めたらいいのかわからない」が故に起こります。子どもが苦手分野を克服できるよう、周りの大人は、スキャフォールディング、つまり『足場』を組んで、サポートしていきましょう。ここで言う『足場』とは『細やかで具体的な支援』です。例えば読書感想文を書くのが苦手な子どもには、読んだ本に関する質問をし、子どもが考えを整理しやすいようサポートすることが『足場』です。算数が苦手な子どもには、共に座り、算数の課題に集中できるよう環境を整えることが『足場』となります。とある分野では高度に秀でていても、苦手な分野においては、幼い子どもに対するサポートと同レベルのきめ細かな具体的支援を多くのギフテッド達は必要としています。高層ビルを塗り替えるときに『足場』を組むように、今はまだ自力では乗り越え切れない問題に取り組むギフテッド達を、この『足場』でサポートしていきましょう。


Set up opportunities for success.



ギフテッドの子達にとって、自分が馬鹿に見えたり劣って見える言動をする/させられることは、非常に勇気の要る行為です。例えば『大人から注意を受ける』といった単純で日常的な行為も、ギフテッドの子達にとっては『みんなの前で注意された=自他公認で馬鹿という証拠=恥=屈辱』という図式により、耐え難い状況と感じてしまいます。注意や指導などギフテッドが恥と感じてしまう行為を行うときは、プライベートな空間を設けてプライベートに行う(=公の場で行わない)ことが大切です。超優秀だと見なされているギフテッドにとって、優秀なイメージが崩壊することは恐怖でしょう。勉強が上手くいっていない低達成なギフテッドは、落第や落ちこぼれ感に慣れてしまっているため、苦難に立ち向かう(&努力をしては失敗するという)試練、鍛錬に耐性ができていません。これは『馬鹿であるより不良(品)のほうがマシ』という諺が哀しくも当てはまってしまうケースです。

上記からもわかるように、ギフテッド達が成功できるような機会(=環境?)を整えることは極めて重要です。成功はさらなる努力と失敗を恐れないマインド(risk taker )を育みますが、失敗(=敗北感や挫折感)はギフテッド達をかたくなにさせたり反抗心を増長させてしまいかねません。我々大人は、子ども達が成功しても失敗しても『Win=勝ち=成功感』を得られるようなプランを立てる必要があります。ギフテッドの子達は意志が強くアイデア溢れる傾向にあるため、彼らをプラン作りに参加させてしまうのも良いでしょう。なぜこのプランを作っているのかを子どもに理解させ、サポートの重要性を話し、プランを確実に成功させるにはどうしたら良いかを子ども自身に考えさせるのです。ほかの子達が実践しているプラン内容(=サポート) を紹介し、試してみたいか尋ねてみても良いでしょう。例えばアウトラインから始めたいか、文章からか、文節からか、あるいはパワーポイントから始めたいか、具体的に話し合うのです。重要なのは、子ども達にプラン作りに参加させること。そうすれば成功する可能性が高まるでしょう。


まとめ

家庭や教育の場において、ギフテッドの子達の粘り強さと精神的回復力を培うための支援は重要です。ギフテッドの凸を伸ばしつつ凹をサポートするためには、ギフテッドの子達のためだけの特別支援プログラムが必要不可欠です。漠然と支援するのではなく、彼らが自ら壁や逆境を乗り超えられるよう(目標を掲げて)支援していかねばなりません。

ギフテッドの子達にとって失敗が耐え難いことを理解しながらも、彼らにコーピング・スキル(=対処能力)を身につけさせ、リスクがとれるように、そして何度失敗しても起き上がり、立ち直り、挑戦し続けられるよう、支援していきましょう。成功を手にしている者は頭脳明晰な者ではなく、粘り強くて順応力が高く、問題解決ができ、諦めない人達です。成功者達は、自分は何が得意で何が苦手かを見極めています。そして次々と湧き上がる問題を柔軟に解決していく術を知っている=精神的回復力に長けているのです。ギフテッドを育て指導していくのは骨が折れますが、それでも我々は彼らの成長をあらゆる方法で支援し続けなければいけません。最後まで諦めることなく支援し続けていきましょう。


Peters, D. (2012). Coping 101: Building Persistence and Resilience in Gifted Children. Davidson Institute. Retrieved from http://www.davidsongifted.org/Search-Database/entry/A10772



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