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毎日読書#277 『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(マーティン・ファクラー)

スーパーへ買い出しに行こうと出かけたら、駅前の書店が開いていたので覗き込んでみたところ、割と空いているようだったので、パッと入って、ヒュっと10冊位選んで、サッと買って帰ってきた。

レジはビニールシートでガードされていて、会計を待つための場所には1.5メートル位の感覚でビニールテープで目印が置かれていた。店員さん達は皆緊張の面持ち。列に並びながら、ああ、自分みたいなやつがいるから書店も店を開いちゃうんだよなと思い少し反省。もうちょい我慢します。

さて、そんな後ろ暗い気持ちで買ってきた本達の中の1冊が本日の「データ・リテラシー」です。読み始めたら新型コロナウィルスにまつわるフェイクニュースの問題が取り上げられていた。ずいぶんと新しい本なのだなと奥付をみたら「4月30日」の発行になっていた。未来から来た本だ。

昨今の新型コロナウィルスの問題では、フェイクニュースや権力者による扇動が溢れている。とくに今回の騒動は、フェイクニュースが蔓延する時代で最初に発生したエピデミックでとなる。

過去のエピデミックでは、ニセ情報と共に感染が拡大していった歴史が何度も繰り返され、不幸な死を沢山招いていただけど、情報化が進む現代では、よほど注意しないとミスインフォメーションが爆発的に広がってしまう恐れもある。

そんななかで、正しい判断を下すため、大量の情報から正しい情報をよみとり、いかにして真実を見極め、悪意から身を守るのか。本書では、そのキーワードが「データ・リテラシー」だという。

本書では、「データ・リテラシー」を、

テレビや新聞、ラジオといったマスメディアが発信する情報を正しく読み取る能力を指す。(P10)

と定義し、その「データ・リテラシー」を身に着け、情報の「積極的な利用者」として報道や情報に向き合う為の方法を示す。

目次は以下の通り:

序章 「データ・リテラシー」の時代
第1章 「紙」とともに消える日本の新聞
第2章 フェイクニュースに操られる世界
第3章 中国が仕掛ける情報戦
第4章 ジャーナリズムと戦争
第5章 海外ジャーナリストが見るメディア20
第6章 日本のジャーナリズム復活のために
付録 フェイクニュース問題を取り上げる映画9選
おわりに ゲートキーパーとしてのジャーナリズム

各章は、それぞれフラットで客観的な内容と感じる。

著者は日本を拠点に活動をするフリージャーナリストのマーティン・ファクラー。恥ずかしながら存じ上げませんでしたが、海外の新聞メディアで記事をかいてきた方です。

日本のメディアや報道の状況を俯瞰的に、客観的に見て論じていて、日本のメディアの散々な現状、フェイクニュースに惑わされる現代の問題、それを利用して力を得る権力者や国、といった問題をフラットに論じおりとても参考になった。

特に日本の新聞社の窮状や、販売店がらみで、がんじがらめで動けなくなったまま沈んでいく様子の説明などは、以前にもご紹介した『2050年のメディア』にも通ずる内容で、問題の根深さを改めて知らせてくれる。

フェイクニュースについては、トランプによる大統領選の大げさな煽りや嘘など、日本から見ている分には滑稽なパフォーマンスにしか見えなかったけど、アメリカでは、私なんかが考えるよりも深刻な事態を引き起こしていたようだ。恣意的に作られたフェイクニュースが、現実世界を曲げていく様子が紹介されており、背筋が寒くなる。

ロシアや中国の暗躍の様子などは、どこまで本当なのかわからないけど、フェイクニュースやサイバー空間の活用が国策として行われている事がわかる。以前中国に滞在していたとき、実際に金盾(中国が運用するグレートファイヤーウォール、中国国内のネットワークを噂では200万人で監視している)によるブロックや、ホテルで利用していたPCに、IPを狙い撃ちしたアタックを受けたりしたので、あの国では何があっても驚かない。

さて、本書を読んでいると、現状の日本で、報道をジャーナリズムを、どこまで頼りにしてよいものか悩んでしまう。

本書ではジャーナリズムが持つべき本質として

「読者をempowerする」(P165)

としているが、現実は心もとない。

明らかに権力への監視は不十分で、ファクトチェックやゲートキーパーの機能は、期待するものより弱い。SNSでは嘘とポジショントークが渦巻いており、友人・知人の意見以外はどれも眉唾に見えてしまう。

我々はどうしたらよいのか、本書が言う通り、データリテラシを鍛える事が自らを守る事になるのだろう。自らが情報を集め、正しい意見を持ち、正し判断を行い、正しい行動につなげていくことが必要となる。

そのためには、どうしたらよいか、大丈夫、5章が突然ノウハウ集になっているので参考になる。

本書を入り口に、色々と読んでみると良いと思う。


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