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毎日読書#215 『村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解』(村上春樹、沼野充義、NHK出版、侘美真理)

昨日ご紹介した村上春樹の短編『かえるくん、東京を救う』のジェイ・ルービンによる英訳と原文を全文掲載しつつ、そこに翻訳された英文を読むためのコツというか、どのようにして英訳されたのか解説したもの。

NHKのラジオ番組「英語で読む村上春樹」が書籍化されたものということらしい。なぜ購入したのか、それは昨日の記事でこの短編が掲載されている1冊を紹介し、特にこの「かえるくん、東京を救う」を紹介したからね。

この記事を書きながら「かえるくん、東京を救う」で検索をしたところ、本書を見つけたので、興味本位で購入してみた。

ちなみに英語は苦手だし苦手なので苦手なんだけど、この本は英語云々ということはあまり関係なく読める。とにかく、翻訳という作業の難しさ、面白さがよくわかって非常に興味深く読んだ。翻訳家、とくに、優れた翻訳家というのは、原作者並に重要な文学者であるということがよく分かる本だった。それを知ると、コンテンツにしたくなる気持がよく分かる。

翻訳された小説を(加えて技術書、ビジネス書なども)読んでいると、あきらかに意味が通らない記述をみつけ、ああ、これは誤訳だな、と気がつく事があるけど、どうやっても避けられないものだなということがよく解る。翻訳は機械的な作業ではないのだなということがよく解る。単純に互いの言葉の辞書を引き当てていけば翻訳が完成するというものではないのだ。

辞書を開けばよくわかるが、一つの言葉を取ってもいくつもの解釈がなりたつ。それを外国語で新たに表現をしなおすわけなので、そこには、語彙だけではおいつかない、様々な知識や知見が必要となる。物語の背景に深い理解が無いと、翻訳など出来ないのだ。しかも、背景といっても広く深く底が無い。文化なのか、地理なのか、科学なのか、ともかく本の分野によっては、作者と同等かそれ以上の知識が必要となるのではないかな。そのうえで、さらに文学的表現(ビジネス書なら、その国のビジネスを理解したうえでの文書表現)というものを駆使しなければならない。

なんて難しい作業なんでしょう。

さらに、その元ネタが村上春樹ってのがもう気の毒でならない。

一文一文をじっくりと英訳解説されている、とても勉強になったし、翻訳家への尊敬が三段階位上がった。

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