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【書評】 カフカを、漱石を、ポーを、そしてドストエフスキーをたった16ページの漫画で表現する 『カフカの 城 他三篇』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。357冊目。

以前、オーウェルの『1984年』と、村上春樹の『螢』を漫画化した本をよみました。そしてとても気に入りました。

小説作品のメタ的な情報をすくい上げ、解釈し、それを漫画として落としているような作品。独特の絵柄とあいまって不思議な読後感を味わう。

作者の森泉岳土は水で描き、そこに墨を落とし、細かいところは爪楊枝や割り箸を使うという独自の技法で漫画を描いている。

おなじみの日本的な漫画とは全く違う線のタッチが心地よい。

他の作品も読みたくなったので購入したのがこちら。

『カフカの「城」他三篇』(森泉岳土)

収録されている作品は4本。

『城』(フランツ・カフカ)
『こころ』より“先生と私”(夏目漱石)
『盗まれた手紙』(エドガー・アラン・ポー)
『鰐』(ドストエフスキー)

ラインナップが激シブ。

これらの作品がそれぞれ16ページの漫画となっている。

最後のドストエフスキーの『鰐(ワニ)』は迂闊にも読んでいなかった。この本の『鰐』は現代風にアレンジされているのだけど、ユーモラスな話で原作がどのようなものなのか非常に気にり購入してみた。

そのうち読んでみます。

本書が届く前は、新潮文庫版で630ページもあるカフカの『城』を、どうやって漫画のフォーマットに落とし込むのだろう? と思っていたけど、主人公の困惑だけをシュッと抜き出して作品化されていて少しビックリした。

実際に『城』を読むよりも主人公であるKの疎外感、困惑っぷりが伝わってくるようで面白い。

漱石とポーも全く別の作品といえる仕上がりなのに、どこかで同じ血が流れている事に気がつくような不思議な体験。

元の作品からメタというか、魂というか、エキスというか、そういった根源的なものを取り出し煎じ詰めたような漫画たち。

元の作品が好きな方なら楽しめると思います。オススメ。

逆に、元の作品がわからないと、ちょっと辛いかもしれない。本当に全然意味のわからない読書になってしまうのかもしれない。

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