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毎日読書#274 『マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた』(スコット・バークン)

積読図書館より、今まさに読むべきではないかというタイトルの本。

本書を購入したのは2015年。ちょうど次女が生まれそうな時期で、会社を辞め、個人で独立し。フリーのエンジニアで食っていくぜと鼻息も荒かった。

だけど、うっかり読みそびれ、それっきり積読に。

本書は、著者のスコット・バークンが、アメリカを代表する大企業であるマイクロソフトから、すべての仕事がリモートで行われるベンチャーに転職した時の経験をまとめたもの。

このベンチャーとは、ブログツールである「WordPress」を開発する Automattic社だ。(←つづりは合ってます、創業者の名前がMattさん)

インターネットに接続している人であれば、だれしもが直接的に間接的に、なにかしらお世話になっているだろうWordPressのソフトウエアの開発及びメンテナンスや、WordPressをつかって誰でもブログが始められるブログをホスティングをするサービスなどを運営している。

スコットが入社したときのAutomattic社は、社員が50名前後とそれなりの所帯だったが、初日から完全なリモートのまま入社し、開発プロジェクトを率いていく様子が詳しく紹介されている。

社内のコミュニケーションはすべてリモートなのだが、利用するツールのポートフォリオが面白い。

Blog 75%
チャット 14%(しかもIRC!)
Skype 5%
メール 1%

と、不思議な割合。メンバー同士のコミュニケーションにBlog? このあたりの話は面白いので気になる方は是非読んでみて。

スコットは、コミュニケーションが適切にとれていれば、仕事の進め方じたいは、実は普通の会社と何もかわらないという。

ただ、ルールが違うだけで、基本は一緒だと。

オフィスに集まって顔をあわせなければ、同僚と意思疎通もチームワークも無理だというのは、変化を嫌う人のバイアスであるようだ。

本書では、リモートワークを成功させるためのテクニックや企業文化の作り方、チームメンバーとのコミュニケーションのとりかたなど、生産性を保つための方法を、様々なトピックで詳しく紹介してくれている。

とくに成功の法則といった事が書かれているわけではなくて、自分達はこうやった、という記録的な側面が強いのだけど、一つ印象に残るのは「信頼」というキーワード。

リモートワークというのは、別に自宅で働く事をさすわけではなく、自由に好きな所で働いて構わない。キッチンでも、庭でも、車の中でもレストランでも、コワーキングスペースでもキャンプ場でも、川の中からでも。もちろん、旅行をしながらでも良い。

社員はどこからでも自由な場所で働くことが出来る。

それは、自分が生産的であるために何処で何をするか、それを決めるのは社員自身であることを示す。そして、これが正しく行えるか否か、そこにその社員の「信頼」が大きくかかわってくる。

これから会社にリモートワークを取り入れなければならないマネジメント層にとっては、本書はとても参考になると思う。

現在のAutomattic社は、スコットが入社したころの50名から飛躍的に成長し、1000名弱の中堅企業となっている。

しかも、現在の規模になっても、本書にあるようなリモートワーク中心で会社は運営されているというから驚く。

今まさにどうなっているのか、ぜひ続編も読んでみたいのだが、残念ながら著者のスコットは、この本を書くためにAutomattic社を退社している。

あらゆる企業にとって、ヒントの多い本ではないかしら。おススメです。

ただ残念ながら絶版。いま、このタイミングで文庫化されたら良いのに。

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