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毎日読書#248 『となりのカフカ』(池内紀)

著者の池内紀さんは、白水社から出ている『カフカ小説全集』の翻訳をされた方。その方が、カフカの入門書を書いたのが本書だ。

そう、入門書。カフカの小説を知り尽くした著者による、人間フランツ・カフカの入門書だ。面白そうですよ。目次からして気になる。

第1章 サラリーマン・カフカ
第2章 カフカ家の一日
第3章 虫になった男
第4章 メカ好き人間
第5章 健康ランドの遍歴
第6章 手紙ストーカー
第7章 性の匂い
第8章 ユダヤ人カフカ
第9章 独身の選択
第10章 日記のつけ方
第11章 小説の不思議
第12章 カフカ・アルバム——プラハ案内とともに

フランツ・カフカの生涯を、理解の鍵となるいくつかのテーマにわけて紹介している。

これが妙に面白い。

小説の解説が入るわけではないのだけど(3章で紹介される「変身」の創作ノートの話はかなり面白くて作品理解にもつながるけど)、少なからずカフカ作品に興味を持つひとなら、面白く読めるトピックが沢山紹介されている。各章がそれぞれ独立しているので、手軽で読みやすい。

一般的なイメージとしてのフランツ・カフカといえば、いくつかの不思議な小説を書き、写真に写る姿は気難しそうな雰囲気。

Wikipediaなどでもみられるが、よく使われる写真は、眼光鋭く頬もコケ、引き締まった唇にスーツ姿。どこからどうみても気難しそうな雰囲気だ。

私なんかは出版されている小説を一通り読んでいるものだから「絶対に変態に決まってる」と勝手に決めて付けていた。

しかし、実際のカフカは心優しく、ユーモアがあり、メカ好きで、毎日遅刻気味だが勤勉で、真実と公正を重んじ、異性にも人気のある、人間味あふれる魅力的な人物だったようだ。フーン。

気難しい写真にも理由がある。それは、この写真が撮られたときのカフカは仕事も辞め、生活が困窮し、結核も悪化してまさに死の寸前だったのだ。死にかけてるんじゃ、気難しくみえるのもしょうがない。

作品を読んだ人ならなおさらだけど、なんだかイメージと違うのだ。とってもフツーなのだ。フツーにちゃんとしてて、ちゃんとモテる、ちゃんとした男だ。

しかし、じっくり読んでいると、やっぱりカフカって変な奴。その辺は実際に手にしてみてください。2020年3月末時点では、Amazon Unlimited で読めるようです。面白いよ。

そして、本書をよみ、もっと知りたいとなったら、同じ著者の『カフカの生涯』を読もうという事のようだ。

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