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5本の短編で綴る王達の物語、陽子もいるよ! 『華胥の幽夢 (かしょのゆめ) 十二国記 7』


『華胥の幽夢 (かしょのゆめ) 十二国記 7』(小野不由美)

途中で止まっていた十二国記だけど、戻ってきたら、もう先が気になって気になってしょうがない。最後まで読みたくてウズウズがとまらない。でも、最後まで読んだら読むものがなくなってしまうから、それはどうしよう。

面白いと思ったら、シリーズものなら最後まで読まないと気がすまないし、同じ作者の全作品を読みたくなるし、読む時間がなくても買うだけは買っちゃうし。ということでこのまま残りも読んでしまおう。

そういえば、ドラマも1話目が面白かったら、最後まで見ないと気がすまない。だから、海外ドラマはなるべく触らないようにしています。

さて、そんなことはよくて、十二国記です。

前回『図南の翼』は12歳の珠晶(しゅしょう)が王として選ばれるまでの長編だったのだけど、十二国記の魅力の一端が凝縮された見事な物語で楽しい読書だった。

その次の刊行となる本作『華胥の幽夢』は、王の物語が綴られた短編5本。これも、どれも読んでいて満足感の高い短編ばかり。

特に、表題にもなっている「華胥」は力の入った作品で読み応えもあった。先代の王が暴政を敷き国を荒らしたことを踏まえ、新しい王は清廉潔白な統治を志すが「正しさ」にこだわるあまり、何も動かなくなってしまう。王は迷い誤り、国は正道から外れ、麒麟は病に伏してしまう。結末に至るまでのドラマが切なくも悲しい。

陽子と楽俊の登場する「書簡」も良かった。声を届ける鳥(ボイスレコーダー機能を持った鳥)を介して、王となった陽子と楽俊が近況を交わす話。この二人の話はいいよね。楽俊は表向き差別の無い自由と平等を謳う国で学問の道にすすむも、半分人間、半分獣の半獣であることから、様々な受難があり、葛藤もある。王となった陽子は、朝廷との関係が作れず、政には参加ができていない。両者、そんな相手の現状を察しながら、相手を深く思いやりつつ、お互いの近況を知らせ合う。そんな書簡のやり取りが好ましい。

長編の間を埋めるスピンオフ的な内容だけど、十二国の世界をより立体的にみせてくれる1冊。さて、次はどんな話だろう。楽しみ。


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