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ゲノム科学をコンピュータサイエンスのたとえ話で『生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像』

ほぼ毎日読書し、ほぼ毎日読書ログを書いています。

『生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像』(田口善弘)

またスーパーでの食材調達のついでに書店に入ってしまった。入ったからにはあれこれと見て回るのだけど、ご時世か、カミュの『ペスト』が平積みで、感染症関連の本も沢山並べられていた。

感染症関係は好きな分野なのだけど(人間の英知と勇気が詰まっていて、不謹慎だけど面白いのだ)、最近気になっていたのがRNAや突然変異あたりの話で、わかりやすく解説されているものはないかしらとあれこれ探していた。しかし、残念ながら見つけられなかった。

でも、代わりに本書を見つけた。目次を見ると面白そう。

第1章 ゲノム — 三十八億年前に誕生した脅威のデジタル生命分子
第2章 RNAのすべて — タンパク質にならない核酸分子のミステリー
第3章 タンパクのすべて — 組成を変えずに性質を変える魔法のツール
第4章 代謝物のすべて — 見逃されていた重要因子
第5章 マルチオミックス — 立ちはだかるゲノムの暗黒大陸

ね、面白そうでしょ。面白かったです。


現在、ゲノム科学の分野では、知識の更新が頻繁に行われているそうで、最先端の世界では、様々な興味深い発見、研究が行われているという。

本書では、基本的な情報から、最新のトピックまで、デジタル技術に例えて説明を行っており、ユニーク。

いわれてみれば、DNAは4種類の塩基の配列で出来ており、たしかに、バイナリで解釈できそうだ。DNAプリンターなるものがもしあったとしたら、DNAの塩基配列を毎回寸分たがわず出力する事ができそうだ。

本書では、デジタル情報処理系としてゲノムを捉える考え方を指して、DIGIOME という造語を作り説明を行っている。そのうえで、ゲノム科学をコンピューターサイエンスの話に例えて説明をしてくれている。

ただ、DIGIOMEの詳しい紹介が無いので、読みながら「で、DIGIOMEって何の略? DIGIはデジタルで、OMEは? で、DIGIOMEって何?」と気になってしょうがなかった。

また、そもそもゲノム科学の用語などに対する説明が少ない上に、コンピューターサイエンスの基本的な概念の理解が無いと、たとえ話で説明してくれているのに、その例えがわからない、みたいな状態になるのが悲しい。

でも、でも、それでも頑張って読んでいると、へー、ふー、おおー、と興味の惹かれる新しい話題が多く、読んでいて楽しい。

私自身の読書傾向をみるに、一応、科学ファンの端くれ位には居ると思うのだけど、それでも初耳な話が多い。

例えば、メジャーな所だと、DNAのほとんどが意味のないゴミ情報で、ジャンクDNAがある、なんて習った覚えがある。

だが、最近の研究では、この領域が重要なものであることがわかっているそうだ。RNA遺伝子など、大事な情報がこのかつてジャンクと呼ばれた領域に多く含まれるという。へー。

ということで、読むのは大変だ(そこはほらブルーバックスだし)けど、そこを乗り越えれば刺激的な読書となるでしょう。おススメ。

最近のブルーバックスは表紙がオシャレ。


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