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毎日読書#200 『風の谷のナウシカ』(宮崎駿)

最近、引っ越しをしたのだけど、引っ越しの準備となると、本棚を片付けることになる。そして、本棚を片付ける事の難しさというものがあり、次から次へと自分好みの本が本棚の奥から出てくるので、ついつい読み始めてしまい片付けがはかどらない。

今回も、漫画だったらすぐに読み終わるからいいよね? なんて思いながら、ついついナウシカに手を伸ばす。そして、荷造りそっちのけで読み始めてしまう。しょうがない、ナウシカは、気になったらもう、読まないわけにはいかない。

本作、20年以上読み続けているから、殆ど内容を覚えちゃっているのに、3年に一度は読み返しちゃう。

それにしても、ナウシカの何が凄いって、その値段が凄い。安い。7巻揃いなのに3,443円とビックリ価格。平均しちゃうと、1冊あたり500円を切る。私の手持ちの1巻は、表紙に340円と書いてある。今でも税抜き価格は390円だ。いまどき新刊でこの価格は考えられない。

先日東京駅に入っている本屋に立ち寄ったとき、7巻ボックスセットが売っているのをみかけて、あらためてその価格に驚く。

しかもいまならポストカード入り!

そして、ナウシカと言えば、頭でなりひびく安田成美の歌声。

この歌、映画では一切つかわれていないのに。頭にこびりついて離れないというか、書店でコミックをみかけるたびに頭の中で再生される。

さて、さて、本作。殆どの方の場合、なじみがあるのは映画のほうだ。映画化されたのはもう30年以上前の1984年。大ヒットではなかったが、大きな話題を呼び、宮崎駿とスタジオジブリが世に出るきっかけとなる作品となった。

映画では、正義としての風の谷のナウシカ、悪としての大国トルメキアのクシャナというわかりやすい構図で、最後にはちゃんと娯楽としてのカタルシスも用意され、今でも愛される大傑作として世に出ているけど、原作からみると、映画化されたのは3巻の冒頭まで。この原作では、なんと、そのあと5冊分の物語が続く。

そして、読んでいくと、勧善懲悪な映画版とはちがい、すべての国や登場人物には自らの正義があり、それぞれが幸福を求め、真実を求め生きている姿がかかれる。ナウシカ好きだったわー、という方は、是非漫画を全巻読破してほしいな。残酷で救いの無い物語だけどね。

宮崎駿の作品の根底に流れる弱い物へのやさしさ、欲が肥大した文明への批判、戦争や一方的な武力行使への批判、そして、人間全般にたいする絶望感や諦め。そういったものの源泉がこの作品には沢山含まれていると感じる。現在に至るまでの様々な作品に触れると、おそらく、この漫画を描いているころは、もっと言語化したいこと、もっと絵にしたいことが沢山あったのに、それが出来なかったのだろう。消化不良のまま腹痛をかかえて7巻のあのラストに突入したのではないかしら。だんだん、物語から力が無くなっていき、しょうがないからエイやーと終わらせた。そんな印象もある。

とはいえ、傑作には違いない。安いし、面白いし、読まない手はないよ。1家に1セット。是非どうぞ。

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