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旭化成、半導体パッケージの高密度化実現に寄与する特許で経済産業大臣賞を受賞

発表日:2024年6月4日

概要

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)は、半導体パッケージの高密度化を実現する絶縁膜用組成物の発明(特許第5841373号)(以下「本発明」)が、公益社団法人 発明協会主催による令和6年度全国発明表彰の「経済産業大臣賞」を受賞しました。

受賞理由

電子デバイスの性能向上において、半導体パッケージの高密度化は重要な要素です。特に、最先端スマートフォンなどの高性能チップでは、高密度Fan-Out Wafer Level Package(高密度FO-WLP)構造が注目されています。この構造を採用することで、従来のFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array Package)構造よりも処理速度の高速化が可能になります。

しかし、高密度FO-WLP構造にはいくつかの問題が存在します。まず、低温硬化が必要であり、さらにパッケージの大面積化や再配線層の層数増加に伴う異種材料間の熱膨張率差によって、再配線層にかかる応力が増大します。この応力により、銅配線と絶縁樹脂間の剥離が発生しやすくなります。

また、銅の密着性と劣化防止(防錆性)の両立が求められますが、既存の再配線層用の絶縁樹脂ではこれらの要求を満たせず、高密度FO-WLP構造の実用化が進んでいませんでした。

この課題を解決するために、本発明は高密度FO-WLPの再配線層に用いられる絶縁膜用組成物(図1)を開発しました。この新しい組成物は、既存の絶縁樹脂における問題を解決するものであり、高密度FO-WLP構造の実用化に寄与します。

図1. FC-BGA構造から高密度FO-WLP構造への転換

本発明の発明者らは、ポリイミド前駆体組成物※3に特定のプリン誘導体※4を添加することで、低温硬化でも銅への高い密着性を示し、かつ、防錆性を高いレベルで両立できる絶縁膜用組成物を見出しました。

さらに、さまざまな解析を通じて、このプリン誘導体が従来使用されていた含窒素芳香族化合物※5とは異なるメカニズムで、密着性と防錆性の向上に寄与していることを解明しました。


本発明の絶縁膜用組成物は、世界の最先端スマートフォンに使用され、一段とその適用範囲は広がり、日本の材料技術が電子デバイスの進化を牽引している代表的な例となっています。

また、樹脂と銅の接着性は広く電子部品分野で問題となっており、本発明およびそのメカニズムの解明は、今後のさまざまな電子材料開発への貢献も期待されていることから本受賞に至りました。

※1 熱膨張率差
温度の上昇により、物質の長さや体積が膨張する割合を1℃あたりで示したものを熱膨張率という。
熱膨張率差とは、物質や材料間の熱膨張率の差のことで、一般的に金属は熱膨張率が小さく、樹脂は熱膨張率が大きいので熱膨張率差は大きくなる

※2 応力
物体を変形させようとする、物体内部に発生する力

※3 ポリイミド前駆体組成物
ポリアミド酸樹脂および添加剤、溶媒からなる組成物

※4 プリン誘導体
6員環および5員環構造中に窒素原子を有する複素環式芳香族化合物の一種

※5 含窒素芳香族化合物
ベンゾトリアゾール等に代表される窒素原子を持つ芳香族化合物

参考文献


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