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【注目ニュース】次世代放射光施設「NanoTerasu」を活用したタイヤ材料の研究開発を開始
発表日:2024年5月16日
みなさんこんにちは。【注目ニュース】では、最近発表された半導体関連のニュースの中から、専門家が厳選してお届けします。通勤・通学時間、始業前などにぜひチェックしてみてください。
概要
株式会社ブリヂストンは、東北大学青葉山新キャンパス内に設置された3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」(ナノテラス)を活用したタイヤ材料の研究開発を開始しました。
NanoTerasuでは、軟X線を使用し、タイヤ製品に広く用いられる高分子材料を分子スケールで観察します。これにより、高分子材料の特性を深く理解し、商品設計基盤技術「ENLITEN®」の進化を目指す革新的な材料や、資源循環率を極限まで高めたゴムの開発を進めていきます。
ゴムは硫黄を用いた架橋と呼ばれる化学反応により、その弾性を発揮します。しかし、架橋は複雑な化学構造であり、適切に切断することが難しいため、リサイクルの妨げとなっていました。
タイヤ性能とサステナビリティを両立させるためには、架橋の化学構造を正確に把握することが必要です。今回、東北大学の西堀麻衣子教授と共に、NanoTerasuを活用して架橋の化学構造を分子レベルで観察し、そのメカニズムの解明に取り組みます。これにより、新材料や効率的なゴムのリサイクル技術の開発を目指します。
ブリヂストンは、「ゴムを極める」「接地を極める」「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に技術イノベーションを加速させています。「ゴムを極める」においては、ゴムを見る、解く、操る技術を進化させることで、より強くしなやかな革新材料の開発や、地球環境に配慮したサステナブル素材の開発を推進し、商品設計基盤技術「ENLITEN」を支えていきます。
これにより、企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」で掲げる「Energy カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えること」「Ecology 持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐこと」に貢献します。
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解説
2024年4月から稼働を開始したNanoTerasuを用いた研究開発が民間企業や大学の間で進んでいます。正式名称は、3GeV高輝度放射光施設です。
この3GeVとはなんでしょうか?
答えは、電子の運動エネルギーです。
ほぼ光速で直進する電子が、その進行方向を磁石などによって変えられた際に発生する電磁波を放射光と呼びます。電子の運動エネルギーが高いほど放射光は指向性の良い明るい光となります。
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放射光は光なので、波の性質を持っています。つまり、一回の波が通り過ぎるまでの距離である波長で整理することができます。放射線は基本的にX線です。
X線は波長が数10eV-数keV程度の軟X線と数keV以上の硬X線に分けられます。それぞれ得意分野が異なります。
硬 X 線を利用した解析では重元素の測定が中心になるのに対し、軟 X 線では軽元素の測定が中心になる。
硬 X 線は透過力が高く物質内部まで分析が可能であり、大気中での実験が可能なため実験 が容易という特徴があるのに対し、軟 X 線は透過力が低く主に物質表面を測定・観察することになり、高真空又はヘリウム中での実験を行う等の工夫が必要となる。
また、硬 X 線を利用した解析で は回折による構造解析が中心であるのに対し、軟 X 線では分光による電子状態の解析が中心である。
国内の放射光施設でよく知られているのは理研のSpring8だと思いますが、そちらは硬X線を使用しています。今回のNanoTerasuは軟X線を使用しているため、軽元素を含む材料を解析することに強みがあるわけですね。
軽元素を含む複雑な材料の代表例が高分子材料です。特にタイヤゴム材料は、ポリマー、フィラー、架橋剤、添加剤等の 10 数種類以上の素材からなる非常に複雑な系となっています。
各素材の構造や物性は既知ですが、ゴムとし て混ぜた場合、空間構造的にも時間構造的にも非常に幅広いスケールでの階層構造により機能を発現するため、そのメカニズムの解明は非常に難しい課題でした。
NanoTerasuを使って、幅広い時空間スケールでの構造解析を期待したいですね。
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