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味の素ビルドアップフィルム®(ABF)とは?

一言で言えば…

ナノスケールのICチップとミリスケールのプリント基板を接続する電子回路を保護するための層間絶縁膜の一種。味の素が製造しており、層間絶縁膜としての世界シェアはほぼ100%。

CPUの内部構造とABFの位置関係

ABF導入のメリット

液状のコーティング材料との比較
1.気泡、印刷ムラによる歩留まり低下防止
2.溶剤の揮発が無く、作業環境をクリーン
3.両面同時加工が可能で生産性が高い
4.薄板においては板の反りによるトラブルを防止
5.表面平滑性に優れ、膜厚のコントロールが容易

樹脂付き銅箔(RCC)との比較
1.ファインパターン形成に有利
2.レーザ加工が容易

フォトビア用材料との比較
1.設計の自由度が高い

ABF開発の歴史

高機能CPUのスタンダードになったABF

味の素グループの技術がパソコンに採用されていることはあまり知られていませんが、その心臓部である高性能半導体(CPU)の絶縁材にはABF(味の素ビルドアップフィルム)が使われています。

現在、ABFは全世界の主要なパソコンのほぼ100%にシェアを持っています。1990年代、パソコンはMS-DOSからWindowsへと移行し、CPUは高集積化されました。初期のCPUでは端子がわずか40本でしたが、やがて千本以上になり、CPUを接続する方法も複雑化しました。

これに伴い、新たな絶縁材料のニーズが高まりました。

CPU

従来の液体絶縁材料をフィルムへ

味の素グループは、1970年代にアミノ酸に関するノウハウを応用した絶縁性を持つエポキシ樹脂に注目し、基礎研究を続けていました。1990年代にはその技術をパソコン用半導体基板の絶縁材料に応用することを決定し、インク形式であった絶縁材料のフィルム化という困難な課題に挑戦しました。フィルム状の絶縁材料は高性能CPUの課題を克服するためだけでなく、世界が必要とする技術でもありました。

有機物と無機物をミクロのフィルムに一体化

味の素グループは、絶縁素材の性能を決定する樹脂組成物の研究開発に取り組みました。この組成物は電子材料としての機能とフィルム化できる加工性を兼ね備えている必要があります。

有機物のエポキシ樹脂や硬化材、無機フィラーを組み合わせた処方を開発し、均一に分散させて絶縁性と優れた加工性を持たせました。研究開発チームは、これらをクリアした熱硬化性のフィルム開発に成功しました。1999年に大手半導体メーカーに採用されて以来、ABFは回路の高集積化に対応して進化を続けています。

ABFの外観

ビルドアップによる精緻な回路

現在のCPUは高度に小型集積化されており、内部の電子回路はナノメートル単位です。これをミリメートル単位の他の電子部品に接続するため、微細な電子回路を何層にも積み上げたビルドアップ基板が使われています。ABFはレーザ加工と表面への直接銅メッキによって、マイクロメートル単位の電子回路を形成できます。

つまり、ABFはCPUのナノサイズの端子からプリント基板へのミリサイズの端子へと電子の流れを導く重要な役割を果たしています。

ICチップとプリント基板をつなぐビルドアップ基板


参考文献


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