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ラピダスや東大、米テンストレント社に200人派遣しAI半導体人材を育成

発表日:2024年6月14日

概要

日本の半導体技術者の育成と産業再興に向けた取り組みが進行しています。特に注目されるのは、ラピダスや東京大学などが参画する「最先端半導体技術センター(LSTC)」による、海外での技術者育成プログラムです。

これは、日本国内の半導体工場建設が進む中、技術者の数が過去20年間で6割減少している現状を受けて、人材の底上げを図るものです。


技術者育成の具体的な取り組み

LSTCは、2024年内にも米国の新興企業テンストレントに技術者を派遣し、AI向け半導体の設計業務に従事させる予定です。選抜されるのは国内の大学院生や企業で半導体の設計・開発に携わる30〜40歳代の技術者で、試験や面接を通じて決定されます。5年間で200人の育成を目指しています。

テンストレントは、米アップル出身の半導体設計者が設立した企業で、AI向けのCPUやアクセラレーターを効率よく組み合わせた半導体を開発しています。

派遣された技術者は、テンストレントでAIの推論や学習に使う演算用半導体の設計に携わり、1〜2年の派遣期間を経て帰国後は日本国内の通信や自動車関連企業、研究機関での就業が想定されています。経済産業省は、技術者の出国前研修や現地での生活費を支援するため、数十億円規模の補助金を用意しています。

Tenstorrent社HP


ラピダスとテンストレントの協業

ラピダスは、2027年に回路線幅2ナノメートルの最先端半導体の量産を計画しています。同社は、半導体製造を受託するビジネスモデルを採用しており、顧客である日本企業に半導体の知識を持つ人材がいないと受注量の増加が見込めません。

そのため、テンストレントとの協業を通じて、AI向け半導体の開発を進め、消費電力を抑えた半導体の開発を目指しています。これにより、米エヌビディアよりも優れた性能を持つ半導体を提供することを目指しています。

NVIDIA社のロゴ

日本の半導体産業の歴史と現状

1980年代、日本の半導体メーカーは世界を席巻し、世界シェアは5割を超えていました。しかし、1986年の日米半導体協定による貿易規制の強化を受け、日本の勢いは失速しました。

その後、韓国や台湾の企業が台頭し、巨額投資の負担に耐えられなくなった国内企業は半導体の先端開発から撤退しました。工業統計調査によると、1999年に19万4000人だった半導体人材は、20年間で6割減少しました。電子情報技術産業協会(JEITA)は、素材や半導体製造装置を含めると、国内で半導体人材が10万人不足する懸念があると指摘しています。

1999年から半導体人材は20年で6割減少

半導体人材育成のための産学連携

半導体人材を育成するための環境整備が産学で進んでいます。熊本大学は2024年度に「半導体デバイス工学課程」を開設し、大学内にクリーンルームを設置して半導体の要素技術を学ぶ環境を提供しています。北海道大学も2023年に大学内の専門家を集めて半導体人材育成を担う推進本部を設立しました。さらに、米半導体大手のマイクロン・テクノロジーや東京エレクトロンは、日米11大学と教育プログラムの整備を始めており、5年間で6000万ドル(約95億円)以上を投じて先端教育のカリキュラムを策定しています。

熊本大学半導体デバイス工学課程

結論

LSTCによる技術者育成プログラムは、日本の半導体産業の再興に向けた重要な取り組みです。AI向け半導体の開発において、テンストレントとの協業や経済産業省の支援を受け、技術者の育成を推進しています。

また、産学連携による教育プログラムの整備も進んでおり、国内の半導体人材不足を解消するための努力が続けられています。これらの取り組みにより、日本の半導体産業が再び世界をリードする日が期待されます。

参考文献


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