見出し画像

キヤノンアネルバ、東北大と無加圧で異種材を接合可能な技術「ADB」を実用化 半導体SiC基板の薄化可能

発表日:2024年6月12日

概要

キヤノンアネルバと東北大学は、真空を利用した室温接合技術「原子拡散接合(ADB: Atomic Diffusion Bonding)」を実用化しました。この技術により、金属や酸化物、窒化物の薄膜を介して、あらゆる物質を無加圧で接合できます。

キャノンアネルバ社の原子拡散接合(ADB)装置

ADBは、高周波用のフィルター素子や、炭化ケイ素(SiC)ウエハーの薄化光学部品パワーデバイスなど、幅広い用途に活用できる技術です。

この技術は、接合する材質を鏡面研磨し、スパッタリングなどで金属などの薄膜を形成し、表面を活性化状態にすることで実現されます。活性化された接合面同士を触れさせるだけで、接合が可能です。

これは「原子再配列現象」によって、接触した原子が相手の原子格子に従って配列を変えるためです。接合後の薄膜の界面は判別できないほど強固に接合されます。

2枚のSi基板をTiとAgの薄膜でそれぞれ接合した。原子再配列現象が室温で生じ、接合界面が消失している(写真:東北大学学際科学フロンティア研究所島津研究室)

ADBの利点は以下2点です。
・あらゆる材料を接合できる
・室温で接合できる

特に異種材料の接合では、熱膨張率(CTE)の違いによる反りなどの問題が解消されます。例えば、半導体用基板の高性能化が進むにつれて、CTEの違いによる反りは大きな問題となりますが、ADBはこの問題を解決します。

接合に使用する薄膜は、金属膜や酸化膜、窒化膜など多岐にわたります。東北大学の研究者は、Ti(チタン)やAg(銀)などあらゆる金属薄膜を使った接合が可能だと述べています。

300mmのウエハーサイズの接合も量産レベルで可能で、半導体用の窒化ケイ素(SiN)膜などでは優れた熱伝導性と電気的絶縁性を持ちます。

金属膜のADBはすでにいくつかの用途で実用化されており、その一例がスマートフォンに多く搭載されている表面弾性波フィルター(SAWフィルター)です。ADBは、SAWフィルターの圧電体とその支持基板の接合に採用されています。

今後、ADBの有望な用途の一つは、SiCウエハーの薄化です。SiCは高価なため、ウエハーをできるだけ薄くする方法が求められています。ADBを用いて安価なSiCウエハー(キャリア)と高価な良質SiCウエハーを接合し、良質なウエハーをスライスすることで、多数のデバイスを作製できるようになります。また、キャリアとの接合により、デバイスの電力損失が減少し、性能が向上します。

ADBは比較的高価な4H-SiCウェハーを再利用することが可能

さらに、ADBはハイブリッド接合に応用できる可能性もあります。薄膜の厚さが非常に薄いため、電極材料の工夫や低温の熱処理と組み合わせることで、電極を接合できる可能性があります。

これにより、電極の上に薄膜を形成しつつ、電極接合が可能となるため、将来的には多様な応用が期待されます。

参考文献


おすすめ記事

https://note.com/semicontimes/n/nc04fc57b827e

https://note.com/semicontimes/n/n510c396acf97

https://note.com/semicontimes/n/n7b9bfa02acbd


#半導体 #半導体関連 #半導体株 #半導体って何 #半導体の基礎
#注目ニュース #ニュース #半導体ニュース #最新ニュース
# スキしてみて

よろしければサポートもよろしくお願いいたします.頂いたサポートは主に今後の書評執筆用のために使わせていただきます!