私が「船場ビスポーク」をオープンした理由
noteの更新をずいぶんサボってしまいました。約半年ぶりです。また少しずつこちらにも書いていきます。
実は2021年1月にお店をオープンいたしました。1925年に建設された登録有形文化財「船場ビルディング」の213号室にささやかなオーダーメイドサロンを開きまして、その場所を「船場ビスポーク」と名付けました。
船場ビスポークに込めた想い
船場ビルディングは、1925年建設当時からほぼ変わらずその姿を残しており、文化財にも指定されています。また、船場というのは今でも生地問屋がたくさん残る歴史ある繊維の街。
「船場」の地名を入れることで、この場所へのリスペクトを込めました。
また、基本の形をあえて縦書きのロゴにしたのは日本語であることにこだわったからです。
メイドインジャパンの価値
近年スーツや重衣料の需要減少で、歴史ある生地工場や縫製工場の閉鎖、廃業する職人さんが後を断ちません。
一度失われた職人技や歴史的な技術は二度と戻らないのです。
メイドインジャパンの品質。
日本の職人技を伝えて残す。
そういうことを大事にしたいという、日本人の誇りともいうべき気持ちを込めました。
そして、ビスポークとは「be spoken (対話する)」を語源とし、オーダーメイドのことを指します。
オーダーメイドとは対話から生まれます。
仕事のこと
好きなこと
楽しいこと
ワクワクすること
家族、友人
そしてあなたの夢
内面から輝き、
自信に溢れるような1着
そんなあなただけのスタイルを一緒につくりたい。そんな想いを込めています。
なぜオーダーメイドなのか
私がファッションの仕事でも、特にオーダーメイドを選んだのには理由があります。
もう約20年も前ですが、私は百貨店のレディースキャリアブランドで働いていました。
そこは立体裁断で着心地が良いのと、外国人デザイナーを起用したスタイリッシュなデザインが売りでした。
他メーカーのキャリアブランドよりも手足が長く、多少ゆとりもあるデザインでした。
そんな訳で顧客様は割と大きめの方が多くいらっしゃって、でも商品によってはサイズが難しいものもありました。
一応試着して頂くのですが、「あかんかったわ〜」と言いながら試着室を出て来られる時のバツの悪そうな表情。
気を遣って笑顔を作ってくださるのが、逆に本当に申し訳なくて…
ウエストや裾を出したり、なんとかサイズを合わせることもありました。
お客様のことを考えれば考えるほど、ひとつのショップで働く限界を感じるようになりました。
その後、会社を辞めてロンドンに留学、そして結婚・出産を機にアパレルから離れて、事務職に転身しました。
その当時はファッション業界に戻る日が来るとは夢にも思っていませんでした。
それから10年後、秘書として勤務していたある日、上司に言われた何気ない一言が大きなきっかけになります。
「瀬島さん、そんなにファッションが好きなら自分でそれをしごとにしたら?あなたのセンスでみんなをカッコよくしてあげたらいいじゃない」
そのアイデアは衝撃で、私の心に深く刺さりました。
それまでずっと企業勤めの私にとって、起業するなんて発想は微塵も無かったのです。
でも私、それめっちゃやってみたいかもしれない。
やっぱり私はファッションが好きなんだ。
その当時はまだ娘たちも小さく、そんなのは到底無理だと思いながらも、その言葉は私の中で大きく響きました。
(結果的にはそれから1年半後、その上司が繋いでくれたご縁から、大阪の老舗テイラーで4年半修行することになります。)
その時勤務していたのが金融会社だったので、周囲の皆さんがオーダースーツを着ていたのももちろん大きな理由ではあります。
ただ、やはり「あなたのためだけにつくる」というオーダーメイドの理念が、私の気持ちにぴったり合ったのだと思います。
毎シーズンのトレンドに振り回されたり、お店の在庫を考えながら商品を売るような仕事は、もうしたくなかった。
オーダーメイドだからこそ、お客様に最適なものをご提供できると思いました。
本当に自分が心からオススメできるものをサービスできるのは幸せなことです。
今はオーダーメイドも手頃な価格になりましたし、通販も豊富ですし、安価な海外ブランドも簡単に手に入るようになりました。
選択肢が増えて、昔よりもずっと簡単に安くサイズも豊富に、ファッションを楽しめるようになっています。
しかしその分、何を選んで良いかわからない、という方も増えているように思います。
もっと自分らしく、自分の内面とぴったり合うスタイルで、自信を持って輝く人が増えますように。
そう思いながら、ひとりひとりのお客様とbespoke(対話)させて頂いています。