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【SELSHA通信3月号】ダイヤモンドの後にあるもの

今月ピックアップするのは宝石も書籍もダイヤモンド!最も有名な宝石ですが、皆さんはどのくらい知っていますか?是非知られざる歴史から何かを感じていただけたら嬉しいです。

『SELSHA通信』の 第一回目は「宝石と鉱物の文学誌」と「ガーネット」
第二回目は『「仕事ができる」とはどういうことか?』と「アメシスト」
をご紹介してきましたが、第3回となる今回は【ダイヤモンド】です。

宝石の代表格ともいえるダイヤモンドは品質が良ければ、飛びぬけて価格が高いことを誰もが知っています。しかし、なぜ「値段が高いのか」ということをあまり深く考えたことが無いかもしれません。 実は私は去年からGIAのダイヤモンドグレーディングコースを受講しています。そんな訳でこれまで学んできた情報を少し整理しながら、皆さんにシェアする良い機会だなと思って、今回は「ダイヤモンド」を取り上げてみました。

ダイヤモンドについて調べると本当に情報は沢山有りますので、ご紹介する書籍もダイヤモンドに関するものにしました。後半にその本の概要にさらっと触れたいと思いますが、とくかく書かれている内容は「明日から使える知識」ではなく、どちらかと言うと「新しい視点を与えてくれる本」だと直接的に感じています。この記事を読み終わる頃には皆さんにとって新しい視点が1つでも増えていれば嬉しいです。ぜひ最後まで読んでみてください。


《 今月の石:ダイヤモンド 》


ダイヤモンドはなぜ他の宝石に比べて値段が高いのか?ということを考える前に、まず時間を巻き戻して、ダイヤモンドが生まれる場所と簡単な歴史背景についてざっと見てみましょう。

大雑把に言うと、ダイヤモンドは地球の内部、深さ 140km~220kmくらいのマントルという領域で、適切な温度と圧力の元に生まれ、マグマという波に乗って一気に地表まで噴出してきます。ゆっくりと移動した場合にはその過程でさらに変化を遂げて、同じ成分でも鉛筆の芯として使われるグラファイトになってしまいます。やや小難しいですが、下の段落はGIAの英文の一部を私が日本語訳したものです。ご参考までにどうぞ。

ダイヤモンドは希少?
ここで一番言いたいのは、ダイヤモンドは「希少」だと思われているかもしれませんが、実は膨大な量がまだ地中に埋まっているのです!MIT、ハーバード大学などの合同研究チームが発表した研究によると、地殻のかたまりの1~2%がダイヤモンドである可能性を指摘しています。今はまだより高度な採掘の技術が無い、あるいは採算が合わないかもしれませんが、何億トン、何兆トンものダイヤがまだ地下深くにあるというわけです。未来を考えると
その利権をめぐる醜い武力紛争がまた勃発するんじゃないかと懸念ですね。

ダイヤモンドの近代史
では、ダイヤの “近代史“ について簡単に触れておきましょう。18世紀まではインドでダイヤモンドは多く採れていましたが、その後はブラジルでも採れるようになりました。しかし、その時はまだまだダイヤモンドの知名度や流通は少なかったのです。それが1866年にアフリカでダイヤモンドが見つかったことで流れは大きく変わりました。下の表のように多くの国が「富」を求めてアフリカを占領しに行ったのです。

ダイヤ業界のジャイアン「デビアス社」
このアフリカ占領の歴史の中でも、イギリス人のセシル・ローズは採掘したダイヤモンドを元手に鉱山の権利を買い、さらにロスチャイルド家から融資を受けて、1880年に「デビアス合同鉱山株式会社」を設立しました。

そしてその後、市場の90%を独占するようになったのです。それが、かの有名な「デビアス」という会社の始まりです。今では法律で禁止されていますが、その時はダイヤモンドの値崩れをさせないために市場を独占し、未加工のダイヤモンドを一か所に集め、そこから分配し、資本力のある会社だけにダイヤモンドを卸していました。

もうすでご存じかもしれませが、デビアス社のダイヤモンドの売り方について簡単に紹介します。

こうやってデビアスは自社が有利になるように仕組みを決めてきた、言わば「ジャイアン」的な存在で、やがて世界のダイヤモンド産業をコントロールしている巨大シンジケート(共同販売をする企業連合)を抱える企業となったのです。

ダイヤモンドは永遠の輝き
日本市場には1970年代から、“A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)”という誰もが聞いたことのあるキャチフレーズとともに参入してきました。これまでの「ダイヤの誕生」と「流通」の流れを踏まえて「ダイヤモンドはなぜか特別な存在なのか?」と問われたら「それは企業の卓越したマーケティング戦略です」と答えた方が一番シンプルかもしれませんね(^-^)

映画、CM、いろんな広告を見てきた皆さんはどうですか?結婚指輪はダイヤモンドにしていますか?残念ながら私は数年前妻にプロポーズするためにダイヤの指輪を買ってしまった人間です(笑) その時は宝石についての知識も経験も少なかったので、とりあえず”王道”のダイヤモンドを買っておけば無難でしょ、という思いがありました。でももう一回プロポーズの指輪を選ぶならたぶん違うものを選びますね。

ラボグロウンダイヤモンド
さて、今後のダイヤモンドの価値、価格はどのように変化していくのでしょうか。正直私には読めません。デビアス社はこれまで「人工ダイヤモンドはダイヤモンドではない」と主張してきましたが、2018年には態度を一変し「ライトボックス」という合成ダイヤモンドを使った新規ブランドを立ち上げました!

すると、それまでデビアス社と取引していた企業も人工ダイヤを認めざるを得なくなり「ライトボックス」が出てきた瞬間に手のひらを返しました。日本では2021年がラボグロウンダイヤの”流通元年” なんて言われています。この変化球は誰にも読めませんよね (笑) 

とは言いながら、ダイヤモンの原石採掘から流通まで支配し、90%ものシェアを持っていたデビアスも、現在は50%以下まで落ち込んできています…
これは何を意味しているのか、その余白の部分をぜひ皆さんに考えて頂きたいと思います(^-^)

このようにダイヤモンドの背景を少し知ることで、ダイヤモンドを見るレイヤーがひとつ増えたと思います。さまざまなレイヤーが重なっていくと新しい視点が生まれる、そんなふうに感じて頂けたら嬉しいです。


《書籍:ダイヤモンドの語られざる歴史》


さて、次に書籍のパートに移りたいと思います。この本はGIAでの勉強中に色々と調べている中で見つけたものです。結構分厚い本です。本書の中では数々のエピソードが紹介されていますので、ドキュメンタリー映画というか大河ドラマを見ているような気分になりました。各章ごとにテーマが違っていて、どこからでもすっと内容に入っていけます。

私は第1章の「ダイヤモンドを買う人たち」から第4章の「ホープダイヤモンド」まで一気に読んで、その後は興味のある章を優先順位を付けて時間ある時に少しずつ読んでいきました。

私が特に興味を持った部分として、この note の冒頭に登場している セシルローズが、実は病弱な少年で、彼がどのようにして世界のダイヤモンドの支配者になったのか、興味深いストーリが第2章に綴られています。

それと、最初はヨーロッパの貴族に独占されていたダイヤモンドですが、それをアメリカに持ち込んで成功したチャールズ・ルイス・ティファニーのストーリーなど、あまり知られていないことも本書で詳しく語られています。

ここではこれ以上詳細について紹介しませんが、個人的に本を読み進めていく中で、著者はこれほど沢山のエピソードを書くために、それを裏付ける膨大な資料を集めたのだなと感心しました。この本の訳者の方も言っていますが、これこそが本書の一番の価値かもしれません。

私にとってのダイヤモンド
最後に、今の自分がダイヤモンドに対して持っているイメージを一言で言うなら、ダイヤモンドは決して「貴重な宝石だから価値が高い」のではなく、この宝石を通してプリズムのように様々な物語を見せてくれる存在なのだというふうに感じています。

見せてくれる物語は素敵なものであったり、醜い歴史であったり、さまざまな側面があります。総じて人間という存在を違う角度で見ることができてとても興味深いなと感じました。ちなみに、醜い歴史(紛争について)にご興味ある方はぜひインターネットで調べてみてください。そういう歴史を掘り下げていくと、結局は財力、権力までつながっていきます。

それと、最近ちょっとしたブームになっている「人工ダイヤモンド」は果たしてエシカルか?についても個人的にすごく疑問を持っていますが、機会があれば別記事にしたいと思います。

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それではまた来月のSELSHA通信でお会いしましょう。(^-^)




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