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【SELSHA通信6月号】海からの贈り物

SELSHA通信は天然石ショップSELSHA が2022年から始めたメルマガです。
ここでは天然石の話だけでなく、日頃私が気になった書籍も合わせてご紹介していきますので、SELSHAを運営している人ってこんな人なんだなと思って楽しんでいただけたら幸いです。

日頃からnoteを読んで頂きありがとうございます。
月に1回のメルマガが定着してきて、先週東京国際ミネラルフェアに出展してまいりましたが、お客様にも「ブログを読んでいます」と言われてすごく嬉しくなりました(^-^)

今月は「海からの贈り物(サンゴ)」ということで、ブログの前半は珊瑚について簡単なご紹介と先月の高知出張の話、そして後半は《予想どうりに不合理》という書籍の紹介です。どうぞ最後までお付き合いください。

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実は私の趣味の一つがスキューバダイビングです。大学時代に出会い、日本だけではなく海外でも毎年潜っていましたが、モルディブやニューカレドニアなどめったに行かれない場所以外を除いて、やっぱり沖縄の海が一番好きです。
本島からフェリーで1時間ほど離れた慶良間諸島では、浅瀬に沢山のサンゴ礁が広がっていて、揺れ動く水面の影と優雅に泳ぐカラフルな熱帯魚が本当に綺麗です。しかし、そんな風景に見とれて浮力コントロールをおろそかにすると、身体がサンゴ礁にぶつかってすぐ折れてしまいます!

水深10mくらいの浅いエリアに生息しているのは、サンゴが死んだ後、その上に重なるように堆積してサンゴ礁を形成していることも多く、通称「造礁珊瑚」と呼ばれ1年に数センチの速さで成長します。体内の褐虫藻が二酸化炭素を吸収し、海の環境や生態系に深く結び付いていることから、ダイビングインストラクターには触らないようにといつも事前に説明されます。

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一方でジュエリーに使われるのは「宝石珊瑚」と呼ばれる水深100メートル以上の深い海の底に住んでいる珊瑚です。「宝石珊瑚」は造礁珊瑚ようにサンゴ礁を形成することはなく、光の届きにくい海の底で単独で暮らしている生物です。成長のスピード1年で0.1ミリくらいと造礁珊瑚に比べてかなり遅いのです。

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珊瑚の主役が地中海・イタリアから日本へ

珊瑚と真珠は日本の特産物で Made in Japan のブランドが世界に認められています。でも元々発祥地は遠く地中海の沿岸地域、イタリアやアルジェリア、モロッコだったことは意外と知っている方が少ないかもしれません。2万5千年前に発見され、本格的に珊瑚漁が始まったのは5千年前シチリア島の漁師たちの素潜りによるものでした。

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地中海産のベニサンゴは水深20から90メートル程度の漁でさほど難しくない為、立派な漁業産業として早くから確立していましたが、段々と取れなくなって、イタリア珊瑚商人たちが19世紀中頃、新しい産地を求めて日本の土佐(高知)や薩摩(鹿児島) にやって来たのです。その頃欧米諸国では産業革命が起き、国力が強くなっていました。この国力を使い欧米諸国はアジアに進出(侵略)していったんですよね。ペリーが来航したのも19世紀で、その時代にアヘン戦争も起きています。本当に変化が激しい時代でした。

今のように潜水艇もなかった昔は、漁師の網にたまたま引っかかって遭遇した「海の贈り物」のサンゴでしたが、歴史を辿ってみるといろいろ分かりますね。人の智慧で育てられるようになった海の産物が真珠だとすれば、100%海が創った宝石がサンゴだと言えます。

キリスト教や仏教だけではなく、イスラム教やヒンズー教においても、宝石珊瑚は重要視されてきました。 それ以外にも中国やインドでは医薬品として、またカルシウムが不足する土地では補給食品として珍重されたようです。

ちょうど先月、珊瑚の産地である高知県へ出張して参りました。職人さんへの取材が目的でしたが、そこで綺麗な血赤珊瑚と出会い、それに纏わる裏話もいろいろ聞けたので今月の記事にした次第です。

ところで、皆さんは「原木」」という言葉は聞いたことありますか? 業界では磨く前のサンゴのそのままの姿を原木と呼んでいます。

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今回訪問した会社の方のご好意で、仕入れたばかりの血赤珊瑚の原木を見せてもらいました。さすが磯臭かった。年に0.1ミリしか成長しないので、この長さになるまで200年以上かかることは間違いないでしょう。 お値段もなかなかです。

珊瑚は何気圧もある深海に生息していているので、引き上げられることで気圧から放たれた原木は縦方向の筋目状のひびができることがあります。そしてフジツボ等いろんなものが付着し、所々凹みやキズがあります。もともと日本産の血赤珊瑚は採れる量が非常に少なく、半分以上が虫食いなど、宝石珊瑚として加工できるのはごくわずかです。こうして考えると、数々のマイナス要因をくぐり抜けて目にする宝石珊瑚は本当に貴重です。

近年アジア諸国の経済成長に合わせて需要の増大とともに価格が上がっていて、特に赤の色が濃く鮮やかな血赤珊瑚は人気のアイテムです。業者さんに聞いたところ日本では元々血のような赤は嫌がられる色で価格も低かったそうですが、海外で人気が出ると相場も上がるもので今は血赤が最高級です。日本の市場に出すより海外へ輸出した方が断然反応が良いとのことで、見せてもらった原木もどうやら隣の国へ行く運命らしいです。

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先日の東京国際ミネラルフェアで高知産のサンゴとイタリア産両方展示販売してみました。予想通り赤い色に惹かれて珊瑚を手に取るお客様は多かったです。SELSHAは基本天然石を扱っていますが、たまには変化球も投げてみたいと思い、6月中旬のオンラインショップに2種類のサンゴを掲載販売してみたいと思います。ぜひ楽しみにして頂けたらと思います。


では書籍のパートに移りたいと思います(^-^)
今月皆さんにご紹介したいのはこの本です ↓↓

《予想どうりに不合理》

皆さんは「今日の予算は○○円まで」と決めた額の現金を持ってミネラルショーに行っても、結局クレジットカードを切って予算オーバーしてしまい、それを「出会いだから」「ご褒美だから」と自分を肯定したり、あるいは後悔したりしたことはありませんか?

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このタイトルある”不合理” とはなんの事かというと、経済学の世界では合理的に物事を考えることが一般的ですが、実際の人間というのはとても不合理な生き物であり、そこには実は一定の法則がある、という話です。 上のミネショの予算の話以外にも、例えば「試験前に机に向かうと何故か他のことを始めてしまう」など、皆さんも一度は経験したことがあるかもしれません。

人はなぜ不合理な決断をするのか?

本の中では様々な事例が書かれていますが、商売に関連が深い内容で1つだけ選ぶとするなら、「人は相対性で判断する」ということです。つまり「絶対的な基準」ではなく「相対的な優越」で物事を決める訳です。

例えば、ある珊瑚のルースが売られていたとして、その価値を単体で判断するのは難しい。でももし横に10000円とつけられた別の珊瑚が置かれていたら、もう一つの珊瑚はそれと比べて色がより綺麗だから、10000万円以上の価値があるだろう、と判断することができます。

経済社会において「価値」は重要な意味を持ちます。しかし、人は価値を正しく見極めることができるのでしょうか??残念ながら人にはその能力はない、と本書では指摘されています。現実としてあらゆるものに価格が設定されていますが、それがどのような基準によって決まるかというと、多くの場合「価値の相対性」があるわけです。

結局人間は合理的ではなく、偏見を持ち、ミスを犯し、時には自分を見失ってしまう。でも、それが人間が持つ機能の結果なので、人間の本能に基づくものを直したり正したりすることよりも重要なのは、不合理さが起きる仕組みを理解し、自分の不合理な行動を前提に対応策を考えることです。不合理は決して無駄ではなく、それを理解した上で上手に対応してこそより幸せな人生を歩む力となると思います。

2013年に出版されたこの300ページある本を、実は一度新入社員の時に手にしました。その時はピンとこなかったのですぐお蔵入りになりましが 、 点と点が繋がるように先月友人に勧められて再度読んでみたところ、思いのほか 「黒真珠を高級にした男」という仕事に近い話が出てきて興味がわいたんです。SELSHAは天然石を運営していることもあって「天然石を高級にできないかな」と思いながらどんどん読み進めていきました。

長くなってしまったので「黒真珠を高級にした男」の話は妻のラジオで代わりに喋ってもらいました。是非聞いてみてください。

本書で取り上げている事例は実験に基づくことが多く、サンプルケースが身近に感じないと読んでいるとちょっと疲れるかもしれませんが、必要な個所だけつまんで読めば、良い選択するためのヒントがいっぱいころがっている気がします。自分を成長させたいと思う方には是非読んでみてください(^^)/

ということで、最後まで読んで頂きありがとうございます。

ご感想ご意見がありましたらぜひ #selsha1114でつぶやくか、
直接DMして頂いても構いません。
ではまた来月にお会いしましょう(^^)/




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