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陽のあたる場所

12年間好きなバンドマンがいる。

この「好き」がどういう意味の「好き」なのか、もうわからない。ただ好きなことに間違いはないってだけ。

所謂ガチ恋バンギャだった。いや、今も多分そう。ガチ恋とは何ぞやって話になるけどそれは多分誰かが掘り下げてくれてるから任せるわ。
ガチ恋で、認知される程度には通ってて、それなりに派手で、それなりに札束で叩くタイプで、でも死ぬほどチキンで握手会やサイン会は爆死した。あちらからしたら訳がわからんファンだったと思う。

12年前に連れて行ってもらったライブで、タイトルにさせていただいた『陽のあたる場所』という曲の演奏中に見た笑顔に、一瞬で落ちた。12年経った今でもその瞬間の光景を覚えてるから衝撃は相当のものだったんだと思う。一撃必殺。

そしてその一撃から12年間。干支が回った。
こんなことになるとは。
16歳の私もびっくりするだろうし、28歳の私はリアルにびっくりしてる。
気持ち悪いけど、こんなに続く気持ちもまあ悪くないなっていう、アンビバレントな感情。


沸騰したり冷めたりしながらもずっと、絶え間なく好き。本人に「なんでそんなに俺のこと好きなの?」と訊かれたことが3回程あるけど、それがわかってたら魔法解除は簡単なんだよう。いつも頭のどこかにいて、呼吸するのと同じくらい当たり前に好きだから5W1Hじゃ表現できない。推しとか本命とかじゃないから。人生だよ、人生。


必死で追いかけてるときは、手が届きそうで届かない場所にいてくれるのに、私が油断すると居なくなってしまう。今もそう。ステージにその人はいなくて、ただわかることはどこかで生きてるってことだけ。心身を削り出して音楽を創ってたような人だから少し疲れちゃったのかな。ゆっくりでいいから帰ってきてくださいね。と言いつつ、その「帰ってきて」のひと言が、真綿で首を絞めるように苦しめていたら嫌だな、と思ってからは伝えられなくなった。帰ってこなかったらどうしよう。それでもまあ、生きていてくれたらいいか。と、今日も言い聞かせる。

本当はあの笑顔にまた会いたいけど。
ステージに立つ姿を見たいけど。
光に透ける髪や横顔の美しさを見たいけど。
覚えてくれた名前を呼んでほしいけど。

それが苦しみになるのなら、私が代わりに地獄に座ってるから大丈夫だよって言いたい。
代わりに、笑顔で生きててね。


いつ会えるかわからないから、死にたい今日をどうにか繋いで明日にしてる。明日も同じことするんだろうな。
日々を繋ぎ続けて、気付いたらおばあちゃんになって、それ以外のなにもかもを忘れてしまっても、最期まで好きでいられたらそれも悪くはないかな。


いつか、会えなかった間の話ができたらいいな。お互いの出来事を持ち寄って、ほうじ茶ラテを飲みながら笑ったり泣いたりしたいな。この願いが叶ったら私はいつでも死ねるし、それは神様が私にくれる今生最後の時間だと思う。



12年も好きでいさせてくれてありがとう。
こんなにも長い間好きでいられることが幸せです。あなたに出会える人生に生まれてよかった。


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