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「どうあるべきか」を見据えて、変化の波に乗るキャリア選択

今回は、キャリア編のインタビューです!

渋谷区議会議員の神薗まちこさんにセルパメンバーのなりがお話を伺いました!

神薗まちこさんのプロフィール

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プロフィール
「渋谷で子どもも大人も育ちあうまちをつくりたい!」と思い、区議会議員に立候補、令和の時代とともに議員活動がスタート。それまではベネッセで全国4,500校の学校支援やソフトバンクや鉄緑会などのパートナーと新規事業を立ち上げた。渋谷をフィールドに、0‐3歳の子育て世帯向けのイベント「渋谷papamamaマルシェ」を企画運営、「渋谷をつなげる30人」の4期メンバー、拡張家族Ciftのメンバー、小学生の娘の母でもある。
Twitter
@Kamizonomachiko

ー神薗さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!
神薗:よろしくお願いします!

「ライスワーク」と「ライフワーク」が重なっている

ーセルフパートナーシップBOOKでは、自己表現・キャリア・経済・子育て・性生活・家事暮らしといったテーマごとに発信を行っています。神薗さんは子育てや経済、自己実現を特に重視しているとのことですが、それぞれの取り組みが重なっている部分というのはありますか?

神薗:私は結構重なっている方だと思います。
「ライスワーク」(食べていく為の仕事)と「ライフワーク」(人生をかけて取り組んでいく仕事)で分ける人もいますが、私にとってはそこがニアリーイコールで。「子どもたちが未来へ向かって、イキイキと活躍できる社会を創っていくこと」がライフワークで、それ自体が政治家としての自分の仕事にもなっているし、お金ももらっているので。前職のベネッセコーポレーションでも同じでしたね。
ライフワークとライスワークが重なっていないと、自分自身がストレスフルに感じたり、矛盾を感じてうまく行かなかったりしてしまうと思います。そういう意味では、子育ても「子どもたちにとって何が良い状態か」を追求していく仕事だと思っていて、自己実現につながっていますね。

ー逆に、仕事の中でご自身のライフワークとリンクしていない部分はありますか。

神薗:区議会議員としての仕事の中では、子どもに関わることだけじゃなくて区全体のことを考えていかなければならない点でしょうか。皆が豊かに暮らせる社会であるということは子どもたちも豊かに暮らせる社会につながるので、地続きといえば地続きなのですが。そこは仕事としてしっかり取り組もうと思っていますね。


1人の100%よりも100人の1%

ーライフワークとして、「子ども・教育」というテーマに取り組んでいらっしゃるということですが、神薗さんは新卒でベネッセに入社されていますよね。ファーストキャリアを選んだきっかけについて教えてください。

神薗:大学生のころ環境問題に取り組んでいたことがあり、その時に一人だけが頑張っても問題は解決に向かわないし、社会は変わらないと痛感しました。
そこで考えたのが、同じ100%の力ならば、「1人の100%よりも100人の1%」を引き出したほうが、社会全体の意識を大きく変えられるのではないかということ。これを実現できる場所は、学校だなと思いました。
学校の中で先生になり、子どもたちと深い関係性を築いていくという選択肢もありましたが、浅いかもしれないけれど、もっと広く、面で働きかけたくてベネッセに入社しました。

ーベネッセの中ではどういう業務を担当されていたんでしょうか。

神薗:ベネッセでは、全国の9割以上の高等学校や中高一貫校に関わる部署を志望してそこに行きました。企業という立場ですが、先生方への支援を通じて、子どもたちに面で働きかけることができる場でしたね。

家庭や学校と、地域の連携への思い


ーベネッセに16年間つとめられた後、渋谷区議会議員に立候補されています。大きなキャリアチェンジですが、なぜその選択をされたのでしょうか。

神薗:その選択をするに至る明確なきっかけが実はあるんです。ある時、幼児から高校の先生が一堂に会し、どの学齢でどんな問題が発生しているかを横断で考える場(※)があり参加しました。

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※.岐阜県で高校教師をされていた浦崎太郎先生(現:大正大学地域構想研究所 教授)によるプロジェクト。(写真中央が神薗さん)

課題の根源として見えてきたのは、地域のコミュニティが崩壊し、母親だけが孤立して子育てする状況でした。子育てに自信が持てないと、毎日が不安定になり、結果的に子どもが保護者のもとで心身の安心・安全を保てなくなる。その不安定さが課題の根源になっていました。「これは地域コミュニティへの支援が絶対不可欠だ」と痛感しました。

ーそれはいつ頃ですか?

神薗:ベネッセに入社して3〜4年目の時です。とはいえベネッセの仕事も面白くて、家庭や学校と地域の連携の重要性には前から気づいていたものの、すぐにその分野に行こうとはならなかったですね。

ーキャリアチェンジを決められた時、「今、キャリアチェンジをしよう!」と思ったきっかけはあったのでしょうか。

神薗:数年ほど前から、文科省の大学入試改革や新学習指導要領などに進展があって。そのなかで、日本の子どもたちには知識や技能はちゃんと身についている。思考力・表現力もそれなりに育ってきているということがわかりました。
圧倒的に足りないのが、自ら学ぶ力だったり、多様性や協働性を持って取り組んでいく力だったんです。それをなんとかしていこうというのが教育改革の動きなんですけど、時を同じくして学校現場も大きく変わっていったんですね。
そこまできてようやく、自分がイメージしていた世界が見えてきたところがあって。教育改革が進んでいくとともに、前々から抱いてきた「家庭や学校と地域の連携に取り組まねばならぬ」っていう思いが強くなってきたんです。そのタイミングがグッとハマって、よし、キャリアチェンジしようということになりました。

ーベネッセにも幼児教育に関わる事業がありますが、そこで働くことは考えなかったのでしょうか。

神薗:おっしゃるようにベネッセにも幼児教育分野の事業があるんですが、やはりBtoCなんですよね。教材を買ってくださった方にはアプローチできるけど、そうでない方にはアプローチできない。BtoCではなくもっと面で関わりたいという思いと、「議員」という立場で、家庭・学校・地域・行政・民間の持つ力を活かして課題解決を行えるだろうということで、渋谷区議会議員選挙にチャレンジしました。

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選挙活動期間中の様子(写真中央、タスキ姿の神薗さん)

あとは現渋谷区長の長谷部さんの存在も大きかったですね。民間企業の出身でもありながら、green bird(NPO法人)を立ち上げ、議員としての経験もある中で、区長としてクロスセクターで課題を解決するという手法でまちづくりをやっていらっしゃって。長谷部さんをロールモデルにして、子育て・教育という分野で同じような活動をしていきたいと思いました。

ーそれでもベネッセをやめて挑戦されたのがすごいです。

神薗:渋谷区というまちの可能性と、長谷部区長の存在が大きかったですね。
渋谷区でやりたいことも明確なので。いろいろなことを考えなければならないですが、私のやりたいことは未来を作る方に寄っていますね。

「家族ミーティング」の習慣

ー選挙活動などではご家族の協力はありましたか?

神薗:まさしく、家族のサポートがなかったらこのキャリアを実現できなかったと思います。まず夫に相談した時、「ああ良いんじゃない、面白そうじゃん」と賛同してくれたのがとても大きかったですね。
夫は建築に関する会社でデザインの仕事などをしているんです。選挙でのPRやブランディングの分野などで動いてくれ、まさに二人三脚でやっていました。夫もその時ほとんど記憶ないんじゃないかと思うくらい(笑)2つ仕事を掛け持ちするくらいの勢いでやってくれていましたね。

ー最初にキャリアチェンジを相談した時のコミュニケーションがとてもスムーズですね。元々そういうお話はされていたんでしょうか?

神薗:もともと、「家族ミーティング」をする習慣があるんですよ。子どもができる前から、2人で生活している時からずっとです。
そこでは、各々の目標やマイルストーンを決めたり、アチーブメントなどを確認したり、うまくいっていなかったら相談したり。そもそもパートナーで補完し合う関係性があって。
例えば、以前夫が1年間仕事を休んで資格を取ろうとしていた時があったのですが、その間は私がメインで稼いでいて経済的には安定していました。その代わりに私が選挙で忙しいときは手伝ってもらったという感じです。
お互い経済的に自立した関係だから、安心して好きなことにチャレンジできています。

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神薗さんとご家族

ーもともと補完し合う関係性が築けていたからこそのスムーズさだったんですね。

神薗:選挙にチャレンジする際も、私が持ち合わせていない視点からのアドバイスを夫がくれたこともありました。私は、会社をやめてから選挙に挑戦する気でいたんですが、「会社と相談して、ダメならダメで戻れる環境を作ってからやめたほうがいいんじゃないの?」とアドバイスをもらったりして。相談してみたら、ありがたいことに会社からOKをもらうことができて、経済的な不安を減らした状態でチャレンジできたんですよね。

ーお子さんとは選挙というチャレンジについてお話はされていたんでしょうか。

神薗:子どもがちょうど小学校に入学するタイミングで選挙に出たのですが、子どもには、自分が何をしたいのか、そのためになんで選挙に出なければならないのかということを噛み砕いて、理解できるように説明しましたね。
ご近所のパパママ友も理解してくれて、夫婦で夜まで忙しい時は子どもを預かってもらったり。
子ども自身も保育園から小学校という大きな環境変化の時期であるにも関わらず、理解して支えてくれました。

新しいパラレルキャリアとしての区議

ー政治家というキャリアのいい点ははなんでしょうか。

神薗:自分を政治家とはあんまり思っていないんですけど(笑)
まず、ベネッセだけでは得られなかった人との関わりが得られたり、情報が得られたり、それを踏まえて実践することができるのが嬉しいです。いろんな分野の人たちから力をもらえている実感があって。

ー今のお仕事で必要だと思うマインドセットはどういったものでしょうか。

神薗:まず当事者意識を大事にしています。陳情を受けた時も、すぐに行政へ提案じゃなくて、区民の方と一緒に「自分たちで解決できることはないかな?」と考えます。自分たちで小さな一歩を踏み出しましょうと言って一緒にやることが多いんです。すると、皆さんに、自分たちがまちを変える力があるということに気付いていただけたりするんですよね。御用聞きみたいなやり方はしたくなくて。まず自分たちでやってみて、できない部分について行政の力を借りるとか、そういうやり方がいいと思うんですね。

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神薗さんが区議として参加されたイベントの様子(左から二番目)

ー逆に政治家という立場で難しさを感じることはありますか?

神薗:難しいのは、議員が実践の場に入りすぎることがあって。
二元代表制という仕組みの中で、行政から見ると議員はチェッカーという立場です。だから現場に議員が入りすぎるとどうしても、チェックされるのでは?という意識が強くなるのだと思うんですね。でも、そこは指摘したいからではなくて、より良い事業を一緒に作っていきたい、ポジティブな提案をしたいからだということを理解・信頼してもらうしかないなと感じています。

ー区議というキャリアを実際経験されてみていかがですか。

神薗:区議会など基礎自治体の仕事は生活にすごく近いので、子育て世帯の方など当事者意識を持って活動できる方がもっと気軽に選挙に出ていいんじゃないかなと思いますよ。
議会に関する時間は必ず拘束されますが、それ以外の時間は個人事業主のようにそれぞれが活動を作っていくことになります。専業議員の方もいらっしゃいますが、地域をより良くしていく事業を行っている方もいたりしますので、パラレルキャリアの新しいカタチかもしれません。

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議会での神薗さん

関わっている全ての人に「関わってよかった」と思わせる

ージェンダーや社会的立場の違いでキャリア形成の難しさは変わってくると思いますか?

神薗:そういう面は確かにあると思います。例えば、ベネッセはトータルで見ると女性が多い職場なのですが、私がいた部署は営業系ということもあり、以前は男性が多く、課長以上も男性ばかりでした。
そういう環境だと女性は忖度してしまうことも昔はありました。私の2〜3個上の先輩たちから女性営業も増えてきて、環境をどう変えるかというところも意識しながらやっていたんですよね。こびないけれど敵対しないという立ち回りは大事だったのかなと思います。私のやり方かもしれないけれど、あまり性別を感じさせないというか。そういう立ち回りは今も活かせていると思いますね。

ー今までのキャリアで、困ったことや失敗したことはありましたか?

神薗:いや、ないですね!
自分のキャリア選択、方向性については間違ってなかったと思いますし、関わっているすべての人に、関わって良かったと思ってもらえる時間にするために最大限コミットメントするというやり方でやっていたので。

ー最後に、キャリア選択に悩むU25に向けてアドバイスをお願いします。

神薗:これは2つあって、
まずBeing、どうあるべきかが大事ということで、自分自身がどういう存在であるべきかを固めていく。それがちょうど20代の時期なのかなと思うんですが。ここがしっかりしていればどんな環境にいても、自分らしく生きていけると思います。どうありたいかを考えるのがまず大事ですね。
2つ目がCatch the wave、波がきたらとりあえず乗ったら良いのかなと(笑)コロナの影響がここまで大きくなるとはわからなかったし、人間にとって予測不可能な出来事が起きる社会で何が正解かはわからないから、波がきたら乗るの繰り返しをしたら大きく外れることはないと思っています。大きな方向性は大事にしつつ、細かい選択にそこまでとらわれる必要はないのではないかとも思いますね。いったん波に乗ったら次の波が来るので。それが現代らしいやり方というか。
その2つですね。皆がそれをやれば良い世の中になると思うんですけどね。

ーまさに、生まれてから今に至るまでに「世の中とは不確実なものである」と刷り込まれてきたのがU25の世代ですよね。どうあるべきかを大事にしながら、波に乗るという考え方がすごく参考になります。ありがとうございました!

インタビューを終えて

常にブレずにライフワークを追求されている神薗さん。自分が実現したいことや、自分がどうあるべきかを見つめ直すことこそがキャリア形成の近道なのかもしれないと思いました。キャリア選択に悩んでいるU25世代に、1人でも多く読んで欲しいです。是非シェアをよろしくお願いします!


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