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【リーダーの心得7】「中庸」の九經から学ぶ⑦ 乃木大将と渋沢栄一も実践した、真のリーダーシップとは!

さあ、中国の古典「中庸」の「組織を運営する9つの原則(九經)」も7番目の原則をご紹介することになりました。
7番目の九經は

「百工(ひゃくこう)を來(ねぎら)ふなり」

「中庸」

です。
「百工(ひゃくこう)を來(ねぎら)ふなり」は、「多くの職人(百工)たちを労い、励ますこと」を意味します。これは、国家や社会を治めるための重要な原則の一つとして、職人や技術者の努力を認め、彼らを大切にすることが強調されています。

「中庸」のすごいところは、その必要性を具体的に書いている点です。「百工を來ふなり」が大事なのは、

「百工(ひゃくこう)を來(ねぎら)へば、即(すなわ)ち財用(ざいよう)足(た)る」。

「中庸」

つまり、職人たちを労えば、その結果として物品の不足がなくなるということです。この考え方は、職人たちの技術や労働が社会の発展に不可欠であることを示しており、彼らの貢献を評価し、尊重することの大切さを説いています。

では、具体的にどのように百工を來(ねぎら)えばいいのでしょうか。
さらに

「中庸」には、「日(ひ)に省(かえり)み月(つき)に試(こころ)み、既稟(きりん)事(こと)に稱(かな)ふ」

「中庸」

と書かれています。
これは、毎日自分の行動や言動を振り返り、毎月その成果を評価し、既に受けた役割をしっかり果たし、事に応じて称賛されるように努めることが必要であるとしています。

そうすれば、

「百工(ひゃっこう)を勸(すす)むる所以(ゆえん)なり」

「中庸」

つまりリーダーが職人(現代では「部下」と置き換えても可)を気にかけてくれれば、他の職人(部下)たちも皆励むということです。

皆さんの中で、この1カ月、何も会話していない同僚や部下はいませんか?

この「中庸」の教えは、端的に言えば、トップが常に部下を気遣うことの重要性を説いているのです。

渋沢栄一が語る乃木大将に見る「百工を來(ねぎら)ふなり」

渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)の「論語と算盤(ろんごとそろばん)」では、乃木希典(のぎ・まれすけ)大将のエピソードが登場します。乃木大将は、明治天皇の崩御に伴って殉死しましたが、渋沢栄一は、乃木大将の生涯の行為にこそ、本当の尊敬すべきものがあると述べています。

渋沢は「論語と算盤」の中で、

「乃木将軍の場合、まったく天真爛漫(てんしんらんまん)な真心から兵士をねぎらわれたのである。単に軍隊におられた時だけそうだったわけではなく、学習院に院長としておられた時にも、手ですくい取って味わいたくなるような情愛がすべての方面にあらわれている」

(引用)詳解全訳「論語と算盤」著者・渋沢栄一、訳・守屋淳、株式会社筑摩書房、2024年、290頁

と語っています。この渋沢の「手ですくい取って味わいたくなる」という表現が、乃木大将の情愛を最大限に表現していますね。
では、乃木大将の「百工を來(ねぎら)ふなり」の具体例を見ていきましょう!

1. 日露戦争での指揮

乃木大将は日露戦争において、旅順攻囲戦(りょじゅんこういせん)の指揮を執りました。この戦いでは多くの兵士が命を落としましたが、乃木大将は常に前線に立ち、兵士たちの士気を高めるために尽力しました。彼は自らの行動を日々反省し、戦況に応じて戦略を見直すことで、部下たちを励まし続けました。そして、乃木大将は厳寒でも暖を取らず、送られてきた毛皮のコートも着ずに、兵士たちと同じ苦労を味わいました。

2. 部下の教育と成長支援

乃木大将は、学習院院長として後の昭和天皇の教育係も務めました。彼は教育においても自己反省と実践を重視し、学生たちの成長を支援しました。彼の教育方針は、学生一人ひとりの個性を尊重し、彼らが自立できるように導くものでした。

3. 渋沢栄一と乃木大将の共通点

渋沢栄一が「論語と算盤」で称賛した乃木大将の生き方は、まさに、「日(ひ)に省(かえり)み月(つき)に試(こころ)み、既稟(きりん)事(こと)に稱(かな)ふ」ことを実践したのだと思います。つまり、乃木大将は自己反省と実践を通じて、自らの役割を果たし、部下や学生たちを励まし続けました。このようなリーダーシップは、部下や周囲の人々を気遣い、彼らの成長と幸福を真剣に考える姿勢を示しています。

このように、リーダーが自らを律し、部下を気遣うことは、組織全体の士気を高め、より良い成果を生むために重要です。このように、中庸の教えは近代、そして現代に至るリーダーシップにも通じる普遍的な原則を示しているのです。

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