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【為政者の心得1】答えは、「管子」にあり。人民の心に順応するためには。

JFPホールディングス、名誉顧問の數土(すど)文夫氏は、

「論語」と「孫子」を読めば読むほど、「管子」の影響を深く受けていたことがよくわかります。

徳望を磨くリーダーの実践訓、數土文夫著、致知出版社、2023年、3ページ

と言われます。まさに、古典中の古典である「管子」は、約2700年前、斉の宰相として長く活躍した管仲のことが書かれています。
「論語」や「老子」などは、貴族や士族を思想家の対象とする一方、「管子」は、民衆の幸せや庶民の富に焦点を当てて書かれています。
時として、政治家や公務員をはじめ、企業にお勤めの方などは、国民や顧客が何を欲しているのかという本質を見失ってしまうこともあるかと思います。
しかし、民衆が欲していることは、2700年前から変わらないのです。
ここでは、「管子」のなかから、人民に順応するための言葉をご紹介します。

人民は心身の苦労をいとうものであるから、君主は、彼らを気ままに楽しませてやるのがよい。
人民は貧賤な生活をきらうものであるから、君主は彼らの生活を豊かにしてやるのがよい。
人民は危険災害にあうことをいやがるものであるから、君主は彼らの生命の安全をはかってやるのがよい。
人民は子孫の滅亡するのをきらうものであるから、君主は彼らの家族や子孫を養育するようにつとめるのがよい。

管子(上)、遠藤哲夫著、株式会社明治書院、1989年、18ページ

いかがでしょう。
2700年前と比較して、これだけ文明が発達し、経済的にも成長した現代においても、人民の心に順応するための方策は変わっていないと思います。
まず、彼らを楽しませるというのは、都市論に通じるのではないでしょうか。私たちの暮らしに楽しさや便利さがあって、人民が快適に暮らせるという空間が思い浮かびます。そして、国や自治体は、法律や条例で人民を抑制するのではなく、人民が自然に正しい方向に導かれていくという方策が必要でしょう。
次に貧賤を嫌うということは、そこに産業などがあり、働く場に困らないと言うことが思い浮かびます。生活保護受給者の受給率や失業率が低いといった指標が参考になると思います。
次に危機災害にあうことをいやがるとは、備蓄などの日頃からの備えや、自動車の安全運転技術の向上など、危機災害時との区別がない、いわゆるフェーズフリーの考え方の浸透が必要だと思います。
最後に子孫の滅亡を嫌うとは、子育て支援や教育充実等が当てはまると思います。千葉県流山市や兵庫県明石市のような子育て支援策の充実などは、各自治体も参考になりますね。
私は、この管子の言葉に触れ、常にこの4点を意識しながら、仕事をしていきたいと思いました。

管子

『管子』は古代中国の思想家、管仲に帰されるが、実際には戦国時代の多くの学者によって書かれたとされる文献です。法家、道家、雑家の思想が混在しており、経済や政治、哲学に関する幅広い内容が含まれています。特に「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」という言葉は有名です。現存する76篇は、経言、外言、内言、短語、区言、雑篇、管子解、管子軽重の八類に分類され、社会経済史や農業技術史にも貴重な史料とされています。

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