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読者と一緒に考える:「共感をベースとした相互扶助経済へ 前編」

(SELF編集部:かつ しんいちろう)
イベントを行なった場合の経済効果に関する算出は、産業連関表などを用いイベント開催に先だって行なわれる事が多い。例えばオリンピックの経済効果の算出などである。今回、それとは逆の「開催する予定であったものが、開催されなかった時のマイナスの経済効果」を入り口に新しいエコシステムについて考えてみる

2019年から続くコロナ禍で一体いくつのイベントが中止になったのだろうか?いくつのリアルイベントがオンラインイベントになっただろうか?

プロジェクトマネジメントを専門とする私にとっては大きな関心事であり、研究してみたいテーマではあるが、経済効果算出は専門外であることと、スコープ(範囲)が膨大過ぎて手が付けられぬのが現在の状態。しかし、社会的に関心が高いことではあると思う。
コスト負担におけるお互い様の精神は、共感をベースにした相互扶助経済への芽生えではないだろうか?と考えるに至り、本論を書いてみることにした。
問いのかたちで本noteに書いてみて、SELF Transformation Academyの皆さんと意見を交換したい。

整理することでスッキリすることもある。整理することで余計に心配になることもある。不安の共有と不満の共有から何かしらの新しい考え方が生まれることを期待している。

イベントの中止に関するパターン分析

イベントと言っても様々なものがあるが、大きく分けて2つあると考えられる。国や自治体の中止要請を受けてのものか、それ以外のものか。しかし、イベントを中止したところで何らかの補助金や助成金が出たということも無いようなので、区別の必要は無いかもしれない。
イベント事業者は、一般的な企業と同じく月次支援金などの支援制度の適用はできたが飲食店などのように特別な措置はなかった。出演するアーティストに対しては、雑所得の扱いで当初はやりとりがあったが一定の条件の下、収入としてのカウントができることとなり月次支援金の対象になった。

 ①国や自治体の要請を受けての中止
 ②要請はないが自主的な中止

また、イベントについてもその種類は多様で、
 ①音楽イベント
 ②地域のイベント
 ③販売促進イベント
 ④スポーツイベント(オリンピック、野球、サッカー、大会など)
 ⑤シンポジウムなどの文化活動
 ⑥展覧会、展示会

などがある。

計画のコスト

イベントの開催に関連するコストには、どのようなものがあるのだろうか?
中止になった場合に一般的に支払いが事前に発生するものとしないものに分けて考える。全ての費用はイベント実現時の売上の中から回収する予定で組まれるので、キャンセルになった場合は全て持ち出しになる。

[支払いが発生しないもの]
①計画に関わるコスト
計画を立てるためには、打合せ、会場の下見、会場の手配、各所連絡など。実際は人が関わって時間を費やしているので、主に人件費、通信費などが発生している。
プロジェクトマネジメントでは「段取り八分(はちぶ)」と言われるように、計画にエネルギーの8割を注ぎ、実行は2割のエネルギーで淡々とこなすくらい綿密な計画を重視する。計画にかかる費用は請求項目としては目に見えないが、確かに発生しているコストである。

②会場利用のキャンセル費
通常は開催までの日数に応じてキャンセル料がかかるが、コロナ禍という災害という理由でキャンセル料は請求されなかったことが多いと聞いている。

③中止の告知やチケットの払い戻しにかかる費用
中止の告知をしたり、払い戻し対応にかかる人件費は本来は発生しなかった追加コストであるが、これも請求する先がない。

[支払いが発生するもの]
④宣伝広告費
イベントの際はポスターやチラシを制作するのが一般的である。制作費、印刷費はイベントが中止になっても請求される。
⑤チケット発券費
紙のチケットの場合の制作費、印刷費。新聞やSNSなどでの告知に関する費用。
⑥リハーサル費用
本番に向けてのリハーサルにかかる会場費。(人件費は支払われない。)

このようにイベント主催者は、売上が無かっただけではなく、かかった費用の回収もできないので、毎回赤字を積み重ねることになる。

コロナ禍のように、収まったかに見えて、また次の波が来て開催ができなくなるというパターンが最もつらいパターンである。

「共感をベースとした相互扶助経済」は次のコミュニティの姿になるのか?

災害時に特に強く発揮される相互扶助の気持ちが「こういうときだからキャンセル料は請求できないよね。」という了解に今のところつながっている。まさに暗黙の了解で、誰に指導されることもなく。

ここに「あの人も困っているのだね」という共感と、「困ったときはお互い様」という相互扶助の精神を私は感じる。コロナ禍が始まる前から言われていたマネー資本主義経済の終焉からの地域に根差したコミュニティベースの持続可能な循環型経済の基本ではないのだろうか。

「お互い様」も、あまりに長く続くと経営的にも精神的にも持たない。定常的かつレジリエント(災害に強い)なエコシステムとして成り立たせるためには、人間の英知はどう発揮されるのであろうか?

次回、後編では、

次回は、「オフラインとオンラインのベネフィット(便益)分析」について書きながら、さらに論を進めてみる。
今回の皆さんのご意見をお待ちしております。是非コメント欄にお寄せください。

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