経済発展と経済格差と幸福感
(SELF編集部 かつ しんいちろう)
3月の終わり、私はルワンダにいた。ルワンダ共和国は1994年のジェノサイド(大虐殺)や2008年の大地震で多くの命が奪われたアフリカの中央部に位置する国だ。
この国は経済発展と社会整備の進捗が速く「アフリカの奇跡」と呼ばれている。近年は7%台の経済成長率である。
今回は、首都キガリの高級住宅地、先端のビジネスエリア、スラム街、そして農村部を訪ねた。
高級住宅地は、外国人も多くとても安全だ。そもそもキガリ市がアフリカの中でも最も治安が良いと言われる都市なので、その中の高級住宅地はかなり安全なエリアになる。高級なレストランやお土産物屋、そして美味しいスムージー屋さんもある。
先端のビジネスエリアは、政府によって開発区に指定され、欧米系の進出もあって近代的な建物が立ち並び、ICT産業や起業家育成の施設があったりする。カガメ大統領が推し進めるVISOIN2050でも人材育成と産業振興と集積は大きな柱だ。
他方、都市部の開発地域の周辺にあるスラム街は、水道もガスも無く電気は課金制。水はポリタンクで買いに行く。私が訪問した1軒は30代の女性で4歳と2歳の子供がいるシングルマザー。旦那さんは子供が出来たら理由も告げずいなくなったのだそうだ。ルワンダではこうした旦那の失踪やDVから逃げてきたケースなどシングルマザーが多いということだった。
子どもたちはラッキーなことに近くのデイケアで平日は昼食を食べることができるが、彼女は仕事についていないので1日1食たべれるか2日に1食ということもあると言っていた。
どんな仕事がしたいか?と聞くと「どんな仕事でもいい」と答えてくれた。職業選択の余裕や希望はない。
スラム街のもう1軒は、50代の一人暮らし。29年前のジェノサイドの当事者だ。その他のこともありメンタルに障害を持ち、娘には「もう死にたい」と訴えているという。
「あなたたち、靴が汚れているね」と彼女は言った。ルワンダでは靴を大切にしているので、一日の終わりに洗うシーンを見かけた。少ないからこそモノを大切にしている。
最後に農村部に行った。首都キガリからバスとバイクタクシーを乗り継いで約3時間。その中の1軒に宿泊させていただいた。
あまり見かけない日本人のオジサンに駆け寄ってきて、かけっこをしようと言う。一緒に遊んでは英語で「What is your name?」「How old are you?
」と聞いてくる。あまりに聞くので現地の方に聞いてみると、この2フレーズしか英語が分からないからだという。なるほど。
あと、げんこつとげんこつを合わせて挨拶するとき「Umusaza, Umusaza」と言っていた。「オジサン」という意味らしい。そのままだな。
農泊では、豆と野菜の煮物やバナナの煮物などいただいた。煮たり焼いたりする青いバナナはほぼポテトの感じで美味しかった。そうした食物の多くは自宅横にある農園で栽培していた。
トイレは穴の上に棒が渡してあったり、煮炊きはかまどだが、暮らしは楽しそうに見えた。この日は子供を置いて都市部に出稼ぎに行っている娘の1カ月ぶりの里帰りだったので、お母さんは嬉しそうだった。
このように、経済発展をしているルワンダでは国内の経済格差が拡大しているし、これからもさらに拡大していくように思う。それはほかの資本主義の国々でも歴史的にたどってきた道だ。
北欧の国々のように社会民主主義的に社会保障制度を整備している場合を除いては、経済格差は拡大する。マネー資本主義においては、持てる者はますます増大化し、持たざる者はその領域から容易には抜け出せない仕組みになっていく。
どんな時に幸福感を感じるかは、国によって、そしてその国の中でも暮らすエリアによって異なる。トイレが水洗でないことを農村部の人は不幸だとは思っていなかった。
異なる価値観のところへ引きずり出して、同じような状態にすることが支援ではない。それは自己満足だ。長期的に見て相手が必要になると合意したゴール(VISION2050の中でも『わたしたちのありたい姿としてのルワンダ』に向けて戦略を立てると宣言されている。)に向けて手助けが必要とされるなら、手を貸す。その代わり美味しいバナナチップをご馳走になる。そんなバーターができるといいと感じた。
このような格差社会はルワンダだけではない。日本でも内容と程度の違いこそあれ厳然として存在する。ゴールをどこに置き、そのためにどんな施策を打つのがいいのか?ますますわからなくなってきた。
タイトルに「幸福度」ではなく「幸福感」と書いたのには訳がある。「度」を付けて測ろうとすると一定のメジャーがいる。しかし幸福に関して人々のメジャーは異なる。むしろ比較することから不幸は始まる。
誰かとの比較ではなく、自らの好奇心からエビデンスを重ね探究していくこと、喜びを誰かと分かち合うこと。そうしたことが幸福感につながるのだろうなと私は感じた。
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