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ハカセと学ぶ、気候変動や環境のこと #001

本シリーズは、SELFの活動の根幹となる地球温暖化防止に関する基礎的な知識を提供するため、すべての読者に無料で公開いたします。

こんにちは。大岩根ひさしです。ハカセとか、ひさしとかと呼ばれてます。もともとは地質学や海洋地質学の研究をしていました。大学院卒業後は国立極地研究所に就職し、南極観測隊にも参加し、気候変動の研究に関わっていました。

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しかし2013年に研究者を辞め、鹿児島に来ました。鹿児島に来てからは、三島村役場でジオパークの専門職員として働いていましたが、硫黄島に通ううちに硫黄島が好きになりすぎて役場を辞め、今は硫黄島に住み、自然ガイドを仕事にしています。

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が、最近はこのコロナ禍のため、島に来てもらって地球と遊ぶということが全然やれておらず(涙!)、企業や自治体や個人の方々と一緒に、気候変動やSDGsの対策としてのアクションを作ることを仕事にしています。これはこれで自分らしく仕事ができているので楽しいんですけどね。

少し前から「環境活動家」と名乗るようにもなりましたし、SELFのメンバーとしても、SDGsや環境系のことをお伝えする役割を持って動いています。この8月にも豪雨があったり、新たな報告書が出たりということもあり、いよいよ危機感を強めています。一方で、いろいろ調べてゆくうちに自分や自分たちにもできることが結構ある!という希望も持ち始めているので、危機と希望、両方がお伝えできればと思いこの連載も書いてみようと思います。

そんなわけで、ここから気候変動のお話し。

最近、異常気象が当たり前になってきましたね。お盆前後は本当にひどい雨でしたし、数日で1ヶ月分の雨とか、数ヶ月分の雨とか、、やたら暑い日が続くし…異常が続いていますね。少し振り返ると、今年の南九州の梅雨入りは異常に早かった(気象庁)し、1月には北陸での豪雪があった。昨年夏には史上最大勢力の台風が襲来し被害がでたり(気象庁)、僕が住む三島村やお隣の十島村は、初めての全島避難になりました。

「50年に一度」とか「経験したことのない」とか「観測史上最大」とかって言葉、今年は何回聞いたでしょうか??以前はこんなことはこれほど頻繁にはなかったですよね。鹿児島も暑くなってきたという実感は、みなさんがお持ちではと思います。

海外でも、カナダでは50度近い記録的な熱波に見舞われて100以上もの山火事が発生。トルコでも山火事、中国やドイツ(national geographic)でも洪水。2020年だけをみても、世界中で異常気象が発生していました(気象庁)。

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これほどまでに災害が増え、皆さんが実感しているであろう「地球温暖化」。「実感はしているしなんとかしなくてはという意識はありつつも、実際には自分で何をしたらいいかわからない」という状況の方も多いはず。「けっこう前から言われてるけど、なんでいまだに止まらないの?」「本当に温暖化してるの?人間のせいなの?自然な変動じゃないの??」という声も聞きます。

そんな疑問に答えるべく、ここからの連載では、「現状&将来が本当にヤバい」ということを認識してもらった後で、実際にそこにつながっている私たちの個人や企業の活動についてお伝えをし、じゃあどうしたらいい?ということについて、書いてゆきます。というわけで、今のところの予定はこんな感じ。

今後の連載計画

第1回 一体誰が犯人なのか?
第2回 いま、どのくらいヤバいのか、これからどうなるのか
第3回 お肉は環境に悪い?
第4回 スナック菓子が温暖化を招く?
第5回 環境にいいはずの EV や、スマホが引き起こしている環境・社会問題
第6回 アパレル業界と環境問題のつながり
第7回 わかってきたプラスチック汚染

第1回の今回は「一体誰が犯人なのか?」について。

どうやら、僕たちのせいだ

ここ数年の異常気象が大変なことになっている、というのは上の通り。「しかし、本当に人間のせいなの?自然な変化じゃないの?」ってことをなんとなく疑ってる方も、ひょっとしたらいるのではないでしょうか。

結論からいうと、どうやら、僕たちのせいらしいんです。いや、「らしいんです」ではなくて、僕たちのせいなんです。断言。

今月(2021年8月)上旬に、IPCCという気候変動関連では世界で最も信頼されている研究者集団から最新の報告書が公開されました(環境省のページへリンク)が。そこでは「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と名言されています。詳しい解説は国立環境研究所の江守さんの解説動画(下記)をご覧ください。


気候学者たちがどうしてそう断言できたのか、気候学者たちが調べ考えてきたことの概要をお伝えすると、

・研究者たちが世界各地に出かけて地層や氷やサンゴや年輪や化石などなど、いろんなものから、世界各地の昔の気候を復元してきた(僕もその一人でした)。
・暑いとか寒いとか、どんな事件がどのくらいの範囲で起こったのか。他の地域の出来事との関係はどうなのか。何がいちばん重要なのか。それらの証拠をもとに、なにが原因でその時その場所でそんな気候の変化が起こったのか、という仕組みを解き明かしてきた
・こんな繋がりがありそうだぞ、という仕組みを計算式にして、スパコンに計算させて、その時その場所でのそんな気候の変化が再現できるかどうか、何度も繰り返しやってみた。これは大昔だけでなく、記録が取られている最近のことに関しても再現できるかどうか、計算して確認しています。
・だいたいいい感じにできてきた…!!
・人間が出した二酸化炭素(や温室効果ガス)アリ/ナシで、最近の気候の変化が再現できるか計算してみた
ナシだと最近の異常気象がどうしても説明できない
「人間が原因です」と言って、もう間違いない

ということなんです。

下の画像は、上で紹介している動画の一場面。IPCCの研究者たちが出してきたこれまでの報告書で、新しいものほど「僕たちのせい」である可能性がだんだん高まってきて、今回ついに「疑う余地がない」と断言するところまできた、という解説です。

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僕たちのせいとか言われても、自分はそこまで二酸化炭素でることやってないと思うし…とか、自分一人が何かやったところで…と思う方もいるでしょう。しかし、残念ながら日本は世界第5位(全国地球温暖化防止活動推進センター)の温室効果ガス排出大国。世界征服を企む悪の組織が絶海の孤島で温室効果ガスを出しまくってる…、とかそういうわけではなく、これを書いてる僕や読んでるあなたを含め、日本を含め世界各国のみんなで、温暖化に貢献してきた、ということなのです。もう少し言うなら、僕たち1人で、アフリカ諸国の10人分くらい温暖化に貢献しているのです。僕たち1人のちょっとの努力が効く、ということ。

環境のことと聞くと「なにかを我慢しなきゃいけない」ということとセットで結びついてしまうので、それがイヤだから聞かなかった事にしたい、という人もいるでしょう。でも、極端に言うと、近いうちに少しずつ自分たちの意思で自分の行動を変えるのか、それとも洪水や台風の被害、高潮による移住、食料不足や高騰などによって強制的に行動を変えさせられるのか、の二択になってくるということだと、僕は思います。「なんとなくこのまま」はもう望めない。そのくらい現実は差し迫っています。涙。

どうせ変えるなら、選択肢がなくなって変化を強いられるより、まだ余裕があるうちにより明るい未来を、自分たちの力で選び取りたい。そんな人類の方がかっこいいし素敵だからそうありたい。そんなふうに僕は思います。

「じゃあ実際に何をしたらいいの?」
ということについては、次回以降の連載でデータをもとにお伝えしてゆこうと思います。少しでも多くの人が少しでも早く取り組むことで、自分たちの将来が大きく変わります。少しでもポジティブな変化として捉え実践できるよう、これから僕もいろいろ調べて、解説してゆこうと思います。質問やコメントなどもいただけたら、お答えするようなこともできたらいいな、と思っています。全然楽しみじゃないかもしれないけど、どうぞお楽しみに!!

#002 今の気候変動はどれくらいヤバいのか?はこちら

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