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マレーの作り話

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藤子・F・不二雄先生のいうところのSF(少し不思議な話)
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夕方のロバ #1

「夢から覚める時、失われているのは現実の方だ。 セミが夏の終わりに鳴くのをやめる時、 失わ…

短編|僕は消えたかった

 <読了:約13分> ーーー  大学最後の秋。夕暮れ時は決まって行き場のない、寂しい気持ちにな…

ショートショート|割りたい

小さい頃、手が滑ってコップを割ってしまったあの日 私は思った。 「なんて気持ちがいいのだ…

ショートミステリー|珍しい虫

珍しい虫を見つけた。 その日も誰でも代わりになれるような、つまらない仕事を終えて、高円寺…

夕方のロバ #15 終話

ロバが目を覚ました時 辺りはすっかり暗くなっていて 雲の隙間から月が見降ろしていた。 慌て…

夕方のロバ #14

誰もいない湖のほとりで ------ 月が水面を泳いでいる 昨晩もその前も もう随分の間 同じ形で…

夕方のロバ #13

顔のないカエル③ ーーーーーー 操縦席を目指して泳いでいたのに、カエルは今自分がどこを泳いでいるのかわからなくなっていた。 泳いでも泳いでも、どこにもたどり着かない。 「夢の中を泳いでいるみたいだ」 カエルは泳ぎながら、さっき見た海底の夢を思い出していた。 肌に感じる水の感覚は、夢の中とどことなく似ているような気がした。 ふと不安になって水面に顔を出し、カエルは息をのんだ。 同時に頬に生暖かい風を感じた。 数羽のカモメが水面ぎりぎりを飛んでいるが、カエルには気づいていない

夕方のロバ #12

カエルはロバの背中から落ちて目を覚ました。 運よく多年草の葉の上に落ちることができたので…

夕方のロバ #11

顔のないカエル② -------- 記憶の中で、カエルはロバと見つめ合っていた。 カエルは見つめら…

夕方のロバ #2

その日は雨が降った。 水溜りや土のおしゃべりは止むことはなかったけれど、 ロバは誰かの話…

夕方のロバ #3

泡の記憶 --- 私はひとつの気泡に過ぎない。 薄暗い海の中を、ゆらゆらと昇っていく気泡。 …

夕方のロバ #4

ロバは雨宿りの木の下で、 カエルがいなくなった紫陽花の葉のあたりを 長いこと見つめていた。…

夕方のロバ #5

アオガエルは目を開けた後も、しばらく山の方角を見つめたまま佇んでいた。 肩を落としている…

夕方のロバ #6

記憶のけむり① ----- 忘れることで救われたことが何度もあった しかし記憶は煙のように ただ広がって見えにくくなるだけで ちゃんとその分子は残っている 分子は無意識の領域で時々息を吹き返し またモヤモヤとくすぶるのだ