逆算してキャリアを築こうとするをやめた話

概要

大学卒業後、エンジニアとしてキャリアをスタートしたが能力が白黒はっきり見える職業柄、先輩方や専門学部を卒業した同世代のエンジニアと比べては切迫感を常に感じていた。

就職して2年がたった頃、所属していた会社で吸収できることがなくなったとまでは行かないまでも、さらなるスキルアップを目的に転職をしようと思った。

転職先で出会った人は多趣味な人が多く、仕事意外にも自分が楽しめるものをたくさん持っているように見えた。

あるとき役員がこれまでのキャリアを喋ってくれる会があり、その人がいかに目の前のことを全力でやって積み上げでここまできたかということがとても印象にのこった。

1on1でもキャリアはマラソン、逆算の頑張り方と積み上げの頑張り方は使い分けられるようになるともっとよくなるよとアドバイスをもらったのを思い出してとても納得した。

それからプライベートの時間を肩の力を抜いて過ごせるようになった。

自分が好きなこともなんとなくわかってきて、休日を楽しむ自分を許せるようになった。

大学に入るまで

小学校、中学校くらいまでは、特別勉強していたわけではなかったが、成績は良い方だった。

が、高校に入るとそうもいかず、教科によっては赤点ぎりみたいな感じになっていた。

受験を控えた高校2年の冬の時点で偏差値は40、国公立には行きたいくらいに思っていたが到底口に出せるレベルの話ではなかった。

その後1年間の勉強計画、1日あたりのノルマを決めて、偏差値60強の国立大学を目指して勉強した。

結果は第一志望には届かなかったが、第二志望に合格できた。

当然大学に合格したこと自体も嬉しかったが、計画をたて、1年間それをやり切ってかつ結果が出たことが一番嬉しかったし、自分の中での成功体験になった。

就職してから2年間

実力主義でできるできないがはっきりしている、自分の手でものを作れるというところに魅力を感じて、文系ほぼ未経験からソフトウェアエンジニアとして就職した。

周りは理系出身者が多かったし、先輩方の層も厚いので、自分がいかに学ぶべきことが多いかということを日々突きつけられた(自分が感じてただけだが)。

そうしたギャップを少しでも埋めようと、平日は仕事が終わってから2時間勉強、朝起きて仕事前に1時間勉強。休日も予定がない日は1日8時間超パソコンにかじりつく生活をしていた。

それでもやってもやってもギャップが埋まっている感覚がなく、知らなかったことを知ることよりも、無知であることを知ること方が多かったように思える。(これが結構きつい)

ものを自分の手で作れるという当初のモチベーションから何者かにならなければ、こういう人材になりたいみたいな切迫感を感じるようになっていたように思う。

大学受験で、目的から逆算して成功体験が印象強く、同じやり方で攻略しようとしていた。

転職

就職してから2年がたった頃、段々と成長角度が鈍ってきているのがわかったし、会社の利益が上がる方向と、自分が楽しさを感じる方向がズレてきていることを感じ、転職した。

転職先はスタートアップという部類になる会社で、前職の大企業気質のある会社とは全然違う雰囲気の会社だった。実際に入ってみると、当初抱いていた平日も休日もバリバリ働くみたいな雰囲気ではなく、仕事は当然きちんとやりつつも、休日や業務後は別の好きなことをやっている人が多い雰囲気だった。

あるとき役員の半生を聞ける機会があり、これまでどんな仕事をしてきたか、どんな出来事があってどう思ったか、割と詳細に説明してもらった。話の中で印象的だったのは、「目の前の仕事を一生懸命やってたらこんなキャリアになってた」ということ。これまで逆算の頑張り方しか知らなかった自分としてはショッキングだった。当然逆算ではない頑張り方をしている人もいることは知っていたが、そういう頑張り方をして結果も出して評価されている人と会うのが初めてだった。というか仕事できる人は皆逆算してキャリア設計してるっしょくらいに思っていた。

また、1on1でその役員に「キャリアはマラソン、逆算の頑張り方と積み上げの頑張り方は使い分けられるようになるともっと楽になるよ」と言われ、1つの武器だけで乗り切っていけるほど人生甘くないんだろうなと感じた。また、成功体験を重ねて自己肯定感高くいられているのは運がよかったねとも言われた。(他意はなさそう)

そういう実績がある人がいると知るだけで、なら自分にもできるだろうと思ってしまう節があるので、それからちょっと力を抜いて自分が好きなことに目を向けてみようかなという気になった。

今の気持ち

2年間(大学から含めると3, 4年か)何者かに追いつくためにとても長いマラソンを走っていた気分だったので、だいぶ肩のにがおりた気がしている。

3年目に入ったところで、エンジニアリングという分野の全体像がどんなで、どの辺に興味があるのか、どういう勉強の仕方をしたらその部分の解像度が上がるのかというところは掴めてきた気がする。

最近意識するようになったのが、「無知は恐れの原因である」ということ。エンジニアリングという分野の全体像が見えず、境界線が見えないものに対して挑むのは漠然とした怖さがある。段々と境界線が見えてきて、その形や構造が見え始めたので、全力で走りすぎないことへの怖さがなくなってきたように思える。そう考えると、これまでの2年間は決して自分を消耗した2年間ではなく、今力を抜くために全体像を捉えるための必要な2年間だったのだとも思える。

やはり最近思うのは、エンジニアリングに限らず大きな分野全体の全てを知ろうとするのは無理があるということ。全体像を知っておくのは大切なことだが、注力するのは自分が好きな分野であるのが良いと思う。何かを得るために努力している人は、そのものを楽しんでいる人に絶対に勝てない。まずは自分が好きなこと、やっていて時間が忘れられるものを見つけることが大切だなと思う。それが後から振り返った時に最短なのかなと、急がば回れだなと思う。

無知の無知の状態と無知の知の状態は雲泥の差で、エンジニアリングの世界で1人前と言われているようなエンジニアは全体感は掴んだ上で、部分的に無知の知の状態なのではないかと思う。好きな(or得意な)領域に関しては「知っている」、そうでない領域に関しては、知識や経験が足りていないことを知っていれば大抵のことは棲み分け(適材適所)で解決できるのだと思う。というか皆そうやって割り切っているのだと思う。

大事なのは、武器を使い分けること。

明確なゴールがあり、それが1年くらいで達成できるゴールなのであれば、ゴールから逆算して努力するのが良いと思う。逆にゴールが曖昧で期間が1年以上かかりそうなものについては、そもそも逆算できないのでゴールへのアンテナは立てつつ、一つ一つ目の前のことを一生懸命積み上げていったら良いと思うことにした。

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