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ブドウの染みは何故落ちにくい?

鍵は「ポリフェノール」

ブドウやイチゴの果汁が服に付くとしつこい染みになります。ミカンなどの場合は比較的楽に洗い落とせるのに、何故でしょうか。

鍵は「ポリフェノール」にあります。

ブドウやイチゴ、ブルーベリーの色にはアントシアニンというポリフェノールの一種が関係しています。このポリフェノールの分子には「手」があり、布と出会うとその手が繊維を掴んでしまいます。その為に簡単に洗い落とせないのです。

一方柑橘類の黄色成分カロチノイドなどはそのような手はありません。よって色が布と強く結び付かず、染みにもなりにくいのです。

酸素系漂白剤が染みを落とす仕組み

このような形で付いた頑固な染み汚れを効率的に落とす事が出来るのが、漂白剤です。

例えば過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)の場合。

過炭酸ナトリウムが加水分解すると活性酸素が発生し、これがポリフェノールの分子構造を破壊します。当然、布を掴んでいたポリフェノールの手も壊されて色素は布から離れ染みも消えるというわけです。

布の種類によっても違いが

例えば綿には「手」があるのでポリフェノールと結び付く力が強く、きつい染みになりやすい傾向にあります。

一方絹の手は綿より細いので握り合う力もやや弱めです。

そして化学繊維には手がありません。いくらポリフェノールが手を差し出しても握り返す事ができない状態。だから化学繊維は染みが出来にくいのですね。

つまりブドウやイチゴを食べるときは化繊の服が安全、ということです。

クリスティの推理小説でも……

アガサ・クリスティ著『ABC殺人事件』では、名探偵ポアロの友人ヘイスティングズがイチゴの汁で背広を汚してポアロに呆れられます。

事件捜査もさることながら、ポリフェノールの頑固な染みには名探偵の相棒もさぞかし手を焼いたことでしょう。

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