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掌編小説『Rock'n'Roll Star』

掌編小説『Rock'n'Roll Star』

 二十四時半過ぎに店に着いて見下ろせば階段の下の方にはいつものメンツがたむろしていて、すぐ後に起こることが頭を過りちょっとくすぐったいような心持ちで階段を下りていく。下まで行くと案の定、おおロックスターのお出ましだとか、今日も一発ぶちかましてくれよとか声をかけられて、苦笑いだけを返事にガラスドアを開けた。
「ああ来た来た」
 右から声がしてそちらに顔を向ければ、受付には俺と同じように鋲が入ったライ

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【掌編小説】転向

 こちらの掌編はBFC4の2回戦用に書いたものです。下に横書きでも載せます。

転向

 こんなの書いてもお前が読まないことはわかってる。だけど、どうしても書かずにはいられなかった。ごめん。無視するつもりはなかったんだ。ただ驚いちゃって、咄嗟に顔を背けちまった。お前、こっちを見てたよな。横断歩道を渡りながら。横目でもハッキリとわかったよ。俺に近づいて来ようとして、困惑した顔で遠ざかっていくのが。本

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【掌編】数学学校

【掌編】数学学校

 ブンゲイファイトクラブの2回戦作の候補として、途中まで書いていたものを今回のために書きあげました。上に縦書き、下に横書きを載せます。

以下、横書き

 ねえ覚えてる? 初めて会った時のこと。僕が下級数学学校に着いてすぐ、君の部屋に挨拶にいくと、君はまるで幽霊でも見るみたいに僕の顔を見て驚いた。幼馴染に似てるって。それでだよね? 秘密の場所を教えるって、寮の裏の倉庫に連れて行ってくれたのは。
 

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