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大阪の元銭湯で醸造する「上方ビール」は遊び心あふれる一期一会の味わい!

こんにちは。日本酒ライターのかたわら、「播州一献」醸造元「山陽盃酒造」という兵庫県宍粟市の酒蔵で働いている関です。そこでシードルロンロンの開発者・責任者をしています。

とある夏の日の東京。
プライベートで大好きなビールを飲んでたら、たまたま「上方ビール」社長の志方昴司さんと出逢いました。その際「銭湯でつくっているビールです。うちでは牛乳瓶でビールが飲めます」と聞き、興味を持ちました。なによりその時飲んだビールが美味しかったのです。

わたしが兵庫でシードルロンロンを造っていて10月30日、31日阪神梅田本店でおこなわれる「シードルトラベル」というイベントに出展することを伝えると、来てくださると。そして約束通り来てくださいました!(1日目は目の前で売り切れるという悲劇も…)

シードルロンロン買ってくださった!志方さんありがとうっ!!

というわけで、イベント明けにロンロンのデザイナー友草さんと一緒に「上方ビール」さんにお邪魔させていただきました。

「上方ビール」のある場所について

外観。向かい側は廃校になった小学校で、周りは民家。うっかり通り過ぎてしまいます。

上方ビールがあるのは、大阪府大阪市東淀川区。いわゆる新大阪エリアです。阪急淡路駅から徒歩10分ほどの場所にあります。新大阪駅からもタクシーで15分くらいでしょうか。
住宅地の真ん中にあり、正面は廃校になった小学校に面しています。こちら、2017年末まで「御幸温泉」という銭湯でした。
銭湯を廃業した後大家さんが上階改築したため、現在の外観は普通の家のように見えますが、裏手を覗くと銭湯らしいシルバーの設備も見えます。銭湯だと思って、いまだに風呂桶持ってきちゃう地元の方もいるとか。

建物の内部、元銭湯はどのように使われている?

元男湯が醸造所。元女湯がタップルームになっています。
入口を入ると土間部分があり、さらに入ると左手が醸造所。右手がタップルーム。入口が分かれています。
タップルームは土日のみ営業中。脱衣所と奥にある湯舟なども椅子として使って、おつまみ持ち込みでのんびりビールを楽しむことができます。

脱衣所に置かれたテーブル。歴史ある銭湯はノスタルジックで、床に座ると懐かしい親戚の家に来たようにリラックスしてしまう。

醸造所部分には、ぎっしりとサーマルタンクが並びます。志方さん曰く「銭湯は大型の設備やお湯の圧に耐えられるよう地盤の良い場所に建てられるため、銭湯跡地はビール醸造所に向いている。オススメ」とのこと。

元男湯につくられた醸造所

水風呂だった場所に樽洗浄の機械、サウナ室に麦芽の粉砕機があります。天井が高いので、大きな機械も導入しやすいそうです。

樽洗浄の機械。この右手にサウナ室があり、粉砕機が。部屋で囲われているため粉が舞い散らず衛生的にもとても便利。

代表志方さんの歩みと「上方ビール」が設立されるまで

株式会社上方ビールの代表 志方昴司(しかたこうじ)さんは、1986年8月26日の現在35歳。神戸生まれ。阪神淡路大震災で被災し、逃れるために大阪へ。そのまま成人するまでを大阪で過ごしました。その後、神戸・大阪で飲食店経営(立ち飲み屋)している時に、「食事にマッチするビールの選択肢が少ない」と気づき、自ら醸造することを決意します。すぐに故郷神戸でブリュワリー候補地を探しますが、あまり良い場所がなく苦戦。そんな折、大阪で理想の面白そうな場所(現在の銭湯跡地)を見つけ即決。2019年に会社を設立して、現在2年が経ちました。

現在の仲間は、地元神戸の同級生ばかりとか。この日は平日で、一般開放されていないタイミングで特別におうかがいしたので、いつも飲み処になっている「脱衣所」は、作業場になっていました。そこで梱包作業をする風景は、味気ない会社というより学祭。和気あいあいとテキパキ楽しそうに進めていました。チームワークの良さは、同級生&同世代の仲間だからこそでしょう。

上方ビールについて

定番ビールはなし。1回の仕込み500ℓ、売り切れたら次を造ります。ホップと麦芽の組み合わせを都度変えるので、無限の可能性。二度と同じものは造らず、一期一会の味わいです。月間トータル5000ℓを醸造で、「うちはそんなに大きい醸造所ではないです」と志方さんは言います。
手がける種類は、大まかに①ペールエール ②IPA ③ヴァイツェン ④スタウト ⑤フルーツ系 ⑥スペシャリティの6種類。農家コラボや季節の農作物(できるだけ地元関西のもの)使用なども多くあり、OEMも手がけていて、年間120種類以上を醸造しています。
「サウナIPA」「かけ湯レモン」「熱湯ショコラ」「湯上がりセゾン」…など銭湯に合わせた面白いネーミング、ポップなラベルが特長的です。

「いつかこの蛇口からビールを出したい」と志方さん。オトナが夢に見るやつです!最高!
洗浄作業中の醸造長。
姫路で同じような醸造所兼タップルームをスタートアップ予定の飯田さん。2021年12月オープンに向けて、志方さんも協力しているということでこの日は、勉強のためここで働いていた。

すごくフォトジェニックだったし、アイデアに溢れていて「楽しいことをやろう!届けよう!」というみんなの意識が雰囲気、商品など全てからビシビシ伝わってきました。地域の産品を使いコラボしたり、栄養価の高い麦芽かすを大阪の農家さんに肥料として引き取ってもらったり、地元を想い循環する形を目指しています。
志方さんは、「僕たちのような小さなブリュワリーが国内に多くあって、中間にヤッホーブルーイングさんなど中間層があって、その上にNB※がある。NBだけで国内流通の99%とかかな。もっと小さな醸造所が増えて一般に浸透して、アメリカのように消費者の選択肢が増えることを願っています」と語ります。

※NB(ナショナルブランド)…小売業者によって商品企画がおこなわれたブランドのこと。小売業者が商品開発まで主導権をとっておこなわれるケースもある。対義語はプライベートブランド。ここではアサヒ、キリン、サントリー、サッポロの4社を主に指す。

わたしたちが手掛けるシードルにも、多くの同様の問題、あるいはさらに前提の問題がたくさん立ちはだかります。小さな動きでも、みんなが楽しめるような活動を続け、おいしい商品を届けることで「クラフトシードル」という世界をもっと多くの人に知ってもらいたい、という気持ちに火をつけてくれた「上方ビール」さんでした。

お近くの方、ビール好きの方は、ぜひ土日に訪れてみてください!

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株式会社上方ビール(上方麦酒)
大阪府大阪市東淀川区西淡路3丁目15−6
06-6829-6550
設立:2019年
代表 志方昴司氏
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