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「中田英寿さんの「CRAFT SAKE WEEK2023」」関友美の連載コラム(リカーズ7月号)

 中田英寿さんが代表を務めるクラフトサケカンパニーが主催する「CRAFT SAKE WEEK2023」が、4月21日から30日まで六本木ヒルズアリーナでおこなわれました。感染症まん延防止のため開催を中止していたので、実に4年ぶりの開催でした。2016年からスタートして、前回2019年には11日間で20万人の来場がありました。仙台、博多など地方開催でも、延べ60万人を動員してきたモンスター級のイベント!

2023年開催初日、4月21日「AWA酒」に参加の10蔵元

今回は1日1テーマに沿い、中田さんが厳選した10酒蔵が指名され、日替わりで10日間、全100蔵が出店しました。六本木という土地柄と主催者のPR力やコネクションにより、日本酒ファンだけでなく日本酒ビギナーの外国人や若者も集まり、他に類を見ない華やかで賑やかなこのイベントはお客さんにとって、普段なかなか会うことのできない蔵元(クラフトマン)から直接話を聞くことができる、貴重な場です。スタイリッシュな空間で、DJが鳴らす音楽を聴きながら、あらゆる人が笑顔で日本酒を楽しむ光景はそれだけで楽しげで、「日本酒ファンではないけど、雰囲気を味わいたいから足を運ぶ」という人もきっと大勢いることでしょう。

(左)七賢|山梨銘醸 北原専務、(右)真澄 | 宮坂醸造 宮坂専務

酒蔵側としても、まだリーチできていない潜在層と出会えるまたとない機会です。国内1,000社以上の酒蔵があり、そのうち1割だけの選ばれし酒蔵が出店することを許されます。ラインナップを見れば一目瞭然。やはり業界で定評のある蔵だけが名を連ねています。『美味い酒』というのはまぐれで完成することなどなく、圧倒的な酒造技術と工夫、独自のコンセプト作りと商品設計、清潔保持、適切なタイミングで適切な設備投資をおこなう経営的戦略のうえに成り立っている、とても地道で繊細なもの。ひとつでも怠れば、酒の味わいに直結して、やがて表舞台からは消えていきます。もちろん中田さんの好みもあるので、このイベントが全てではありませんが、ひとつの指標なのです。中田さんは相当テイスティングし込んでいて、将来性なども加味してシビアに判断しています。今年は呼ばれるかしら、とドキドキして蔵元たちは連絡を待っているのです。

 「菊泉ひとすじ」の酒を手に持つ滝澤酒造の滝澤社長

今回は、国内はもちろんのこと、アジア、アメリカ、ヨーロッパなど海外で日本酒を扱う人たちの姿も数多く見られました。仲介者となる彼らが来日して直接作り手と会話し、深い知識と経験を自国に持ち帰ったうえで、その国々に日本酒をフィットさせてくれることを願うばかりです。来年はさらに発展しているだろうか、今からすでに2024年の開催が楽しみです。

わたしは4月21日は取材、22日は酒蔵側で参加させていただきました。(右)「播州一献」山陽盃酒造 壺阪専務


今月の酒蔵

黒龍酒造(福井県)
1804年(文化元年)創業。業界で知らぬ者はいない一流の銘醸蔵。憧れの銘柄だ。「黒龍」ブランドを贈答用、「九頭龍」ブランドを家飲み用と定義している。七代目蔵元・水野直人氏はワインにも造詣が深く、日本酒が持つ熟成の可能性も追求しながら常に現場の技術を磨き、高品質な商品の魅力を発信している。2022年には永平寺町に複合施設「ESHIKOTO」を新設。日本酒ファンのみならず、多くの人に福井の日本酒と食文化を知ってもらうため尽力している。

以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」7月号より

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