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“酒米王国”岡山の風土と地酒を知る「岡山地酒メディアセミナー」

お招きいただき、久しぶりにメディア向けの会に行ってきました。
資源が豊富がゆえに地元の人が長所を捉えきれず、PR下手…というのは日本全国どこでも言えることではありますが、なんとなく岡山はその一段上をいく奥ゆかしさを持つ印象です。現在42の酒蔵がある岡山県(私調べ/もし誤りがあればお教えください)ですが、地元で消費される銘柄も多数です。岡山といえばなんと言っても、酒米「雄町」の誕生地であり、最大生産地。全国の醸造家、または消費者から愛されています。
岡山の日本酒について、改めて勉強してきました。この日の講師は、日本酒専門誌「酒蔵萬流」の先輩ライターである市田さんでした。

“酒米王国”岡山の風土と地酒を知る「岡山地酒メディアセミナー」
5月11日(水)14:00~15:15
とっとり・おかやま新橋館2F(港区新橋1-11-7 新橋センタープレイス)

【出席者】
伊原木隆太(岡山県知事)
市田真紀(SSI認定利き酒師、日本酒学講師)
渡邊秀造(白菊酒造代表取締役)ZOOM参加
【司会】
松野理絵(岡山県観光連盟)
【内容】
①岡山県知事より挨拶、岡山ディスティネーションキャンペーンご紹介
②市田講師による岡山の風土、地酒の紹介
③岡山地酒試飲、おつまみの試食

会場から講師の市田さんが進行し、ZOOMで「大典白菊」渡邊社長がコメント参加した。

作物がスクスク育つ「晴れの国おかやま」
酒の前に、岡山県のおさらい。数多くのフルーツを栽培していて、味わいの良さから高値が付くブランド果実も多く持つ岡山。その理由は、晴れの日が多い点にあります。降水量1mm未満の日数を20年間計測してみると、年間平均で次のような結果に。
1位 岡山県(276.7日)
2位 山梨県(276.1日)
3位 兵庫県(271.7日)
4位 広島県(270.8日)
となっています。1位、2位はやはりフルーツ王国!

岡山県の地酒について

岡山県の地酒の味わいの特徴

「酒米どころ岡山ならではの、米のうま味を大切に引き出した、柔らかくて口当たりのやさしい酒」が特徴とのこと。華やかさはあまりないものの、1杯2杯と飲み進めるごとに、ジワジワと癖になる柔らかい旨味が持ち味です。

他県に依存しない、酒米が豊富な土地

米を他県に頼らず、自県の米のみで十分に製造できる生産量と質のポテンシャルがあるのが岡山県の強み。酒米である「雄町」「山田錦」、食用米だが酒造りに向いている「朝日」「アケボノ」が主に岡山県の地酒づくりに使われています。
渡邊社長いわく「朝日は心白はないが、溶け具合が良く、(古い時代の米だから)粘り気が少なく扱いやすい。メリハリある酒らしい酒、という味わいになる傾向がある」とのこと。また「朝日」についても「農林12号と朝日を掛け合わせた米。食米の中でも粒が大きく、柔らかい」と、良質な地元の米について説明しました。

ブランド「雄町」「山田錦」がある

四大酒米と呼ばれる良質な酒米「山田錦」「五百万石」「美山錦」「雄町」のうち、「雄町」は全国の総生産量のうち95%が岡山県産。「山田錦」も兵庫県(15,614t)に次いで2,409tと全国第二位です。特に「雄町」は、雄町サミットがおこなわれるほど注目を集め、全国の醸造所から使いたいと熱烈なオファーが来る個性ある酒米です。だいたいの酒米は交配させたものですが、「雄町」は混血のない原生種です。
「山田錦」については「兵庫県の吉川、東条、社など特A地区がある地域と、勝英地区や岡山市の生産地は同じ中国自動車道沿いにある。地質もよく似ている」渡邊社長が教えてくれました。

地元の気候や風土を熟知した、備中杜氏の技

元禄年間に、浅野弥治兵衛という人物が灘で酒造技術を習得した後、地元に帰り後進を育成。それが「備中杜氏」として次第に確立されたようです。最盛期には500名超を抱える大所帯で、県内、県外、遠く朝鮮半島で活躍した備中杜氏もいたとか。
全国各地に杜氏集団の歴史がありますが、備中杜氏は明治42年から独自に自醸酒品評会をおこなっており、現在でも続いています。組合独自のコンペティションとしては、能登杜氏組合に次いで2番目に古い歴史を持っています。このことから、マメで研究熱心な性質がうかがえます。

料理とよく合う岡山酒

とっとり・おかやま新橋館「BISTRO CAFEももてなし家」で食べることのできるメニュー
酒米「雄町」「朝日」を使った岡山酒5種類をテイスティング

市田さんの説明通り、岡山酒はどれも単体で派手さはありません。しかし素朴で柔らかく、食事に合う魅力があるようです。試飲した5種類のなかで、特に私が気になったのは以下の通り。
「05:十八盛酒造、十八盛 山田錦 純米」立ち香はあまりなく、口に含むとまるで樽酒のような安らぎの木の香りがして、酸が高く、塩麹によく合います。
「07:白菊酒造 大典白菊 トリプルA」は、朝日、アケボノ、アキヒカリの3種純米酒のブレンド。完全に混ざり合う、というよりそれぞれの個性を口の中に感じることができ、面白い個性ある味わいです。ローストビーフによく合いました。

おわりに。わたし岡山好きかもしれない。

やはりちょっと地味な印象ですが、実は全国から引く手あまたの酒米があり、水資源が豊富で、合わせる食事・食料が豊かで、さまざまな文化と風土を持つ魅力ある土地です。

先日旅行で倉敷に行きましたが、とても美しく、ただ古いばかりでなく観光都市として整備されており、観光客に優しい安心して回れる町でした。食べ物もおいしかったです。素敵なジーパンを見つけてついつい購入。大切な思い出の一着となっています。
以前酒の会で岡山市に行き、今では友人である「錦と吟」のオーナー料理人・柴田さんを訪ねました。瀬戸内市牛窓にある備前焼の窯元・末廣学先生を訪ねたこともあります。新見市のワイナリー・ドメーヌテッタさんの評判を聞きつけ、勉強に行ったこともあります。みんな優しく、温かくて素敵な思い出ばかりです。

私がフリーライターの傍ら働く、山陽盃酒造は兵庫県の岡山県寄りの場所にあります。だから個人的に近しい存在なのです。いつか児島や蒜山など他の場所にも行ってみたいと思います。その際はもちろん、その土地の岡山酒を飲みます。みなさまも是非、穴場ともいえる観光地・岡山を訪れ、見直し、より身近に感じてみてください。きっとクセになるはず!(近場では”とっとり・おかやま新橋館”でもちょっぴり体感できます)

とっとり・おかやま新橋館の2階で体感できるメニュー


(おまけ)講師の市田さんと記念撮影。岡山県の精米機メーカー・新中野工業さんが制作した酒米サンプルを持って。


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