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第8章「互いの日常大公開!関ゼミ男子2人にズームイン!!!!」

関ゼミとネパール学生による国際交流プロジェクト(メロサティ・オンラインプロジェクト)。バーチャル島(※オンライン上の仮想島)で無事にオープニングセレモニーを終えた。
ネパール学生たちは「また来週会おう!!」と言って「飛行機」で一旦島を後にした。「島」にゼミ生だけになった途端、しばらく封印してきた日本語が飛び交った。既に脳が英語にシフトしてしまっていたため、遥か昔を思い返すような懐かしい響きに感じられた。

そんな中、友紀(トモキ)は他のゼミ生の輪には入ろうとせず、飛び立った飛行機をじっと眺めていた。飛行機が見えなくなっても彼はそこに立ち尽くしていた。
心配した陳(ジュン)が駆け寄ると、友紀の目にはうっすらと涙が・・・。
それだけではない。彼の異変に気付いた陳はゼミ生に向かって大声で叫んだ。
「みんな、大変だ!友紀の鼻から血が流れている。救急車!」

ゼミ生が慌てて駆け寄ると明らかに鼻血。しかし友紀はそんなことはお構いなしの様子で飛行機の飛んで行った空をただただ眺めていた。おまけに彼の口元からはよだれが流れ、微笑する目は「ギラギラ」と輝きを放っていた。
「友紀、しっかりして!」と叫ぶ上智生さわねの声も空しく響く。ゼミ生は急遽輪になって対処法を話し合った。そして、驚愕の事実が明らかになった。

なんと彼は、セレモニーの間ネパールの女子学生たちから「Tomoki is so cute!」と可愛がられ続けていたのだ。そして鼻血噴出。「アッチャー」これにはゼミ生たちも頭を抱え込んだ。

友紀はセレモニー中の自己紹介で「僕はサッカーが得意で運動神経が良い。ネパールの貧しい子供たちにサッカーボールを寄付し、サッカーの楽しさや技術を教えたい。」と笑顔で白い歯をキラッと光らせながら語っていたのだが。
「国際支援を爽やかに公言しながら結局そこかよ・・・」
 ゼミ生たちが「コイツは手が付けられない」とあきらめて日本に帰国する機内に戻ろうとすると、いきなり友紀が大きな声を張り上げた。


「ダメだ、みんな。僕たちもネパールに向かおう!」と叫ぶと同時にさらに鼻血が「ピュー」と噴き出した。
 友紀の狂乱に見かねて「仕方ないな」と重い腰を上げたのは、関ゼミ一のコミュ力を備える切り札、智翔(アキト)だ。
 
「ちょっと待って、何考えているんだ、今は試験期間だよ!?!?」
そこから、粘り強い説得が始まった。


ここで智翔(アキト)について触れておく。

彼は巧みな話術で人を魅了する。
例えば今年度の関ゼミ生たちはコロナ禍で直接会うことが許されず、初期段階で全員と20分以上電話で会話することが課された。顔も合わせたことがないゼミ生と、そんなに長く話せるだろうか.....。

しかし流石の関ゼミ。
異文化交流を学ぶゼミ生は全体的にコミュ力が高い。なかでも抜群の力を発揮したのが智翔(アキト)。

聞き上手でツッコミ上手、他人の話題に合わせられる知識と教養のある智翔にとって3時間や、4時間の会話など容易かった。
彼のアルバイトも一風変わったものである。なんと百貨店やデパートでよく目にする、お店と提携したカードの紹介をしているのだ。
相手を退屈させない話術やカードの魅力と特典を最大限に、かつ最短に伝える説明力、様々な疑問にも臨機応変に対応する力など、到底大学生が持ち得る能力とは思えない。


しかし、切り札智翔の説得も不調に終わり、もはや取るべき選択肢「武力行使」しかなくなった。
まずは、智翔は返り血を浴びないよう、友紀の鼻にティッシュを詰め込む。
そして間髪入れずに友紀に飛び掛かり紐で縛った。そして全員で彼を無理やり機内に連れ込み、オンラインテストを受けさせた。友紀がいやいやながらも試験に取り組み始めるのを確認すると、他のゼミ生たちもテストに慌てて取り組んだ。

長い時間をテストに費やした。すべてオンラインなので目が疲れ切ってしまい、運動不足。おまけに友紀はいつ暴れだすかわからず、監視するのも骨の折れる作業だった。ようやくテストが終わった頃には、カレンダーは夏休み開始の8月に移り変わっていた。

テストという縛りから開放された友紀は勢いよく機内から飛び出した。
その光景を見たゼミ長トゥエは友紀の
やる気に驚愕し
「彼は本気だわ!本気になった日本人ってかっこいい!」と半ば感動して目に涙を浮かべていた。
亮は「そういうことじゃないんだけどな・・・。」と小声で2人のやり取りの食い違いを楽しみながら苦笑していた。
「みなさん!友紀に続いて行きますよ!ほら走って!!」
休息できると考えていたゼミ生であったが、ゼミ長の言うことには逆らえない。全員体を起こして機内から駆け出して行った。
この時ゼミ長の掛け声よりも先に、友紀の後に続いて走り抜けていった男がいた。それは智翔だった。あんなに必死に友紀を止めていた智翔もネパール学生に会いたがっていたうちの一人だった。

そして智翔の鼻からも血が・・・

「もう日本の男、狂っている。もうだめだ国に帰る!」

あきれて機内に引き返そうとする台湾からの留学生、陳を皆で必死になだめた。

夏の日差しが降り注ぐ中、駆け抜けた先にはネパール学生が並んでこちらに大きく手を降っていた。


次回「WASSYOI!ネパールと日本の365日」

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