【カルト問題の難しさ キリスト教系の宗教における統一教会との共通点とカルト性】

今日も世間は統一教会の話題で持ちきりです。統一教会の教義の一例をあげて「うわー、やっぱカルトはおかしいな〜!」というノリで血祭りにあげられていますが、統一教会が影響を受けた伝統宗教の一つであるキリスト教を学んできた者からすると、面白おかしく取り上げられている様子を見て複雑な気持ちになります。良いか悪いかはさておき、同じようなことがキリスト教でも言われてきたり、キリスト教系の宗教にも「カルト性」が存在している側面があったりするからです。

*本論へ入る前に、「カルト」の定義についてはこちらをご覧ください。ものすごく簡潔にまとめると、反社会的なことをしていればカルトということです。


統一教会とキリスト教的な宗教との共通点

統一教会では、自分達とは異なる考え方をする人達を「サタン」と扱うようです。しかし、自分達の考えと相入れない相手を悪魔のように扱うことは、キリスト教系の宗教では珍しいことではありません。また、統一教会は「〇〇しないと地獄に堕ちる」という表現を用いているようですが、キリスト教系の宗教の中でも同じような言い回しが使われてきています。そもそもキリスト教的な考えでは、キリスト教を信仰していない異教徒は天国に行けないことになっています。このような世界観は、ダンテの「神曲」の中でも描かれています。このような背景から、キリスト教徒の中には、私がキリスト教における「異教徒」としてキリスト教に言及していることをよく思わない人もいるでしょう。

それから、婚前交渉を忌避するのも、統一教会に限らず、キリスト教系の宗教にはよくある考え方です。また、カトリックの教義でも離婚は難しくなっています。カトリック圏で事実婚が広まったのは、正式な結婚だと離婚しにくくなるという背景もあるようです。同性愛者も教義上よく思われていません。かつてキリスト教圏で同性愛が迫害を受けていたのは、このような事情があります。

その他 キリスト教系宗教におけるカルト性

また、統一教会と共通するわけではありませんが、キリスト教系の宗教の教義や、特定の宗派における「カルト性」の問題もあります。

カトリックでは、聖職者達による性的虐待が問題となっていますし、「異端者」と認定した人を迫害したり、過去に十字軍を派遣して異教徒であるイスラム教徒を攻撃しに行ったこともあります。

ロシア正教会は核兵器を祝福するということを行ってきましたし、ロシアによるウクライナ侵攻を支持しています。(ただし、他の正教会は、ウクライナ侵攻に批判的です。)

また、正教やカトリックでは「断食」が行われることがあります。これは、期間によって肉などの一部の食事の摂取を控えることです。実際には、健康上の問題がある人や子供はしなくても良いことになっていますが、一部の人が他人に断食を強制しているとすれば、それも「カルト的」であると言えるでしょう。

まとめ

伝統宗教も扱い方に気をつけないと時に「カルト性」を発揮します。統一教会は新興宗教なので余計に奇異な目で見られてしまいがちですが、伝統宗教でも同じようなことが言われていることがありますし、同様に扱い方にも注意しなくてはなりません。統一教会による霊感商法は許されませんが、その実態に関わる報道がヒートアップしてしまう原因の一つに、日本ではキリスト教系の宗教がマイノリティで、その実態をよく知らない人が多いこともあると思います。