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虎に翼 69話 「世の中そういうものだと流されない、それでいいじゃないですか」を受けての一人言

朝ドラ『虎に翼』は見ているだけでどっと疲れるというか、カロリーの消費がすさまじい、そんなふうに感じることも少なくない。
けれど私にとって興味関心が尽きないドラマなのです。

主人公の伊藤沙莉さんが大好きだし、花江ちゃん役の森田望智さんが涙するシーンは必ずつられて泣いてしまう。

轟もよねさんも梅子さんもみんなみんな大好きで登場人物について話し出したらキリがない…

気がつくと泣いたり、爆笑したり、怒ったり、悔しくなったり、様々な感情の波に揉まれる。

さて少し前の第14週。
私がどうしても素通出来なかったのが69話。

どうして寅ちゃんは泣いていたのか、穂高先生の何に怒っていたのか。
たった一回みただけでは理解がすぐに追いつかず困惑、困惑。

でも何か胸に引っかかるものがあって、寅ちゃんの訴えていることに私自身に関係する何かがある気がしてならなかった。


69話 寅ちゃんが穂高先生に怒りをぶつけるシーンを振り返ります。

〈寅子〉先生の一言で心が折れても、その後気まずくても感謝と尊敬はしていました。世の中そういうものと流される辛さを知る、それでも理想のために周りを納得させようと踏ん張る側の人だと思っていたから。
私は、最後の最後で、花束で、あの日のことをそういうものだと流せません。先生に、自分も雨垂れの一雫なんて言ってほしくありません。

〈穂高先生〉あーぁ!謝ってもダメ、反省してもダメ、じゃあ私はどうすれば良い?

〈寅子〉どうもできませんよ!先生が女子部を作り、女性弁護士を誕生させた功績と同じように女子部の我々に報われなくても一雫の雨垂れでいろと強いて、その結果、歴史にも記録にも残らない雨垂れを無数に生み出したことも。
だから私も先生に感謝はしますが、許さない。納得出来ない花束は渡さない。世の中そういうものだと流されない。それで良いゃないですか!以上です。

虎に翼


最後の『世の中そういうものだと流されない。それでいいじゃないですか!』このセリフを堂々と言える寅ちゃんのことを「それでこそ寅ちゃんだ!」と感心した半面、何度このセリフを聞いても右から左へ流れて行ってしまうような。自分の中に留めておけないような、うまく飲み込めない不思議な感覚があった。


ドラマの世界とは別に自分のことを振り返ってみると、世の中そういうものだと流されたくなくて異を唱えた経験が私にも何度かあったことを思い出した。

ごく稀に受け入れてもらえることもあった。
けれどどこか異質な存在かのように見られたり、訴えをぺしゃんこに潰されたこともあって。そういう時は大なり小なり心に傷を負ったものだった。


そうだ、それで、いつからか世の中そういうものだと流される傾向が私にも少なからず身についてしまっているのだ。
下らない、つまらない、個性のない価値観に縛られて窮屈さを自分に強いるときがある。そういう苦しさが自分のなかに確かにある…。


ドラマの内容を振り返りながら自分のことも考えていたら、そういえば68話にも気になるシーンがあったことを思い出した。


ということで、68話から2つの場面を振り返っちゃいます。


まず一つ目は寅ちゃんと星航一(岡田将生)が甘味処で対面しているシーン。

〈寅子〉民法だけじゃない。新しくて理想的なことを行うためには相当の工夫と努力と日時を要するもの。学生時代から心底わかっているはずなのに、上手くいかないと腹が立つ。ごめんなさい。愚痴です。

〈星〉悩む意味あります?言ってたでしょ?その時の自分にしか出来ない役目があるかも知れないって。
だから上手くいかなくて腹がたっても、意味はあります。必ず。

虎に翼


二つ目は寅ちゃんが自宅で直明(三山凌輝)と一緒に子供たちに判例の説明するシーン。

〈寅子〉尊属殺規定は合憲。反対意見を唱えたのは二人。そのうちの一人が穂高先生。
判例は残る。判決が覆らなくても。
おかしいと声を上げた人の声は決して消えない。その声がいつか誰かの力になる日がきっと来る。私の声だってみんなの声だって決して消えることはないわ。
何度落ち込んで腹が立ったって私も声を上げる役目を果たし続けなきゃね。諦めるもんか絶対に。

虎に翼

世の中そういうものだと流されずに、異を唱えること、それ自体に意味がある。たとえ上手くいかなくとも。この部分が私を強く惹きつけました。

意味がないと決めつけなくて良いのだと。

今まで私は、勇気を出して異を唱えることには、必ず相応の結果を出す必要があると思い込んでいる節がありました。
でも決してそんなことはないんですね。

だから68話で語られていたように、
おかしいと声を上げた人の声は消えることはない、意味があることなんだという捉え方に大いに救われた気持ちになりました。


周りに流されて自分の意見が分からなくなる、声を上げられなくなる、そんな自分では居たくない…。

第14週を見て自分の中に眠らせていた反骨精神がすこし刺激された気がしました。

流されずに自分の意見を表明するって勇気がいります。
勇気だけじゃない覚悟も必要。…想像するだけで身震いしちゃうくらいだけどっ。


この先『世の中そういうものだと流されない、それでいいじゃないか!』と思うできごとに自分が遭遇したときには、誰かに主張するどうこうの前に、まずは、自分が自分にむかってこの言葉をかけてやりたい。

『流されない、それでいいじゃないか!なぁ自分!』って。

そんなことを思いました。

おわり。




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