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蚊に一言申す!!

771文字 (読書時間 3分)

ぷ〜ん。
ぷっ。
スッィー。
・・・
・・・
・・・
ぷぅ〜ん。

僕の血を容赦なく吸っていく。

白と黒の全長2mmくらいのお腹の内側が血色に染まりながら、パンパンに膨れ上がる。
僕の血だ。
そして、蚊は満足げに、膨れ上がったお腹が重いのか、ふらふらになりながら、飛び立っていく。
そのまま、飛び続けることが出来ず、地を這って進む蚊もいる。

蚊は僕の血を容赦なく吸っていく。


まだ太陽が上がらない頃、僕は静かに椅子に座って、深呼吸し、心を落ち着かせる。
300mmほど窓を開けて網戸を閉めて、空気の流れや鳥の囀りに、耳や肌の感覚を預けている。
この日も、とても心が穏やかで静かに、全ての感覚が空気と共に鎮まり返っていた。

・・・
・・・
・・・

まるで波紋一つない湖面のように、心は鎮まり返っていた。

・・・
・・・
・・・
・・・・・。

ぷぅ〜ん。
一匹の蚊が僕の左耳付近に飛んで来た。
ぷっ。
スッィー。
・・・
・・・
・・・
僕の血を容赦なく吸っている。

肌の感覚が研ぎ澄まされているのか、蚊が今何をしているのか、僕の脳に映像として送られてくる。

まー、一匹の蚊ごときで心が乱れていては、なんのために心を鎮めているのかわからない。そのまま身動きせず、静止状態を続ける。

・・・
・・・
・・・

ぷぅ〜ん。
もう一匹の蚊が僕の右耳付近に飛んで来た。
ぷっ。
スッィー。
・・・
・・・
・・・
僕の血を容赦なく吸っている。

心に波紋が沸き立つのを感じる。
あれ?二匹も蚊がいる?
という事は、家の中にたまたまいたのではなく、ドアの網戸が開いているのかも。
この前も、網戸が閉まっていることを確認せず、窓を開けるといると、何匹も蚊が入って来た。
色んな雑念が頭の中をめぐる。
心は全く鎮まらない。

また、別の蚊が左耳腕の時計付近に止まった・・・

また、別の蚊も・・・

蚊よ、血を吸ってもいいが、僕に気づかれないように吸ってくれ。

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