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マイ・フェイバリット・ソングス 第12回~ジミ・ヘンドリックス

(2021年1月改訂版)

ギタリスト・ランキングなんかだと決まってナンバー1に挙げられているのがジミヘンですね。ギターの世界に革命を起こした男。世界三大ギタリストに名を連ねるエリック・クラプトンでさえ「誰もジミーのようにギターを弾くことはできない」と言い、ジェフ・ベックにいたっては「(ジミヘンのギターを聴いて)廃業を考えた」とまで語ったそうです。


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『ARE YOU EXPERIENCED?』Jimi Hendrix Experience(1967年)

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスというバンド名義でのファースト。これはイギリスのオリジナル盤とアメリカ・カナダ盤とCDでは入ってる曲も曲順も違っているんですが、僕が聴いてるのはアメリカ盤のLPです。オリジナル盤は代表曲である「Hey Joe」も「Purple Haze」も「The Wind Cries Mary」もなぜか収録されていません。その三曲や「Foxy Lady」といった代表曲も素晴らしいけど、個人的には「Manic Depression」にグッときます。サイケデリックで革新的な楽曲群。他の人の曲では一度も触れられたことのない心の部分を刺激されるような音楽という感じがします。ビートルズ風の曲はたくさんあるけれど、ジミヘン風の曲ってちょっと思いつかないですよね。後の人がどんなに焦がれても、彼の生み出す曲は類似品さえ作りようがない域に達していると思います。


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『Axis:Bold as Love』Jimi Hendrix Experience(1967年)

実験的でよりサイケデリックな2nd。どうしてもファーストとサードに高い評価が集まりがちですが、僕はこのセカンドが一番好きです。「Up From The Sky」「Spanish Castle Magic」「Wait Until Tomorrow」「Ain't No Telling」「Little Wing」「If 6 Was 9」「You Got Me Floatin’」「Castle Made of Sand」「One Rainy Wish」「Little Miss Lover」 「Bold As Love」。なんて素晴らしい楽曲群でしょう。特に「Bold As Love」と「Little Wing」のギターの美しさ。多くのアーティストがカバーしている「Little Wing」はジミヘンの最高傑作じゃないかと僕は思います。尚、「She's So Fine」のみバンドメンバーのノエル・レディングが作曲。音が左右を駆けめぐる曲が多く、ヘッドホンで聴くと音が頭の中をぐるぐる回ってよりサイケな感じになるんですよね。


『Smash Hits』Jimi Hendrix Experience(1968年)

シングル曲を中心としたベスト盤。この段階でベスト盤をリリースする意図がよく分からないんですが、ファーストのイギリス盤で多くの代表曲がアルバム未収録になっているからかもしれません。ほとんどは前二作のアルバムに収録されている曲で、「51st Anniversary」と「The Stars That Play with Laughing Sam's Dice」のみオリジナルアルバム未収録曲となります。


『Electric Ladyland』Jimi Hendrix Experience(1968年)

3rd. 三枚目にして生前最後のスタジオアルバム。これは紛れもなく名盤ですね。二枚組で16曲も入っている上、A面4曲目の「Voodoo Chile」は15分という長大な一曲。(個人的にはラストの「Voodoo Child(Slight Return)」の方が好きです) 他に特に好きなのは「Have You Ever Been(to Electric Ladyland)」「Crosstown Traffic」「Gypsy Eyes」「House Burning Down」。ボブ・ディランのカバー「All Along The Watchtower」も素晴らしく、ディランは「この曲は俺が書いたが、権利の半分くらいはヘンドリックスのもの」と言ったそうです。前述のギタリストたちも含め、ポール・マッカートニーにしてもローリング・ストーンズのメンバーにしても、当時のアーティストたちはこぞってジミヘンを絶賛してますね。尚、このアルバムにはスティーヴ・ウィンウッド、クリス・ウッド、ブライアン・ジョーンズなど豪華な面々が参加しています。そして、これで「ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」は解散となります。ちなみにこのLPのジャケ写はアメリカ盤。イギリス盤は女性のヌードモデルを使ったものですが、それはジミ自身あまり気に入っていなかったようです。


『Band of Gypsys』(1970年)

新たに全員アフリカ系アメリカ人のトリオ「バンド・オブ・ジプシーズ」を結成し、バンド名をそのままタイトルにしたライブ盤。6曲入り45分なので、一曲一曲が長いです。これは1970年1月1日録音ですが、同月28日のライブを最後にバンドは解散。ジミ・ヘンドリックスは同年9月18日に亡くなってしまうので、これが生前のラストアルバムとなりました。ここまでがジミヘンの意図によってリリースされた公式アルバムということになります。活動期間はわずか4年あまり。


『First Rays Of The New Rising Sun』(1997年)

これは生前の公式盤ではありませんが、死後27年経ってから「生前のジミが企画していた4枚目のアルバム」に近い形で発表された2枚組。ジミヘンは生前のオリジナルが三枚しかないので、もっと聴きたいという人はこのアルバムですね。というか、コンピ盤だからと聴かずにいるはもったいないほどいい曲揃いです。バンド・オブ・ジプシーズ解散後、ミッチ・ミッチェルを呼び戻してレコーディングしたもので、スティーヴ・ウィンウッドやロネッツなども参加。僕は特に「Freedom」「Angel」「Room Full Of Mirrors」「Biginnings」「In From The Storm」が好きですね。


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『Live At Woodstock』(1999年)

ジミヘンの死後にも多くの未発表曲集・ベスト盤・ライブ盤・海賊盤などが山ほどリリースされています。果てしない数なので、さらにジミヘンを掘り下げたい方はお好みでチョイスされるといいと思いますが、一曲だけどうしても付け加えておきたい曲があります。それは『Live At Woodstock』に収録されている「Star Spangled Banner」。アメリカ国歌「星条旗」をウッドストックで演奏したときの録音なんですが、爆撃機の空爆に人々が逃げ惑う様子をギターで再現しつつ、ベトナム戦争を批判している。この演奏は鳥肌ものです。こんなすさまじいギタープレイは後にも先にもありません。衝撃的ですよ。


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