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<日本灯台紀行 旅日誌>2021年度版

 
<日本灯台紀行 旅日誌>紀伊半島編

#3 三日目(1) 2021年3月22(月)

梶取埼灯台 撮影(1)

紀伊半島旅、三日目の朝は、津市内の、大手ビジネスホテルの部屋で目が覚めた。<5:45 起床 昨晩もほぼ一、二時間おきにトイレ 眠りが浅い>。<>=山カッコ内は、メモ書きからの転用なので、いちおうは事実なのだろう。事実というものが、この世に存在するとしての話だが。

さてと、<6:45 朝食 二階の食堂 バイキング形式 ビニール手袋でトングをつかむ さほど混雑もなく 気分よく自室に戻る 便は出ない>。この大手ビジネスホテルは、朝食バイキングがウリで、何回か利用している。仕事とか出張できている人が多くて、ほとんどは作業着の男たちだ。観光客は少ない。雰囲気的には、ま、好きな方だ。

<7:30 出発 車庫から出る時 左側の(路駐している)車に視界をさえぎられ 車が来るのがわからなかった あわやぶつかる所だった でかいランクルで 狭い道なのにスピードを出しすぎ ヒヤッとする>。自分の不注意よりも、路駐の車とランクルにイラっとした覚えがある。ランクルに乗っている奴にロクな奴はいない。ま、これも、偏見であることに間違いない。

県庁などが見える大通りを抜けて、<津>インターへ向かう。そうか、三重県の県庁所在地は<津>だったのか!どうでもいいことに感心しながら、高速に入る。<伊勢道―紀勢道―有料道路>と乗り継いで、熊野市からは一般道に入り、さらに、新宮、那智勝浦方面へと向かう。

途中、きれいな<道の駅>のようなところに寄り、トイレ休憩。ついでに、那智黒石の招き猫を買う。大きさ的には、大中小とあったが、ケチって一番小さいものにした。ま、これは亡きニャンコへのお土産だな。あとは、般若心経が胸に印刷されている黒のTシャツを買った。こっちは、そのうちまた四国巡礼をするときに着るつもりだ。場所柄的に、熊野、新宮、那智とくれば、いまだに山岳信仰のメッカで、自分にも、多少の信仰心が蘇ったのかもしれない。

まあ~、一種の衝動買いだな。ちなみに、般若心経の黒Tシャツは、帰宅後すぐに袖を通した。まったく似合っていなかった。むしろ、悪趣味だ。はたして、これを着て、四国の札所を巡る日が来るものなのか、いまのところ定かではない。

熊野古道にも那智の滝にも寄らず、結局は、バカげた妄想の中を漂いながら<ほぼ予定通り、11:30頃に梶取埼(かんとりさき)灯台に着く>。港(太地漁港)を左手に見ながら、急な坂を上り、ナビの案内に従い、うねうね行くと、行き止まりに小さな駐車場があった。

梶取埼灯台は、きれいに手入れされた公園の中にあった。緑の芝生はきっちり刈りこまれ、驚いたことに、二、三本、桜が咲いている。灯台に桜、これは、めったに見られる光景ではあるまい。そばにあったトイレで用を足し、気分良く、撮影開始だ。

そう、距離的には100メートルほどだろうか、真正面に灯台があり、背後には海が見える。灯台の右側は多少広くなっているので、横からも撮れる感じだ。歩き出すと、すぐ右手に大きなクジラが鎮座している。<鯨供養碑>。いちおう記念写真だ。そういえば、さきほど入ったこぎれいなトイレの前にも、捕鯨を主題にした大きなレリーフがあった。それに、灯台のてっぺんの<風見鶏>が、<風見鯨>になっている。これは面白い。

後々になって、気づいたのだけど、ここ太地町は、昔から捕鯨が盛んな土地で、最近では、イルカの追い込み漁が問題になり、反対派などが押しかけ、ひと騒動あったところだ。そんなこととはつゆ知らず、灯台巡りの道すがら、通り道にロケーションのいい灯台があるので、たまたま寄ったまでだ。なんとも脳天気な話だ。

自然保護や環境保護、捕鯨やイルカ追い込み漁については、あまりに問題が大きくて複雑なので、ここでは、ノーコメントとしたい。賛成、反対、どちらの人たちも、いわば体を張って闘っているわけで、部外者が、ちょろっと無責任な発言をするような問題じゃない。それが良識というものだろう。いや、良識もヘチマもない。ここは黙って、通り過ぎよう。

…いつものように、撮り歩きしながら灯台に近づいていった。さほど巨大な灯台ではないが、これまでに見たことのない、ちょっと変わった形をしていた。というのは、頭というか顔というか、とにかくてっぺんの方に、海の方へ突き出たベランダがあり、そのベランダの先端部には大きなレンズが設置してあった。つまり、この灯台は、海を照らすレンズを二つ持っているのだ。

その時は、わけがわからなかったが、今調べると、それは、<梶取埼ナミノリ礁照射灯>という、ほとんど読めないような名称だが、要するに、付近の岩礁を照らして、船舶の安全航行に寄与している、ま、灯台のような機能を持つ設備だった。<灯台>に<照射灯>が併設さている結果、いわゆる、一般的な灯台の形が変則的になっている。変った形、いや、個性的な形になっている、と言い換えておこう。

それと、灯台付近にはソテツ?のような植物があって、南国ムードが漂っている。思えば、三月にしては、かなり暖かくて、快適だった。和歌山といえば、すぐに紀州みかんを連想するのは、かなり貧しい想像力と言わねばなるまいが、温暖な気候であることに間違いはない。

灯台の根本に到着した。登れる灯台ではないので、回りをぐるっと歩きながら、かなりの仰角で写真を撮った。もっとも、東側は、ほとんど<引き>がないので、撮らなかった。いずれにしても、近すぎて写真としてはモノにはならない。

と、何やら案内板だ。なになに、と読む前に、まず写真を撮った。あとでゆっくり読めばいい。要するに、さらに海に突き出ている一段低くなった岬の先端部に、鯨を捕っていた頃の<狼煙場>があるようだ。好奇心を多少刺激され、加えて、灯台を海側から撮れるので、ここは行くしかあるまい。

たしか、階段状の小道を十段くらい降りて、また登った。と、両脇が木立になり視界がなくなる。したがって、灯台を、海側から撮る位置取りとしては、小道を少し登ったあたりがよい。梶取埼灯台の全景が見える。ただし背景は空、右側に、少しだけ断崖と海が見える。この時はここで引き返した。<狼煙場>よりも来るときに見かけた漁港の防波堤灯台が気になっていたのだ。

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