見出し画像

聞きたくて。でも聞けなくて。

秋季大会地区予選を控えた数日前のこと。

ビールを飲みながら、旦那と話していた。
「あいつ、背番号もらえるだろうか」

夏の大会を終え、始動した新チーム。

息子は試合に出させてもらっていたようだったけど、新チームの様子もあまり分からないまま9月を迎えた。

あちこちからメンバー入り報告が聞こえてくる中、我が息子は何も言わない。

同じ家の中にいるのに、むしろ触れてはいけないネタのようになっていた。

秋季大会前々日。
旦那は「そろそろ発表あるんじゃないか」というものの、何事もなく。

私は期待と諦めが半分半分になっていた。

色々な経験を重ね過ぎて、すぐに悪い方を想像してしまう。

さらに気持ちは悪循環。

期待しすぎると、そうじゃなかった時の衝撃に耐えられないから。

だから、いつもどおりに。余計なことは考えずに・・・。
ソワソワする旦那とは逆に、気持ちを殺す私。

秋季大会前日。

・・・いくらなんでも発表あったでしょう?

でも帰宅した息子は変わらぬ表情でお風呂に入ってしまった。
ダメだったのかなぁ・・・。ネガティブな想像しか出てこない私。

お風呂を出て、夕食を食べ出した息子に問うてみた。

「ねぇ、明日って背番号なしで戦うの?」

そんなわけはない。わかってる。でも問い方が分からない。

「背番号あるよ」息子が淡々と言う。

???

「背番号あるの?貰えたの?」

「貰えたよ、4」

思いのほかあっさりと、答えが返ってきた。

・・・???

えええ!!! 4???

いきなり、一桁?????
さすがにそれは想像してなかった。

早く言ってよ!どうだったのかな、って心配してたのに!背番号縫わなくていいの?

と質問攻めの私に

「もう縫ってある」とどんぶりご飯片手に唐揚げへ手を伸ばす息子。

ユニ見せてよと言っても「腹減ったから食ってから」とにべもない。

もぐもぐとご飯を食べ進める息子の傍らで、自分も何がどう胃袋に入ったか記憶のない食事をそそくさと終える。

そんな私の様子を知ってか知らずかゆっくり食事を終え「ごちそーさま」と自室へ向かう息子。慌てて追いかける。

「ユニ、見せてよ」

「ん・・・・・・・」

学校のサブバッグ。テキストが詰まった端っこに小さく畳まれて入ったそれを引っ張り出した。

本当だ。背番号4ってなってる。

びっくりして、ユニにお辞儀してしまった。
嬉しくて、全ての何かに感謝したくて。

何枚か写真を撮らせてもらって、丁寧に畳んで部屋を後にした。

初めてもらった背番号。

小学校からここまで9年間。長かったけどやっと掴んだ一桁の背番号。

早速、仕事中の旦那に写メを送った。
きっと気が気じゃなかったに違いない。

やったな、頑張ったなアイツと、嬉しそうな返事。

本当に。よくここまで頑張った。
でもまだまだ。ここからだ。

いよいよ秋季大会地区予選。
チームみんなの思いを背負って。

まずは一つ、勝てますように。

野球好きな母が日々感じたことを綴ってます。何かのお役に立てたら幸いです。