チアとブラバンのいるスタンド
いよいよ高校野球夏の地方大会が開幕した。
そして今年、私は初めて高校球児の母としての夏を過ごしている。
思えば、私はこの場所にすごく憧れていたのかもしれない。
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高校野球はいつもファンの一人として、これまで内野席から観戦していた。
そこから見える風景の中にいつもあったのは一塁側と三塁側にそれぞれ陣取り、メガホンやお揃いのタオルを掲げて応援している両チームの応援団。
ファインプレーに上がる歓声。ヒットが出るたび打ち鳴らされるチームカラーのメガホン。
グランドの熱戦とスタンドの熱い応援は私にとってどちらも欠かせない夏の風物詩だ。
そしてこの夏、3年ぶりにブラバンとチアの応援が加わり、私がかつて見ていたあの素敵で幸せそうな景色がそこにある。
その中に今年は自分がいる。
それがまるで奇跡のようで。
嘘みたいで。
そこにいるだけで目頭が熱くなる。
初めて知った。
応援席にいると場内アナウンスはかき消され、ブラバンの大演奏とメガホンを打ち鳴らす音と拍手の音が全てになるんだ、と。
夏の太陽の日差しの下、試合展開に合わせ、吹奏楽部の部長さんがグランドに目を配りながらキビキビと曲を変えていく姿のカッコ良さを。
その先にはチアリーディングの姿。長くツヤツヤの黒髪を後ろで一つに結び、お揃いのキャップ、両手にチームカラーのポンポン。あぁ、なんて可愛いんだろう。
いろんな景色が新鮮で、楽しくて。
視線を逆方向の先には息子がいて、メガホンで応援している背中が少し見える。
その背中を見ながら思うのは
この夏を迎えられて良かった、という気持ちと、
この場所に連れてきてくれてありがとう、という気持ち。
そこにこれまで乗り越えてきたいろんなことが思い起こされて、ついつい涙腺が緩みそうになる。
「高校野球、親は泣きっぱなしだよ」入学してから聞いた先輩母からの言葉。
本当にそう。グランドを見ながら思った。
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これまで試合を2つ勝ち上がり、まだ夏は終わってない。
まだまだ終わらせない。終わらせたくないと心から強く願うのはきっとこの場所があまりに素敵過ぎるから。
チアとブラバンのいるスタンドで、この奇跡のような空気を全身で吸い込みながら「少しでも長く」と祈る夏。
3年生も2年生も1年生も。
頑張れ、がんばれ。
まだ夏は始まったばかりだ。
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