マノーリンはかもめの夢をみる(5/10)
あんなことがあってから、リョウヘイは海で泳ぐのをやめてしまった。叱られたのが堪えたというのではない。ただ、きまりを破ってみたということだけでもう、灯台まで泳いでみたいという熱がほとんど冷めてしまったのだった。
だから、漁師に怒鳴られた次の日からは夏休みだというのに、リョウヘイは海水浴場はもちろん、隣町の町営プールにも行く気になれなかった。
リョウヘイの夏休みは退屈だった。役所勤めの父と漁協のパート員である母は、夏休みを口実にどこかへ旅行してみようかという発想をもたない。