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グラフィックレコーディングの“解凍”のデザイン〜「そのまま渡されても、たいてい目が滑る」問題〜

こんにちは。関 美穂子@sekimihokoです。
ビジュアルファシリテーター/グラフィックレコーダーとして活動して7年目のフリーランスです。

主に一対一、会議やイベントなどで、その場で話の内容をリアルタイムに視覚化することで話を整理したり、促したりする仕事をしています。


はじめに

※前提※
私のnoteでは、「グラフィックレコーディング」はリアルタイムの制作を指しています

リアルタイムか、後描きか

描いている私が言うのもアレなんですが、グラフィックレコーディングって画像データをそのまま送られても、見づらいことってありませんか…?

「議事録です!って渡されても、どこから読んで良いか分からない」
「正直、目が滑る」
「なんとなく内容が分かるような、分からないような…」

分かります、私も割とそうです。

正直にいうと、「あとからの共有」が主目的だったら無理やりリアルタイムの制作にこだわらず、事後にじっくり、構成のアイデアや内容の作り込みに時間をかけて制作することがオススメです。

リアルタイムの制作だと、iPadを使ったデジタル制作も、紙やパネルに描くアナログ制作も「話を聞きながら手を動かして、その後に共有するタイミングまでに制作をある程度完了する」という必要があります。

そのために

・話の全体像が把握できる前にも描き始めなければいけない
・「聞く」と「描く」を同じ時間に細かく頭を切り替えて行う必要がある
・手を動かす時間が限られていて、より情報を取捨選択しなければならない

などの制約が生まれます。

聞きながら描きながら、わりと頭はバタバタ

その点、動画や文字起こしをもとに後描きで制作した方が、「伝える」に特化した時間の使い方ができます。
グラフィックレコーディング風の後描きイラストをリアルタイムのグラフィックレコーディングと区別して、「ビジュアルレポート」「イラストレポート」と呼ぶ方も増えてきました。

ちなみにここは、個人的にはグラフィックデザイナーさんや、イラストレーターさんが本領域の「伝える」お仕事だと考えています。
(グラフィックデザイナーとグラフィックレコーダーを両方されている方だと、どっちも得意で良いのかもしれない)

もし「その場のためのグラフィックレコーディング」と「伝えるためのグラフィックデザイン」どちらも同じくらい大事!という場合は、「両方する」という手もあります。(費用はかかってしまいますが)

▼グラフィックデザイナーさんとの協業例

とはいえ、グラフィックレコーディングを共有資料として使う場合も多い

ただ、リアルタイムでグラフィックレコーティングなどを制作することで、その場の対話や議論を活性化する「ビジュアルファシリテーション」を実施することを主目的としながら、「あとからの共有資料としても活用したい」というニーズをお持ちの方も一定数いらっしゃいます。

または、「リアルタイムで制作するからこその臨場感のある制作物こそ必要」という方もいらっしゃいます。

 ▼例えばこんな事例

そうしたリアルタイムで制作したグラフィックレコーディングを後から誰かに紹介するために必要なのは「圧縮されたデータの解凍」です。

もっと具体的にいうなら、「どう読むか」の文脈の補足と、詳細の補足です。
全体として一番伝えたいメッセージや、その話がされた背景を丁寧に伝えたり、個別具体のエピソードを文章などで補足し、丁寧に伝えることで、渡されたグラフィックレコーディングがより「伝わる」ものになります。

情報量でいうと、語りが100、グラフィックレコーディングが10だとすると40くらいまで上がる感覚かなぁ。

私がこれまで提案してきた「解凍」の例

①【紙媒体なら】パートごとに内容を補足する、「ふきだし解説」をつける

例えば、地域の皆さんが参加するワークショップを終えてから、当日制作したグラフィックレコーディングを住民に配布する回覧板で使用する際には
 ・文脈をテキストで補足する際のアドバイス
 ・紙面レイアウトに対するフィードバック
などを行いました。

企業さんの社内会議で描くときには、「内容を議事録として共有する」というニーズがある場合は、パワーポイント数枚程度で解説資料を制作することもあります。
内容を届けたい人きちんと届けるためには、見せ方の工夫も大切だと感じています。


②【ウェブ記事なら】切り取って挿絵として使う

例えば、社内の対談で制作したグラフィックレコーディングをnote記事にする際には、最初に1枚で全体像を示してから、個別の解説をするという方式をオススメしました。

③【アーカイブ動画があるなら】グラフィックレコーディングを「ビジュアル目次」として活用する

例えば、公開される動画が仕上がってから、対応するグラフィックレコーディングの箇所に「0:13」「1:12」などを入れることで
「自分の気になる話題はここか、ちょっと見てみよう」という興味の入り口となります。

圧縮されたグラフィックレコーディングを、話の全体の構造やそれぞれの話題の関係性を把握できる「ビジュアル目次」として手元に置きながら、元データであるアーカイブ動画を見ることで、理解をすすめることもできます。

(現在、具体的に出せる事例のデータがないのですが、あとから追加します)

描き方の工夫

「解凍」の話ではなく、描き方の話も少しします。

その場の人にとってのファシリテーションの効果だけでなく、あとからその場にいない人にも見せたいという場合には
「読み解きやすさ」を意識して、リアルタイムの制作と両立する範囲で以下の工夫などをすることがあります。

■目がすべらないために
・話し手が一番伝えたいメッセージや、そのグラフィックで一番伝えるべきことが伝わる、強弱をつけた構造的な視覚化を行う
・話題ごとにエリアが分かれて見えるように、塗りや線で構造を分かりやすく描く

■どこから読んで良いか、流れを分かりやすくするために
・テーマごとに数字つきで小見出しをつける
 (例:「① ○○のきっかけ」など)
・小見出しは、他の文字と情報のレイヤーの違いが分かりやすくなるよう、圧倒的に区別する
(例:小見出しだけ濃い背景に白文字など)
・テーマごとの話の関連性を示すために、矢印に接続詞としての意味合いをもたせて描く

※事前のグッズ準備や事後の精緻化で対応する場合もありますが、今回は割愛します

グラフィックレコーディングに限らず、ビジュアルレポートも図解も、視覚的に整理したものの読みやすさは「見る人が、視覚的言語をどのくらい読み慣れているか」にも依存します。

仕上げの段階で「普段、PowerPointよりWordを使い慣れている人でもある程度は読み解けるか?」を改めて意識して、最後に手を入れることが多いです。

あとは、話された内容を話された順番に、細かく分けて一つずつノートのように描いていく「ノートテイキングスタイルのグラフィックレコーディングを描く」という手もあります。

ですが、個人的にノートテイキングスタイルのグラフィックレコーディングがあまり得意ではないので、そちらが必要だという方には、知り合いを紹介しています。

おわりに

どんなお仕事でもそうだと思いますが、「一番の目的が何なのか」も大切にしつつ「とはいえ他に大切にしたいことは何なのか」を加味しながら、目的達成のために一番適切な手段を使っていけると良いですね。

アラワスでは、お客様の目的を一緒に明確化するところからもお手伝いしています。

実はお仕事のお問い合わせでも、お話をうかがっているうちに「それは私より、知人の○○さんの方が得意ですね!」とご紹介することも多々。

ご相談の前の「ちょっと話を聞いてみたい」の段階でも、お気軽にお声がけください。

では、また!
関でした。



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関 美穂子(グラフィックレコーダー / リサーチャー)
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